2016年5月25日より始まった、小沢健二「魔法的 Gターr ベasス Dラms キーeyズ」ツアー。それがついに6月27日の福岡公演をもって閉幕しました。
本ライブレポートは、セットリスト(ナタリーの記事より引用)に沿って備忘録的に初日(5/25)と2日目(5/26)の模様を中心に書き留めたものです。
初日限定の出来事は青文字で、2日目限定の出来事はオレンジ文字で表記しています。その後の公演で起こった出来事も、わかる範囲で書き加えました。
《関連記事1》
「魔法的電子回路」について単独でエントリを書きました。ネタバレ無しですので、予習にぜひ。
《関連記事2》
今回のツアーが発表されたときの実況レポートです。「魔法的モノローグ台本+4+2」を買われる前に、どんな話が載っているのかな? とお試しでお読みいただいても良いかもしれません。
《関連記事3》
既にライブに行った人ならご存知の、“あの動き”のおさらいです。こちらは全編ネタバレ全開ですのでご注意を。
金沢21世紀美術館での、アコースティックギターの弾き語り&朗読ライブ「言葉は都市を変えてゆく 小沢健二 美術館セット×2」のライブレポートです。バンド編成のライブとは大きく異なる内容ですが、やはりツアー全体のネタバレを多く含みますのでご注意を。
以下、まずはネタバレなしでグッズ等について説明していきます。
グッズについて(ネタバレなし)
名前を見ても何が何やらさっぱりわからないラインナップですが、中でも注目すべきは「魔法的電子回路」と「魔法的モノローグ台本+4+2」です。
魔法的電子回路
「魔法的電子回路」は、ライブを楽しみたいならば絶対に必須です。色は全4色(赤、青、紫、緑)。1個500円で安いですし、品切れもそうそう無さそうな様子なので、4色揃えてしまっても良いと思います。
2日目以降は開演前の客席内で(球場のビールの売り子みたいな感じで)、電子回路専門の行商のスタッフの方がいました。会場着が開場ギリギリになってしまう人などは、ここで買っても良いかなと思います。
魔法的モノローグ台本+4+2
1月20日に渋谷クラブクアトロで行われた朗読会(下記リンク参照)の台本と、「うさぎ!」の単行本未収録回(これが「+4+2」)がまとめられた書籍です。布張りの立派な装丁で、たいへん素敵にまとめられています。朗読の内容自体もすごく(「ドゥワッチャライク」的な感じで)面白かったので、ぜひ多くの方にお読みいただきたいです。電子回路ともども、超オススメです。
以下、セットリスト・バンドメンバー・全曲解説等をしていきますが、当然ながらネタバレ全開ですのでどうかご注意を。
↓
↓
↓
↓
目次&セットリスト
(項目名をクリックで移動できます)
セットリストは全日程通してまったく同じでした(美術館セットは除く)。ゲスト等もなし。
ただし、最終日(6/27福岡)だけは最後の最後にダブルアンコールで「流動体について」をフルコーラスでやった模様。う、うらやましい……。
ただし細部の演出やMC等は日によっていろいろ変わっていたので、それについては個々の楽曲の項目内で書きます。
公演時間はちょうど2時間くらい。初日・2日目の開演は予定だと19時でしたが、実際は5分くらい押しましたね。アンコールまで全部終わった時点で、ぴったり21時でした。
バンドメンバー
こちらもナタリーの初日レポート記事より引用。
小沢健二(Vo / G)
中村キタロー(B)
森俊之(Key)
木暮晋也(G / ヒックスヴィル)
白根佳尚(Dr)
及川浩志(Per)
HALCA(アナログ楽器
*1 / HALCALI)
ステージの中央前方に小沢さんがいて、それを半円を描くように囲む形でメンバーが並びます。下手から上手まで時計回りに、白根さん、中村さん、及川さん、HALCAさん、木暮さん、森さん、といった順番でした。
今回初参加なのはキーボードの森さんと、まさかのHALCA(HALCALI)さん。HALCALIがメジャーデビューしたのは2003年なのに、どこで小沢さんと接点が? と不思議ですが、TOKYO No.1 SOUL SETと一緒にブギーバックをカバーしたり、スチャダラパーのプロデュースを受けた曲が何曲もあったりと、間接的なご縁はいろいろあったんですよね。HALCAさんはInstagramで「魔法的」絡みの貴重な写真をいくつか公開されています。
