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世界一ていねいかもしれない「今夜はブギー・バック」の解説【後編】(smooth cover)

#ozkn 音楽

はじめに

 前編では、ブギーバックの原曲に焦点を絞り、その誕生や特徴について書いた。後編では、無数に存在するカバー(アンサー、リミックス、セルフカバーも含む)を紹介・分析し、さらに深く掘ってゆきたい。

 ブギーバックのカバーを語る上でまず触れておきたいのが、小沢健二のサイト「ひふみよ」で2011年9月6日に発表された「矢」という文章だ。ネット上で全文読めるので、部分的な引用はしない。原文を直接ご覧いただきたい。
「矢」(横書版)
 本稿では、この「矢」にて「名を挙げて感謝し出すと何億光年も行きますが」と述べられているほどの数のカバーを、無謀にも網羅し、何億光年も(……まではいかなかったが、結果的には約8万文字になってしまった)の旅に出たいと思う。

目次*1

ブギーバックのカバーはどれだけ存在するのか?

 そもそもブギーバックのカバーは、どれだけの数があるのだろう?
 手軽なところで、タワーレコードのオンラインショップ「タワーレコード オンライン」にて、キーワード「今夜はブギー・バック」で検索してみよう。

 2016年12月30日現在で、116件。もちろんダブり(ベスト盤・限定盤・コンピレーション・ミックスCD等)も含まれているし、逆にタワレコで扱われていないもの(配信限定・会場限定販売等)や検索に引っかからないもの(タイトル違い・アンサーソング等)もあるだろう。
 とはいえ、CD・DVD等でソフト化されているものだけでこの件数なのだから、ライブでカバーされたもの等も含めれば、もはや数えきることは不可能に近い。

 ……とあきらめてしまってはつまらないので、今回「ブギーバック年表」を作成してみた。この年表では、筆者が調べられる限りの範囲で「確認」できたものをまとめている。
 ここで「確認」と書いたのは、音源化・映像化されたものを筆者が実際に確認できたか、信憑性の高い媒体に情報が載っていたものに限った、という意味だ。逆にいえば、ライブ等で本当に披露されたかどうかハッキリしないものは省いた。
 主に参考としたのは、先に挙げたタワーレコード オンラインのほか、Amazon.co.jp等のオンラインショップ、iTunes Storeなどの音楽配信サービス、Wikipediaの「今夜はブギーバック」の項*2などである。

これが「ブギーバック年表」だ!

 というわけでこちらが「ブギーバック年表」だ。
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 ……細かすぎて読みづらくなってしまったが、以下の5種に大きく分類している。

1. オリジナル

 2種類の原曲、nice vocalとsmoooth rapのこと。前編で詳述したので、ここでは説明不要だろう。両者のシングルに収録されているカップリングのバージョン(詳しくは後述)もこの「オリジナル」に分類した。

2. 本人たちによる別テイク

 本人たち(小沢、SDP)によるセルフカバーやライブバージョンだけでも、けっこうなバリエーションがある。ファン泣かせなことに、ライブバージョン(とくに小沢関連)のアレンジも多岐にわたっている。
 音源化されているセルフカバー(スタジオ録音・ライブバージョンともに)を網羅しつつ、未音源化のライブバージョンに関しても、(筆者が実際に観た)2010年以降のものはできるだけ詳しく紹介しているつもりだ。

3. SDPの客演

 セルフカバーとカバーの中間、と言えば良いだろうか。ライブ等で他のミュージシャンが小沢パートをカバーするところに、SDPが客演したバージョンも少なくないのだ。音源化・映像化されているものは年表で網羅したつもりだが、これ以外でも飛び入りで客演したケースなど考えられるので、何かあればぜひ情報提供をいただきたい。

4. カバー

 他の人たちによる純然たるカバー。これが本当に多い。中には既存のカバーやセルフカバーを元にしたカバー、いわば「孫カバー」と思しきものまである。アンサーソング、リミックスの類もこちらに分類した。音源化されているものはもとより、ライブ等で披露されたものも可能な限り網羅したつもりだ。

5. その他

 上記のいずれにも当たらないが、原曲からの曲名やフレーズの引用・パロディをおこなった作品で、特記すべきものをここで挙げた。
 
 では、年表の時系列順に沿って、ほぼ全曲を解説していこう。
 小沢やSDPによるセルフカバーや、先述の小沢の文章「矢」で名指しされているミュージシャンによるカバー、それ以外でも重要度が高いと判断した項目に関しては、できるだけ詳しく解説している。
 大変なボリュームになってしまったが、YouTubeに公式にアップロードされている動画や、iTunes Storeで配信中の曲の試聴リンクなども貼っているので、実際に曲を聴きながらゆっくりと読んでみていただきたい。

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ブギーバック全曲解説[1994-1999]

 まずは90年代から。94年に原曲がリリースされて以降、90年代のうちはECDらによるアンサーソングやSDP公式のリミックスなどはあるものの、一般に「カバー」といえるものはほとんど無かった。
 ところが、90年代の終わりに(事実上初めて)ブギーバックをカバーするアーティストが現れる。それが宇多田ヒカルだ。J-POP全体の潮目を変えた彼女は、ブギーバックのカバーにおいても先鞭をつけたのだ。

【オリジナル】小沢健二 featuring スチャダラパー「今夜はブギー・バック (meanwhile back at the party)」

今夜はブギー・バック

今夜はブギー・バック

  • アーティスト: 小沢健二featuringスチャダラパー,小沢健二,スチャダラパー,光嶋誠
  • 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
  • 発売日: 1994/03/09
  • メディア: CD
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 小沢側のシングル「今夜はブギー・バック (nice vocal)」のカップリング。
副題を訳すと、「パーティーに戻るまでの間」といった感じだろうか?*3
 ブギーバックのバックトラックに乗せて、人々の歓声やSDPのラップが部分的にうっすらと聞こえる。長い長いアウトロを聴いているような印象だ。

【オリジナル】スチャダラパー featuring 小沢健二「今夜はブギー・バック Live at BIG EGG?」

今夜はブギー・バック
スチャダラパー featuring 小沢健二
 SDP側のシングル「今夜はブギー・バック (smooth rap)」のカップリングで、ベストアルバム「ポテン・ヒッツ~シングル・コレクション」(1994年10月21日発売)にも収録。
 ライブ音源“風”のアレンジが施されており、小沢パートは「smooth rap」と同じ音源が使用されている。BIG EGGとは東京ドームのことだろうが、SDPが東京ドームでブギーバックを披露したことはなさそうだ。

【その他】「BOOGIE BACK ( SPECIAL LIMITED VINYL EDITION )」

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 1994年にファイルレコードから発売された、「nice vocal」と「smooth rap」の両バージョン(および両者のカップリングとインストゥルメンタル版)をすべて収めたアナログ12インチレコード。smooth sideとnice sideの両A面。
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 つまり、これは楽曲のバージョン違いではなく、発売されたフォーマットが違うだけなのだが……ブギーバックといえば、8cmシングルのジャケットよりも、メンバー4人の顔が並んだ本盤のジャケットを連想する人も多いのではないだろうか?*4
 また、ジャケット裏面に「REMASTERED FOR ANALOG PLAY BY M.TANAKA (SONY MUSIC SHINANOMACHI STUDIO」とあるため、どうやらアナログ向けに特別なリマスタリングがされているらしい。
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 というわけで、これもブギーバック史を語る上で欠かせない1枚だと思い、紹介した。
 なお、ジャケットに「(c)1994 File Records Inc.」と書かれてはいるものの、本盤の正確な発売日は不明。ただしシングルCD発売当時の以下のインタビューを読む限り、少なくともCDとの同時発売ではないと思われる。

O(※引用注:小沢) そういえばあれってさぁ、アナログ・テープに録ってる時の方が良くなかった?
S(※引用注:SHINCO) うん、良かった。
O アナログの時はベースもキックも「これだー!」って感じだったんだけど、デジタルにしたら、なーんか口数少なくなっちゃってね。
――そんな人類の9割位気がつかないんじゃないの?
B(※引用注:Bose) でも、ウチの社長とかそれまでブンブン踊ってたのに急に踊りが止まっちゃってね。
O 「何か変わった?」なんて言われちゃって。一番悩んでた所だからさぁ、ヤバイなぁなんて思ったりしてね。やっぱり、24チャンからアナログ・マスターにいってアナログ・レコードを作らなきゃねぇ。
(出典:「remix #36 1994年6月号」・太字強調は筆者による)

【カバー】ECD featuring ISHIGURO (KIMIDORI), 北沢幾積 (YOTSUKAIDO), トミジュン, キク (リカ)「DO THE BOOGIE BACK」

ドゥ・ザ・ブギー・バック

ドゥ・ザ・ブギー・バック

 ECDによるアンサーソング。「DO DA BOOGIE BACK」のタイトル*5でアナログ7インチ*6が出されてから、1995年3月1日に8cmシングルCDでリリース(同日発売のECDの3rdアルバム「ホームシック」にも収録)。小沢健二の「矢」にて「あれは早かった!」と言われていることから、アナログ盤のリリースは1994年内のことと思われるが、正式な発売日はわからず。
 8cmシングル盤のジャケットには「ヒップホップ兄さん ECDのニュー・シングルは『今夜はブギー・バック』のアンサー・ソング! 彼らの旅はとびっきり アウト・オブ・コントロール!」と書かれている。
 ただし、アンサーソングと銘打ってはいるものの、原曲をアレンジした上に別の歌詞で歌とラップを録っているため、事実上のカバーといっていいだろう。実際、この曲の作詞・作曲のクレジットは原曲とまったく同じで、小沢とSDPの計4人の名が記されている。
 ECDのほかに参加しているメンバーは、キミドリの石黒景太*7、四街道ネイチャーの北&澤(KZA)、女性ヒップホップユニット・リカの2人。