お馴染みのメンバーの方々を中心とした演奏は、さすがの一言。今回は特に白根さんのドラムが印象的です。
真城めぐみさんが今回不在なのはちょっとさびしいですね。同時期にORIGINAL LOVEがツアー中で、そちらに参加されているためでしょうか
*2。女性コーラスが必要な箇所はHALCAさんが担当されていました。
01. 昨日と今日
「10,9,8,7,6,5,4,3,2,1」*3のカウントダウンから、ステージに幕がかかったままでのスタート。原曲よりずっとテンポアップして、ひたすらに「かっこいい」アレンジでした。このアレンジにより、「今回のライブはこういうテンションでいきます」と一発で理解できる出だし。
幕がかかったままなのでステージはうーっすらとしか見えないのですが、「ああー、ああ、ああー、ああ」の部分だけライトアップして、瞬間的にステージが見えます。大歓声。ひふみよの時も暗転したまま始まりましたが、こういう演出はほんとうに震えますね。
02. フクロウの声が聞こえる(新曲)
ステージに幕がかかったまま、その幕に、曲名と歌詞が順番に映し出されます。そしてイントロ。
一通りの歌詞が映されてから「魔法的」ロゴが出て、幕がバッと下りて歌い出し。
僕は発表会の時点で「朗読無しで新曲をたくさんやる」と聞いていたので「これが新曲かな?」とわかりましたが、中には戸惑った人もいたかもしれません。
「晩ご飯の後 パパが」とか「クマさんを抱いて寝るから」とか、子育てを想起させるフレーズが多いです。この曲に限らず、今回の新曲の多くに通して言える特徴ですね。特に後者の「クマ」からは、
母・小沢牧子さんのエッセイに書かれた「どんどん」のエピソードを連想しました(「どんどん」はゾウだけど)。
歌詞は、父子の会話を描くイントロ
*4から、果てしなく大きなスケールの話にまで一気に駆け上がります。この、日常と宇宙と瞬間的に繋がる感じがとても小沢健二的だな、と思いました。
初日は落ちてきた幕が小沢さんのマイクスタンドに引っかかってしまい、ちょっと変な光景になっていました。これは、狙い通りだったのか、それとも小さなアクシデントだったのか……(おそらく後者)。
03. シナモン(都市と家庭)(新曲)
こちらもイントロで歌詞がすべて映し出されたのですが、「シナモンの香りで僕はスーパーヒーローに変身する」とか「フッフッフ」とか、ぎょっとするフレーズが含まれていたため、客席からどよめきが起こっていました。
「シナモンダンス」(勝手に命名) が見所。動く方向は、(真ん中で腰を落として)下下(向かって左に身を寄せて)左右、(真ん中で腰を落として)下下、(向かって右に身を寄せて)左右、の繰り返しだったと思います。
この曲の間奏でメンバー紹介。下手(客席から向かって左)の白根さん(Dr)から、時計回りに。みなさんも、それぞれの変身ポーズ的なものをキメていました。メンバー紹介の最後に「お久しぶりです、小沢健二です」の挨拶で大歓声。
小沢さんがアウトロの「変!身!す、る!」のフレーズに合わせて仮面ライダー的な変身ポーズを決めていたのも印象的でした。
04. ホテルと嵐
まさかの「球体の奏でる音楽」からです。
イントロの時点で、客席がもう大いにざわつきましたね。
新曲の場合、演奏が始まる前か始まると同時くらいのタイミングでスクリーンに曲名が映し出されます。つまり逆に言えば、曲が始まっても曲名が映し出されない場合、「次はみなさんお馴染みの曲」という意味です(ただし大胆にアレンジされているので、イントロの時点では「この曲なんだろう?」となる)。
「球体」と今回のバンドとでは編成が大きく異なるので、アレンジも大いに変わっていました。
「やがて誰の体も~」のギター掻き鳴らしが圧巻。
間奏では、「魔法ぉ~♪ ホッ、ホッ、ホッ、ホッ、ホーッ!」のコール。初日はコールだけでしたが、2日目では、小沢さんがコールに合わせ「魔法的電子回路」を振り回してから、ギターピックよろしく客席に投げ込んでいました。もちろん大変な争奪戦に。
05. 大人になれば
「ホテルと嵐」からノンストップで、「球体」曲が2連発! 「ひふみよ」でも「東京の街が奏でる」でも、「球体」曲はまったくやらなかったのに!