【セルフカバー】小沢健二 featuring スチャダラパー「今夜はブギー・バック ("DISCO TO GO LIVE")」

ラブリー

ラブリー

 小沢健二「ラブリー」(8cmシングル・1994年11月23日発売)のカップリング。

 小沢健二のツアー「DISCO TO GO」(1994年5月)のライブテイクである。「DISCO TO GO」ツアーは、ブギーバックの発売とヒットを経て、「LIFE」のレコーディングに取りかかる前の時期に行われたものだ(後に「CITY COUNTRY CITY」のタイトルでライブビデオ化)。この時期の状況は「音楽と人 1994年7月号」掲載の、ツアー期間中の小沢へのインタビュー記事「小沢健二 オザケン・ライヴを語る『オクテだからさ、僕』」((インタビュアーは能地祐子))に詳しい。

●●最初、ツアーの前にアルバムが出る予定でしたよね。それが、ツアーをやった後にアルバムを作っていきたいってことになったために発売延期になったというふうに聞いたんですけど。
「うんとねー。そうですねぇ。僕、スタジオ入って悩んでたわけでも何でもないんですけどね。でも今回のライヴって、次のアルバムの曲をやってるわけじゃない? それをみんな1回も聞いたことないわけじゃないですか。なのにあんなに盛り上がってくれるのが、すげえうれしいなーって思って。(略)」
(出典:「音楽と人 1994年7月号」)

 まだ誰も聴いたことのない新曲を、ライブで演奏しまくって盛り上げてしまう。まるで2016年に行われた「魔法的」ツアーのようである*8
 このインタビュー記事には「DISCO TO GO」ツアーのセットリストも掲載されており*9、これによると、(この時点で既にヒットし観客の耳にも馴染んでいた)ブギーバックはアンコールで披露されている。

 なお、「DISCO TO GO」でSDPがゲスト参加したのは東京公演(渋谷公会堂)のみで、その他の公演では観客がラップを合唱したようだ。

「(略)アンコールの“今夜はBOOGIE BACK”*10で東京は2日間ともスチャダラが出たじゃない? 地方ではスチャダラが来れないから、どうしようかと思ったんだけど。新潟でひとりでやったら、ラップ・パートがお客さんの超大合唱になってさ。非常に楽しいんですよ。すごいよ、千何百人が『いちにっさーん……』ってラップやりだして。“今夜はBOOGIE BACK”って、僕のほうのバージョンだけで25万枚くらい売れてるんだけどさ。それくらいヒット曲だと、本当に楽しい。ヒップホップで言う『ネタ曲』みたいなふうに戻してさ、僕が2番も作って歌ったりして。ラップのとこだけちょっと空けて、お客さんに16小節ラップしてもらって。なんかね、チョ感動的。 ♪ゲップでみんなにセイ ハローってところなんかさ、2000人が同時にゲップという言葉を発したというのは日本記録に残るんじゃないかと思って(笑)」
(出典:「音楽と人 1994年7月号」・太字強調は筆者による)

 ここで語られている「2番」こそが、この「DISCO TO GO」バージョンの大きな聴きどころだ。このバージョンを収めたシングルにも2番の歌詞が掲載されている。なお、この2番は(筆者が知る限りでは)他のライブでは披露されていない。

 さらに聴きどころをもう一つ挙げるなら、楽曲のアレンジだろう。先述のとおり、「DISCO TO GO」は「LIFE」レコーディング直前のツアーのため、メンバー構成もアレンジも「LIFE」寄りになっている。要は、きわめて多幸感に満ちたアレンジなのだ。小沢の「トゥットゥルル……」のアカペラと手拍子から始まり、真城めぐみ率いるコーラス、木暮晋也のギター、青木達之のドラムス、中村キタローのベース、中西康晴のキーボード、Boseによる「ブーギバック、カモン!」のコールアンドレスポンス、スカパラホーンズ……と音が重なってゆくイントロの流れだけでもう、嬉しくて楽しくて笑みがこぼれてしまう。

【その他】「MOTHER2 ギーグの逆襲」

MOTHER2 ギーグの逆襲

MOTHER2 ギーグの逆襲

 音楽ではなくゲームだが、ここで任天堂のスーパーファミコン用ソフト「MOTHER2」の名を挙げておきたい。
 「MOTHER」シリーズは糸井重里が中心となって開発されたRPGのシリーズ。中でも「MOTHER2」は発売から20年以上経った今も根強い人気を誇っており、「ほぼ日刊イトイ新聞」の定番グッズ「ほぼ日手帳」でもMOTHER2関連のカバーデザインが毎年発売されるほどである。
 さて。なぜここで「MOTHER2」を挙げたかといえば、ゲーム内でブギーバックのタイトルが出てくるからだ。具体的には、トンズラブラザーズというバンド*11がライブをするシーンで、ライブハウスの看板に「こんやはブギーバックなかんじ。トンズラブラザーズナイト!」と書かれている。
 ブギーバックの発売が1994年3月9日。「MOTHER2」は同年8月27日発売。ゲームの開発時期を考えると、ブギーバックを作中のネタで取り上げるには時間がなさすぎる気もするが、かといって、「こんやはブギーバック」という言葉が偶然に飛び出すとも思えない。また、糸井重里はブギーバック以前からSDPを愛聴*12していたため、この曲名をMOTHER2の作中で取り上げていること自体はまったく不思議でない。
 「MOTHER2」はBoseもプレイしており、2003年に「ほぼ日」で連載された永田泰大*13による「MOTHER1+2」*14プレイ日記にて、まさにこの「こんやはブギーバックなかんじ。」に関する永田とBoseのやり取りが書かれている。

だらだらとした話のあと、
僕はゲームファンとしてのボーズさんではなく、
ミュージシャンとしてのボーズさんにこう訊いた。
 
『MOTHER2』のなかに
「ブギーバック」っていう言葉が出てきて、
そのふたつがリンクしていることが
なんだか不思議な感じがしたんだけど?
 
「あ、ぼくもそう思った」とボーズさんは言った。
 
あのふたつって、同じ時代だったんだね、と
ボーズさんはしみじみと話した。
初めて『MOTHER2』をプレイした9年前、
当事者からそんな言葉を聞くことになるとは
夢にも思わなかった。
(出典:「ポケットに『MOTHER』。~『MOTHER1+2』プレイ日記~ 7月28日 今夜はブギーバックな感じ」

 余談。「MOTHER2」の音楽を担当した鈴木慶一(ムーンライダーズ、Controversial Spark、No Lie-Sense等)は、2016年のポカリスエットのCMにて、小沢の「さよならなんて云えないよ」のアレンジをおこなっている。

【リミックス】スチャダラパー featuring 小沢健二「今夜はブギー・バック (smooth rap) [Remixed by 小山田圭吾]」

今夜はブギー・バック (smooth rap) [Remixed by 小山田圭吾]
スチャダラパー
 スチャダラパーのリミックスアルバム「サイクル・ヒッツ~リミックス・ベスト・コレクション~」(1995年12月1日発売)収録。クレジット上は「Remixed by 小山田圭吾」となっているが、聴けばわかるように、小山田によるカラオケである。リミックスと言い張るための口実なのか何なのか、曲の頭と終わりに多少手が加えられているが、曲の中身にはまるで手が加えられていない。
 このアルバムはアートワークが非常に凝っており*15、ジャケットはレコード店(具体的にはタワーレコードあたり)の陳列棚をイメージした写真なのだが、本リミックスに添えられている店員の手書きPOP(ジャケット画像の中央に見えるもの)には「単なる歌真似か? それとも芸術か? 誰もが実現するとは思わなかった夢のリミックス! これヤバくない? ヤバくないこれ? ヤバくなくなくなくなくなくない?*16」と書かれている。「これヤバくない?」は、先述のECD「DO THE BOOGIE BACK」からの引用だろう。
 これをリミックスアルバムの1曲目にもってきたことに驚かされるが、さすがにやりすぎだったらしく、後にBoseも「……あれは洒落がキツすぎたね。色々ダメだよ(笑)」*17と述べている。

 なお、この数年後に小山田は、渋谷系の大きな節目といえる場面でブギーバックをDJプレイしている。詳しくはDub Master X「DO THE HOUSE BACK」の項を参照。

【リミックス】スチャダラパー featuring 小沢健二「今夜はブギー・バック (smooth rap) [Remixed by 高木完、K.U.D.O.(MAJOR FORCE PRODUCTIONS)]」

今夜はブギー・バック (smooth rap) [Remixed by 高木完、K.U.D.O.(MAJOR FORCE PRODUCTIONS)]
スチャダラパー
 スチャダラパーのリミックスアルバム「サイクル・ヒッツ~リミックス」(1995年12月1日発売)収録。
 カバーの多さに対して、ブギーバックのリミックスは(今回調べてわかった範囲では)きわめて少ない。先述の小山田リミックス*18、後述のDub Master Xによる「DO THE HOUSE BACK」、そしてこの高木完とK.U.D.O.によるリミックス、これら3種類しか確認できなかった。
 このリミックスでは、小沢パートの歌声が子どもの声に差し替えられている。クレジットには「ADDITIONAL VOCALS LASER BEAM(KANTA&AGE)」とあるが、どういった人選なのか、詳細はわからず。

【リミックス】Dub Master X「DO THE HOUSE BACK (ADAPTED?)」

 Dub Master X(MUTE BEAT、THE DUB FLOWER等)のアナログ7インチ「DUB WA SELF REMIX Vol.1」(1995年発売のようだが正式な発売日は不明)に収録。