原曲にもある、中盤の「とぅるっ、とぅるっ、とぅるるるる…」(ピアノパートの声真似、というかスキャット?)のくだりを「もう一回、聞っかっせってっよ!」と観客に合唱させる無茶ぶりがありましたので(しかも3往復くらい)、みなさん予習しておいたほうが良いと思います。
曲の最後、ハイテンポでギターをかき鳴らしながら「ゆっめーでみーたようなー?、おっとなってかんじ、こんなかんじー?」と(おそらくアドリブで)歌う姿が圧巻でした。最後、「……ちょっとわかってきたみたーいー」と静かに歌い終えてお辞儀。
この曲が終わったあと、客席からの「小沢ー!」「小沢くーん!」コールの中に「おとなっ!」と言ってる人がいて笑いました。
06. 涙は透明な血なのか?(サメが来ないうちに)(新曲)
「サメダンス」(勝手に命名)が見所。というか踊り所。みなさん、恥ずかしがらず、周りの人に迷惑をかけない範囲で、大いに踊ったほうが絶対に楽しいです。
間奏で「ここで踊りが、あるんだ、みんなでできるかな?」の合図が来たらさあスタンバイ。
「波、波、波、見る、サメ、サメ、来る、来る、泳ぐ、泳ぐ、泳ぐ泳ぐ泳ぐ泳ぐ!」。「こっくっさっいってっき(国際的)にっ! Beach, Beach, Beach, Look, Shark, Shark, Comin', Comin', Swim, Swim, Swim For Your Life!」文章で書くとさっぱりわけがわかりませんね(実際に見ても面食らうけども)(だけど一発で覚えて真似できるのですごい)。
ダンスの面白さに対し、歌詞はじっくり噛み締めるように聞きたい内容でした。「本当に生まれるのはパパとママのほう」という考え方にハッとさせられます。
実際、今回の新曲の歌詞といい、1月のクアトロの魔法的朗読(
こちらの実況か、「魔法的モノローグ台本+4+2」参照)の内容といい、美術館セットでの朗読の内容(
金沢ライブレポート参照)といい、小沢さんがパパになった(=りーりーに影響を受けた)ことによるものがすごく多いんですよね。
歌詞の舞台はマイアミのようですが、「マイアミ サメ」で検索すると
こんなニュースが出てくるんですね(ユウさん、ありがとうございます)。「リッケンバッカー橋」もマイアミに実在。
07. 1つの魔法(終わりのない愛しさを与え)
「ひふみよ」以降、セトリに必ず一曲ずつ入ってくる「Eclectic」曲。ツアータイトルがツアータイトルだけに、今回はやはりこの曲でした
*5。
「あー、あー」のバックの、「パパラッパ、パパラッパ……」のコーラスはバンドメンバー(木暮さんやキタローさんなど)が担当。さらに、2日目からは小沢さんの「『あっあっ』って言って」の呼びかけで、観客も「あー、あー」と歌いながら魔法的電子回路を振るように誘導されました。
なお、「ああ 風と光があなたに恵むように…」のパートは残念ながら省略されていました(個人的には原曲のあのパートが大好きなのですが……)。
08. それはちょっと
「いっち、にっ、さーん(some)、しっ(shit)!」のカウントで大歓声。
ステージに並んだ楽器の中でも、ひときわ目を引いたのが「チューブラーベル」(要は、のど自慢の採点のアレ)。どこで使うのかな、と思ったら、この曲のサビでした。原曲に近いアレンジでしたね。
サビはみんなで大合唱。楽しい! 大サビは2回繰り返しました。
日によっては(特にツアーの後半?)、始まる前に「複雑な思いを込めて歌ってください」といった呼びかけがありました。
09. ドアをノックするのは誰だ?