 小山田圭吾は、ピチカート・ファイヴの「お葬式」(2001年3月31日におこなわれた解散ライブ)で1曲限りのゲストDJをした際、このリミックス版を選曲したそうだ。

東京のDJ文化の振興を果たしたピチカートにふさわしく、
それぞれのDJがたったの15分間の持ち時間を競った。
カジ・ヒデキの女装による歌など、
見所はたくさんあったが、
なんといっても飛び入りの小山田圭吾のかけた
小沢健二&スチャ・ダラ・パーのメモリアルなヒット曲
「今夜はブギー・バック」はハイライトだっただろう。
しかもDMX(ダブ・マスターX・宮崎さん)による
テクノっぽいリミックスヴァージョンだったのが面白かった。
彼はこれ1曲のみをかけて去っていった。
(出典:サエキけんぞう「総武線猿紀行第84回『追悼ピチカート・ファイヴ! の巻 その4』

【セルフカバー】スチャダラパー「今夜はブギー・バック (Live)」

今夜はブギーバック (Live)
スチャダラパー
 ライブ「SUITE’N RAW」(1998年11月9日・Umeda Heat Beat)の音源で、ボックスセット「URBAN ROCK BOX」(1999年7月28日発売)とシングル「トリプルショット EP」(1999年9月8日発売)に収録*19
 SDP単独でのブギーバックのライブテイク自体は記録に残っているものだけでも*20無数にあるが、このバージョンは原曲とトラックが大きく異なり、また現在でもiTunes Store等で簡単に購入できるため、ここで紹介する。
 このバージョンの特徴は、小沢パートをSDPの2人が唄っており、それが(おそらくは意図的な)ヘロッヘロの歌声である点だ。だが、トラックのラフさも含め、原曲や「Live at BIG EGG?」とは打って変わっての荒削りな雰囲気が新鮮に聞こえる。

【SDP客演】宇多田ヒカル feat.スチャダラパー「今夜はブギー・バック」

 1999年4月2日、宇多田ヒカルの初ライブ「Luv Live」の東京公演「Luv Live Tokyo」にてSDPをゲストに迎え披露。また、前日の4月1日に行われた大阪公演「Luv Live Osaka」ではSessyo*21と共にカバーしたとの情報もあり。さらに宇多田は「Hey!Hey!Hey!」出演時にも歌ったことがあるらしい(放送日等は不明)。
 この「Luv Live」は映像収録こそ行われていたものの、テレビ(WOWOW等)のOAでしか観ることができなかった。それが2014年、アルバム「First Love -15th Anniversary Edition-」(2014年3月10日発売)にて、15年越しで晴れてソフト化された。
 リアルタイムではない世代にはなかなか実感が伝わらないかもしれないが、このデビュー当時の宇多田ヒカルの勢いと、それに対する世の中の熱狂ぶりは大変なものだった。デビューアルバム「First Love」(1999年3月10日)がアルバムセールス日本一の記録を猛スピードで樹立している最中でありながら、テレビ番組への露出はまったくなかったため、動く彼女の姿を観られる機会は*22このライブしかなかったのだ。「Luv Live」のライブ映像には、この時期の異様な熱気がありありと記録されている。
 「First Love」の収録曲で構成されたセットリストの中、唯一のカバー曲が、ブギーバックであった。しかも曲順でみると、なんと「Automatic」と「First Love」の間に挟まれている。
 当時16歳の宇多田は、SDPを前に「うーわ本物だ本物! すっげえ!」とステージ上で無邪気にはしゃぎながらも、彼女ならではの圧倒的な歌唱力でブギーバックを歌い上げている。
 宇多田は2016年のアルバム「Fantôme」でKOHHをフィーチャリングしたことが話題になったが、それに先がけること17年、この時点でラッパーとの共演をしていたのだ。
 また、ブギーバック史を見渡しても、やはりこのカバーは特別である。何しろ、(アンサーやリミックスを除けば)史上初のブギーバックのカバーにあたるからだ。
 時系列順でここまで紹介したのはすべて、1994年のリリース直後のセルフカバー、アンサー、リミックスであった。そのリリースから5年後、カバーという形でこの曲にあらためてスポットライトを浴びせたのが宇多田ヒカルなのだ――といったら大げさだろうか。
 年表をざっと見ただけでもおわかりいただけるように、これを境に、年々、ブギーバックのカバーが急増している。長らくソフト化されていなかったテイクではあるが、このライブを生だったり、テレビのOAだったり*23で観たことにより、あらためて(もしくは初めて)ブギーバックに出会った人も少なくないだろう。
 
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ブギーバック全曲解説[2000-2005]

 当時はまだまだブギーバックがカバーされる頻度は少なく、年に1回あるかないか、といったところ。ただ、2000年前後のこの時期に先駆けてカバーしたのが、宇多田ヒカルや嵐(櫻井翔)といった当時も今も第一線で活躍している面々である点は興味深い。
 また、2002年には小沢が6年ぶりのアルバム「Eclectic」にて「今夜はブギーバック/あの大きな心」の題でセルフカバーしている。以降、この「大きな心」に準じた孫カバーもいくつか登場する。

【カバー】櫻井翔 (嵐)「今夜はブギー・バック」

ALL or NOTHING [DVD]

ALL or NOTHING [DVD]

 嵐のコンサートツアー「ARASHI ALL Area tour"Join the STORM"」にて、櫻井翔がソロでカバー。ライブDVD「ALL or NOTHING」に収録されている……が、既に廃盤で大変なプレミアがついているようだ。
 普段から歌とラップの両方を担当している櫻井だけに、このカバーでも全曲通して1人で歌い上げている。nice vocalをベースにしつつも、(smooth rapにしか入っていない)「とにかくパーティーを続けよう」のフレーズを入れるなど、ちょっと変わった構成になっている。

【セルフカバー】小沢健二「今夜はブギーバック/あの大きな心」

Eclectic

Eclectic

 小沢が日本を離れてニューヨークで録音したアルバム「Eclectic」(2002年2月27日発売)におけるセルフカバー。
 SDPの参加はおろか、ラップパート自体が無くなっており、歌詞もアレンジも大きく変化。副題でもある「あの大きな心」のフレーズを用いたパートが加わっている。
 そもそも「Eclectic」自体、曲調も唄い方も従来の小沢の楽曲からガラッと変わっており、ファンの間でも評価の難しいアルバム*24になっている。
 この歌詞のアレンジ箇所を見てみると、「僕とベイビー・ブラザー」が「僕と友達が」になるなど、原曲にあった英語のフレーズの多くが日本語に置き換えられている。2010年のツアー「ひふみよ」でも、「ラブリー」の歌詞の一部が英語が日本語に置き換えられていたが、ここで既にその試みはあったのだ。
 また、「Eclectic」の発売当時、東芝EMIが運営する小沢健二の公式サイトに本人のコラムが連載されていたのだが、そのなかでもブギーバックのことが少し語られている。
http://web.archive.org/web/20020601104010/http://www.toshiba-emi.co.jp/ozawa/#04
http://web.archive.org/web/20020601104010/http://www.toshiba-emi.co.jp/ozawa/#05
 「フィリー・チーズ・ステイク」のレシピと味が気になるので、今度作ってみようと思う。
 ちなみに、カラオケの選曲時にアーティスト名「小沢健二」で絞り込むとこっちのバージョンしか出てこないため、「nice vocal」と間違えて入れてしまう率も高いので注意。

【カバー】チャッカマンズ「今夜はブギーバック」

チャッカマンズゴーゴー

チャッカマンズゴーゴー

 2003年のアルバム「チャッカマンズゴーゴー」収録。チャッカマンズはこの1枚限りで解散したバンドのようで、ネット上でもあまり詳しい情報はでてこないが、アルバムのリリース元のLD&KがPVを公開している。
https://www.youtube.com/watch?v=qA933gDIWuQ
 ラップはなく、小沢パートのみをパンク風にアレンジ。2003年頃にブームとなった青春パンクの流れ、といえばいいのだろうか*25

【その他】TERIYAKI BOYZ「今夜はバギーパンツ」

今夜はバギーパンツ
TERIYAKI BOYZ
 アルバム「BEEF or CHICKEN」(2005年11月16日発売)収録。カバーではなく、曲名や歌い出しの部分でブギーバックからの引用(というかパロディ)が見られる。
 TERIYAKI BOYZの中心人物であるNIGOはSDPとも交流があり、先述の宇多田ヒカルのライブに客演した際も、NIGOのブランドA BATHNG APEの衣装を着用していた。また、メンバーのVERBAL(m-flo)は後に、D-LITE(from BIGBANG)によるブギーバックのカバーをプロデュースし、自作のリリックでラップも担当している。
 ちなみに、アルバムの曲順でみると、この曲の直前にCornelius(小山田圭吾)がプロデュース・作曲した「moon the world」が並んでいる。

【カバー】アナログフィッシュ / SPARTA LOCALS / フジファブリック「今夜はブギー・バック」

 若手バンド3組によるライブツアー「GO FOR THE SUN」のアンコールで、3組のセッションにより披露。
 フジファブリックは後に小沢健二の「ぼくらが旅に出る理由」をカバーしている。
 そしてこの8年後、2013年にはアナログフィッシュ / フジファブリック / HINTO*26の3組によるイベント「GO FOR THE SUN 2013」が開催。この時もやはりアンコールはブギーバックだった。
 
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ブギーバック全曲解説[2006-2010]