小沢さんの「次の曲は、白根くんのドラムと僕のギターだけで始まります」の言葉とともにスタート。ドラムとギターが複雑に絡み合うイントロ。
「新曲ではなさそうだけど、いったいどの曲だろう?」と思った矢先に、「One Little Kiss……」と歌い出して、客席から歓声。
もちろんドアノックダンスは健在です。右、左、右左右!
魔法的電子回路を手に付けたうえで、サビの手拍子を高らかに「だーれーかっ!(パンパンッ!)」とやると、煌びやかで楽しいです。
10. 流動体について(新曲)
すごく、すっごく格好良い曲です。疾走感。歌詞がまた良かった……。この曲と次の「超越者たち」は本当に格好良くて、一目ぼれならぬ一耳ぼれ(?)をしました。「宇宙の中で良いことを決意するくらい」「ほの甘いカルピスの味が現状を問いかける」の言葉にシビれる。
美術館セットの題名「言葉は都市を変えてゆく」も、この曲の歌詞からきているんですね。
後半、歌に合わせて歌詞が映し出されていたので、できるだけ(声に出さず口パクで)合唱しながら、ぜひ。
しかし、直前の曲で「誰かにとって特別だった君をマーク外す飛び込みで僕はサッと奪い去る」と歌った直後に「子どもたちも違う子たちに?」(※うろ覚え)ってフレーズを持ってくるのは、ゾクッとしますね。
たぶん意図的なんでしょうが、さすがとしか言いようがない……。
11. さよならなんて云えないよ
おそらく、今回もっとも原曲に近いアレンジの曲だったのでは? イントロで白根さんのドラムソロ(これがまたかっこいい)が入っていますが、それ以外はほとんどお馴染みの編曲。例のギターリフ
*6も、木暮さんがバッチリ弾いておられました。 「ひふみよ」では小沢さんが歌わなかった「おっべいびー」も、今回はバッチリと。サビは大合唱でした。
新曲を真剣に聴き入りつつ、お馴染みの楽しい曲では爆発するように大合唱する。その緩急のつけ方がまた素晴らしいセットリストだと思います。
初日では、歌い出しを小沢さんが間違えるハプニングもありました。「ドアノック失敗!」*7そのものでしたね(曲の中断はしなかったけど)。
12. 強い気持ち・強い愛
「さよならなんて云えないよ」からノンストップで。
残念ながら今回も「Stand up, ダンスをしたいのは誰?」のくだりは、イントロでも間奏でも無し。
サビはもちろん盛大に大合唱です。初日・2日目ともに、ここが最も客席の熱量が高くなった場面かも。
小沢さんはこの曲の途中でちょっとだけギターを下ろして歌っていました
*8が、逆にそれ以外は、全編通して、ずーっと終始ギターを弾きまくっていました。熱い。
13. 超越者たち(新曲)
「強い気持ち・強い愛」からノンストップで。強い気持ち・強い愛から違和感なく繋げられるだけあって、「90年代の小沢健二」にも通じるポップさを持った曲だと思います。できればスカパラホーンズやストリングスが加わったアレンジも聴いてみたくなる感じ。
その一方で、歌詞は明らかに「今の小沢健二」にしか書けないものでした。
歌詞で最も特徴的なのが、「
凛々しい音の鐘を打ち鳴らし」
*9というフレーズがあったことです。凛々しい音。ご長男のお名前は
凜音くん
*10。凛と凜で、字こそ異なりますが、まず間違いなく意図的な仕掛けでしょう。
その仕掛けに気付いてから歌詞を目で追うと、この曲で歌っていることすべてが、父から子へのメッセージのように読めます。いつの日か、この歌詞に込められた想いが、成長した息子へ届く日が来るのでしょうか。そう考えながら聴いていたら、目頭が熱くなりました。
サビの途中で、「行こう(そう)」とか「長い(長い)」とか、合いの手を入れるところがありました。見よう見まねで声を上げてみたら楽しかったので、皆さまもぜひ。
14. 天使たちのシーン
かなり大々的なアレンジが加わっていました。「ひふみよ」の時もボーカルの譜割りやメロディが大きく変わっていましたが、今回はまた全く違うアレンジでした。
……というか、この曲の場合はライブの度に毎回アドリブ(即興、インプローブ、インプロヴィゼーション)で歌っているそうです。
「ここでMCをするのは初めてなんですけど…次の曲は静かな曲で、僕のギターはずっと同じフレーズを弾き続けるのですが、歌のメロディは毎回アドリブというか即興で歌っています。初めて作曲をするときはすべてアドリブというか即興で、生け花をする感じだと思っています。次の曲(天使たちのシーン)の場合、生け花の形よりも、アドリブ、野花のような感じが合うと思って、毎回即興でやっています。別に毎回変えようと思ってやってるわけじゃないんだけど…。静かな曲なんですが、聴いてください」(演奏開始)
(※6月11日(土)Zepp DiverCiry公演の、「天使たちのシーン」直前のMCより。記憶で書いているので正確ではありません)
出だしだけはお馴染みのメロディーで、「真珠色の……」のあたりから、ひたすら即興。
フルでは演奏せず、前半だけで、そのままノンストップで次の曲へ。
15. 飛行する君と僕のために(新曲)
ロングジョンのテーマ曲。1月の朗読会の時点で既に曲名が明らかになっていましたね。 低音のうねりがかっこいいです。
曲が始まると同時に、バンドメンバーが身に付けた青の電子回路が一斉に点灯。照明を落としたステージの上で、青のシルエットだけが浮かびます。
曲名は、スクリーンのテロップでもナタリー等の記事に載った公式セットリストでも「飛行する君と僕のために」としか表記されていません。ですが、アンコールの新曲振り返りコーナーでは初日・2日目ともに小沢さんがこの曲を「重力に逆らう 飛行する君と僕のために」と呼んでいました。
初日はPAのバランスのせいか、歌詞があまり聞き取れなかったのが残念でした。と思ったら、2日目は明瞭に聞き取れました。(僕がいた位置も関係あるかもしれませんが)音のバランスなんかも初日は試行錯誤があったのかも。
16. ラブリー
今回の歌詞は
*11「LIFE IS COMIN’ BACK」と
*12「完璧な絵に似た」の組み合わせでした。要は「東京の街が奏でる」の時と同じですね。
もちろん、客席の僕ら手を叩き、僕ら大合唱。
1番ではステージが真っ暗なままで、2番が始まると同時に一斉にライトアップ。「夜が深く長い時を超え」ってことでしょうか。
途中、間奏の最中にもかかわらず、小沢さんが観客に「歌って歌って!」的なジェスチャーをしたので、みんな「何を歌えば……?」と困惑。そこで小沢さんが取ったジェスチャーが、フルートを吹くポーズ。「フルートを歌って!」とのこと。みんな笑いながら無茶ぶりに応えました。
そして、なんと2日目に至っては、説明無しでフルート歌唱を要求されました。これから行く方は、ぜひフルート(の声真似)の練習をしてから挑みましょう。原曲の3分30秒目あたりです。
東京3日目(6/11)では、曲の終わった後にまったく止まない「最高!」「かっこいい!」「大好き!」といった大歓声のなか、「ありがとうございます。ほんとうに、おまえら最高」とコメント。
東京最終日(6/25)では、曲の終わった後に「フルートのところ歌えた人、気持ち良かったでしょ?(笑)」とMCあり。
なお、これまでのライブではいつもフラッフラになるくらい何度も「ラブリーラブリーで~」を繰り返してましたが、今回かなりあっさり終わりますね。その分一回一回に力を込めているんでしょうか? 他の曲(「大人になれば」とか、「それはちょっと」とか)には今回もそういう繰り返しがあるけども。
17. その時、愛(新曲)
「ラブリー」終わりで大歓声が上がるなか、初日は「次の曲も初めて人前でやるんですが、この歌詞を覚えて、できれば一緒に歌ってほしいです」との言葉とともにサビの歌詞が映し出されたのですが……この歌詞が長い! 客席から「覚えきれない」と小声で悲鳴が上がっていました。
2日目も同様の流れで、「覚えてください」と言われた時点でみんな苦笑。それに対し小沢さんは「覚えるなんて無理だと思うでしょう? でも、歌えるようになるんです」と謎の自信満々っぷりで断言していました。
実際、「覚えて」と言われた箇所は曲中で3,4回出てきますし歌詞も投影されているので、(そらで歌うのは難しくても)僕は最終的にはけっこう歌えるようになっていました。
歌えば歌うほど、そのフレーズが好きになってきます。身体に馴染んでくるというか。小沢さんの作品って、元々そういう曲が多いですよね。口ずさむほどに好きになる。