 年表を見ると、2006年は大きな節目の年である。なぜなら2006年以降は、毎年必ずブギーバックのカバーが世に出ているからだ。
 この時期はSDPもブギーバックに再接近しており、SDP自身のプロデュースによる竹中直人&ワタナベイビーのカバーや、KREVAやグループ魂のライブへの客演、THE HELLO WORKS名義でのセルフカバーと、SDPが直接関わったカバーが多く世に出ている。
 2009年には、カバーの中でも特に知名度が高いであろう、TOKYO NO.1 SOUL SET + HALCALIによるバージョンが発表。日産「キューブ」のCMをきっかけに話題を呼び、シングルリリースされた。
 そして2010年。この年最大のトピックといえばなんといっても、小沢健二13年ぶりのコンサートツアー「ひふみよ」の開催だ。「LIFE」期のメンバーを中心に「LIFE」期の楽曲を中心に構成したツアーなので、もちろんブギーバックも披露された。

【その他】READYMADE BOOGIE TECH.「今夜はブギーテック」

 元ピチカート・ファイヴの小西康陽のプロデュースによる、野本かりあの2006年のシングル「瞳の中にミラーボール」に収録。タイトル曲のインスト・ヴァージョンで、そのアーティスト名義と曲名がREADYMADE BOOGIE TECH.「今夜はブギーテック」だ。
 タイトルがパロディになっているのみで、曲自体には引用等はみられないようだ。

【カバー】竹中直人&ワタナベイビー「今夜はブギー・バック (smooth rap)」

 小沢健二(ひいては渋谷系全体)とも関わりの深いデザイナー・信藤三雄の初監督映画「男はソレを我慢できない」(2006年7月29日公開)の主題歌。同作に出演している竹中直人とワタナベイビー(ホフディラン)のコンビによるカバーで、本家のSDPがプロデュースしている。
 SDPパートを竹中が、小沢パートをワタナベイビーが担当。トラックはワタナベイビーのアコースティックギターに、打ち込みのパーカッションとシンセベースを合わせたもの。ラップのかけ合い部分は、作中の役名に変えられている。
 smooth rapのカバーにもかかわらず、本職ではない竹中が1人2役でラップを担当していることに驚かされるが、さすがというべきか、独特のキレのある口調で見事にやりきっている。
 ワタナベイビーはホフディランやソロでもブギーバックをカバーしているが、それは後述。

【カバー】【SDP客演】KREVA「今夜はブギー・バック」

今夜はブギー・バック
KREVA
www.youtube.com
 2006年のシングル「Have a nice day!」のカップリング。
 KICK THE CAN CREWでもソロ活動でもラッパーの印象が強いKREVAだが、このカバーではなんとラップ無し
 原曲でスクラッチのネタにしているDoug E Fresh & Slick Rick「Ladi Dadi」の「HIT IT」のフレーズを(おそらく)あらためてスクラッチし直しているあたりに、原曲へのリスペクトが感じられる。曲の流れは「nice vocal」からラップを除いた形だが、歌詞はなぜか「あの大きな心」に準拠(例:「僕とベイビー・ブラザー」⇒「僕と友達が」)。
 また、2007年3月16日の「AP BANG!東京環境会議vol.1」では、SDPとともにsmooth rapをカバーしている。

【カバー】BaseBallBear / シュノーケル / チャットモンチー「今夜はブギー・バック」

 当時若手で勢いのあったバンド3組*27によるライブツアー「若若男女サマーツアー'06」のアンコールで、3組のセッションにより披露。先述の「GO FOR THE SUN」から影響を受けての選曲かもしれない。
 この3組のうち、チャットモンチーは2012年の小沢の「東京の街が奏でる」第七夜にゲスト出演。小沢健二本人とともにブギーバックをセッションしている。

【カバー】Ricco「今夜はブギーバック」

今夜はブギーバック
Ricco
 オムニバスカバーアルバム「In the Silence」収録。
 アーティストの詳細は不明だが、女性ボーカルによるソフトな雰囲気のカバーで、ラップ部分はなし。

【セルフカバー】THE HELLO WORKS feat. ハナレグミ「今夜はブギーバック (re-play)」

今夜はブギーバック (Re-play) feat. ハナレグミ
THE HELLO WORKS
 SDPを中心に、SLY MONGOOSEと、ロボ宙*28を加えた10人組のバンド、THE HELLO WORKS。そのアルバム「PAYDAY」(2007年12月7日発売)に収録されており、SDP名義でこそないものの事実上のセルフカバーといえる。10分超の大作。
 ラップパートの歌詞は、「マジ」が「ギザ」になったり「コピれ」が「コピペ」になったりと、(当時の)時代に合わせてアップデートされている。
 小沢パートをハナレグミが担当。このバージョンが発表される前年の2007年、ハナレグミはライブ「弾きが旅だよ人生は! 《YOYOGI DE 360度囲みまくって熱唱しまくっちゃいナイト》」にてSDPをゲストに迎えてブギーバックをカバーしている。
 ハナレグミの永積タカシは、小沢の「東京の街が奏でる」第四夜にもゲスト出演。このときは「いちょう並木のセレナーデ」をセッションしたようだ。