この曲もダンスがあります。そして、このダンスが、とんでもない……。ぎょっとすること間違いなし。でも、みんなぜひ真似して踊るべき。
<アンコール>
18. シナモン(都市と家庭)~フクロウの声が聞こえる(新曲)
アンコールは、「5,4,3,2,1」のカウントダウンから「シナモン(都市と家庭)」。
シナモンダンスを踊りつつ、大サビの直前(?)、「都市と家庭を作る神話の力」のフレーズから始まり、「オオカミのように、吠えろー!」と呼びかけてみんなで「うおおおおん!」(文章で読むと何が何やら)。
そして、「新曲振り返りコーナー」。
全7曲の新曲を、ダイジェストで(生演奏ではなく、ライブ録音の音源を)聴きながらのおさらい。メンバー全員、曲に合わせてノリノリで当て振りしているのが面白かったです。
今回は振り付けのある曲が多いので、「そうだそうだ、こんな踊りもしたっけ」と笑いがこぼれます
*13。
そして、最後にまた「フクロウの声が聞こえる」。
この曲、ライブ序盤で最初に聞いた段階では耳に馴染まず戸惑いがあったのですが、ライブ全体を通して(さらに振り返りコーナーで復習までして)聴いた上で、またこの「フクロウ」へ帰ってくると、今回の一連の新曲のテーマというか、聴きどころというか、そういったものがじわじわと伝わってきます。
「真空管を燃やすギターの音」。「いつかベーコンといちごジャムが一緒にある世界へ!」「「はじまり、はじまり」と扉が開く」。なんて、すさまじい。言葉の力。
発表会のときに小沢さんが言っていた「おなじみの曲もやりますが、帰り道に体に残っているのは、新しい曲たちだと思います」の意味を実感しました。
実際、こうしてライブレポートを書いている僕の頭の中にも、新曲のフレーズがたえず鳴り響いています。ライブからもう、丸一日以上経っているのに。すげえ。実に魔法的。
さて、このライブでは何度かカウントダウンがありましたが……「フクロウ」を終えて、拍手喝采のなか、小沢さんが言います。
「それでは、本日最後のカウントダウンです。5,4,3,2,1……日常に、帰ろう」
ステージの照明がふっと消えて、みなさん退場。
そして、公演が続くうちに、「本日最後のカウントダウンです」の言葉を受けて、客席から「ええー……」といった声が上がるようになりました。
なお、東京最終日(6/25)に、みんなが一斉に「えー!」と言うなか、真っ先に「やだー!」と叫んだのは僕でした。結果、小沢さんに「やだじゃない! 勇気! 言ったでしょう!」と怒られることとなり大変失礼しました。
その他いろいろ
その他、気づいたことなどを箇条書き。
- 定番曲(特に「愛し愛されて生きるのさ」や「ブギー・バック」あたり)をやらないなんて! と驚きましたが、アンコールが「シナモン」と「フクロウ」な点からして、今回はあくまで新曲が主役なんだなと理解しました。構成を踏まえたうえで観るとまた良いと思います(というか実際2日目は輪をかけて良かったです)。
- セットリストを見返すと、「LIFE」の曲が少ない(たった2曲!)ことに驚きます。「LIFE」収録曲や同時期のシングル曲をほぼ全てやった「ひふみよ」とは正反対 。逆に、「ひふみよ」以降では初披露となる「球体の奏でる音楽」の曲が2曲も聴けるとは。
- お馴染みの曲は、歌詞に「魔法」が含まれるものを中心に選ばれているようです。何度となく聴いたことのある曲でも、今回のライブでよくよく注意して聴いていると「あ、こんなところにも『魔法』が!」と気づきます。
- いずれの曲も、オールスタンディングの会場に合わせた「踊れる」アレンジになっている印象です。バンドのグルーヴ感が肌で感じられるというか。その一方で客席はどうかというと、スタンディング慣れしていない方が多いのか、周りがあまり動かないため物怖じしてしまっているのか、全体的におとなしめな方が多いかなーと思いました。押し合いへし合いもないのでまあ平和ではあるのですが、個人的には、もうちょっと縦ノリで踊る人が多くてもいいかなと……。
- 終演後に「本会場は海に面しておりますので、サメにはご注意ください」と面白アナウンスがありましたが、みんなざわざわしてて気付いてなさそうでした。会場ごとに、このアナウンスのネタも変わったのかな?
- 2日目のMCより。「魔法的電子回路は、ライブが終わったあとも、魔法が欲しいときや光が欲しいときに使ってください。24時間くらいもちます」(※細部はうろ覚え)。
- 今回「シナモン」、「サメ」、「その時、愛」などダンスが充実しているので、「ドアノックダンス」や「オッケーよ」などと組み合わせて「オザワ体操第一」が作れそう。「両手を開いて、サメの運動ー!」みたいな。
- 開演前の会場内BGMはすべて(?)邦楽でした。おそらく、小沢さんやバンドメンバーと縁のあるものばかり。ただ、Zepp TokyoやZepp DiverCiryの1Fフロアではうっすらとしか聞こえなかったので、アーティスト名と曲名の両方がわかったのは、フィッシュマンズ「ずっと前」、東京スカパラダイスオーケストラ「君と僕」、HALCALI with NONA REEVES「すきすきソング」、くらいでした。あとは大滝詠一(おそらく「Cider'73」?)など。
- 東京最終日(6/24)、開演時間をちょっと過ぎたタイミングで会場内に「ラブリー」のカバー(男性ボーカル)が流れたので、待ちきれなかった人たち(僕含む)が自然発生的に手拍子&合唱を始めたのが面白かったです。
おわりに
このライブレポートは、初日の帰り道に書き始めて、翌日の昼に最初のバージョンを公開しました。
以降、2日目の内容を踏まえて書き足したり、後から思い出して修正したり……といった流れで、現在は2日目の翌日(5/27)の夜に、この「おわりに」を書き加えているところです。
今回のツアーの模様がライブアルバムや映像作品等で後々お披露目されるかどうかはわかりませんが、本レポートは「こんなにすごいライブに立ち会ったのか」と将来の自分が思い出せるように、と備忘録のつもりで書いたものです
*14。
かなり私的なメモのつもりで書き始めたものですが、書けば書くほどボリュームが増してゆき……おかげさまで、ライブに行った方にもこれから行かれる方にも、既にたくさんの方にお読みいただいているようです。ありがとうございます。
各楽曲の項でもいろいろ書きましたが、今回のツアーは、一緒に歌ったり踊ったり、バンドの演奏を肌で感じたり、とライブならではの楽しさが目いっぱいつまっています。正直、ライブレポートでは、その魅力のごくごくごく一部しか伝えられません。
どうか多くの人が、「魔法的」な生の体験をしてくださるよう、強く願うばかりです。
……と書いたのが2日目の翌日のこと。この最終段落を書いているのは、6/27の夜21時半。福岡での千秋楽の様子を、インターネッツの文字情報越しに見守っている最中です。
とうとう終わってしまいました。魔法的ツアー。
これだけの素晴らしい思い出と新曲たちが胸に宿っていれば、サメだらけの日常もなんとか泳ぎきれるかもしれない。
それでは、本稿最後のカウントダウンです。
5,
4,
3,
2,
1,