【カバー】Dell feat. Clock「今夜はブギーバック (Vocal Version)」

 7インチシングル「今夜はブギーバック」収録。2007年発売のようだが、正式な発売日およびアーティストの詳細は不明。
 比較的原曲に近いアレンジで、ピアノのフレーズは原曲からそのままサンプリングしているように聞こえる。小沢パートの歌詞は「あの大きな心」に準拠。

【カバー】COVER LOVER PROJECT「今夜はブギー・バック (nice vocal)」

今夜はブギー・バック (nice vocal)
COVER LOVER PROJECT
 カバーアルバム「THE BEST OF BOSSA COVERS~青春ダンス~」収録。
 アルバムのタイトル通り、ボサノバ風のアレンジのカバーになっている。

【SDP客演】グループ魂「今夜はブギーバック」

グループ魂の秩父ぱつんぱつんフェスティバル(雨) [DVD]

グループ魂の秩父ぱつんぱつんフェスティバル(雨) [DVD]

 ライブ「グループ魂の秩父ぱつんぱつんフェスティバル」にて披露。ほぼ同名のDVD「グループ魂の秩父ぱつんぱつんフェスティバル(雨)」(2009年2月11日)に収録されている。

【カバー】Sweet Beats Lub「今夜はブギーバック」

今夜はブギーバック
Sweet Beats Lub
 カバーアルバム「Jazzin' Pop」収録。
 アルバムのタイトル通り、ジャズ風のアレンジのカバー(インストゥルメンタル)になっている。

【カバー】さかいゆう「今夜はブギー・バック (NICE VOCAL)」

FUNKY POP

FUNKY POP

  • アーティスト: オムニバス,Ray of Light,らっぷびと,LOVE DIVINITY,RIPER,さかいゆう,BABY KID,DJ KID,KOU
  • 出版社/メーカー: Sony Music Direct
  • 発売日: 2009/03/18
  • メディア: CD
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 オムニバスカバーアルバム「FUNKY POP」収録。2016年発売のアルバム「4YU」の初回生産限定盤にも再録されている。
 キーボードの弾き語りで、ラップはなし。

【カバー】やきそば★SOUL「今夜はブギー・バック (アカペラカバー)」

今夜はブギー・バック (アカペラカバー)
やきそば★SOUL
 TV番組「青春アカペラ甲子園 全国ハモネプリーグ2008夏」に出場した小学生のアカペラグループによるカバー。アルバム「青春アカペラ甲子園 全国ハモネプリーグ2008 夏」に収録されている。
 ラップ無し。nice vocal準拠の歌詞だが、「僕とベイビー・ブラザー」だけはなぜか「僕と友達が」(「あの大きな心」での歌詞)になっている。

【カバー】noelle「今夜はブギーバック」

LOVE ELECTRO2

LOVE ELECTRO2

 カバーアルバム「LOVE ELECTRO2」収録。プロデューサーはDr.Usui(MOTOCOMPO、xxx of WONDER等)。ギターを強調したエレクトロアレンジのカバーになっている。
 noelleは女性ボーカルと様々なプロデューサーを組み合わせたカバー曲のプロジェクトのようで、ソニーミュージックの公式サイトによれば、このアルバムでは「第2弾のテーマはROCK ELECTRO!! ロックなエレクトロからエレクトロなロックバンドまで・・・ジャンルを超えた新進気鋭なアーティストが集結し、渋谷系を中心としたサブカル的名曲をカバー」しているそうだ。

【カバー】西脇睦宏「今夜はブギー・バック (Originally Performed by TOKYO No.1 SOUL SET + HALCALI)」

今夜はブギー・バック (Originally Performed By TOKYO No.1 SOUL SET + HALCALI)
西脇睦宏
 カバーアルバム「オルゴール J-POP BEAT HIT Vol.15」収録。
 アルバムのタイトル通り、オルゴールのアレンジ(インストゥルメンタル)になっている。曲名からして、TOKYO No.1 SOUL SET + HALCALIによるカバーのヒットを受けてこのアレンジをおこなったようだ。そのため、曲の構成も同バージョンのそれをなぞったものになっている。

【カバー】TOKYO NO.1 SOUL SET + HALCALI「今夜はブギー・バック」

今夜はブギー・バック
HALCALI & TOKYO No.1 SOUL SET
www.youtube.com
www.youtube.com
 宇川直宏*29の監督による日産「キューブ」のCM「Remix cube」篇にて使われた楽曲で、好評をうけてCD化。シングルにはインスト版も収録されている。
 TOKYO NO.1 SOUL SET(以下、ソウルセット)はSDPと同じくLBのメンバーで、また小沢の1993年6月19日のソロ初ライブ(日比谷野外音楽堂)にはオープニングアクトで出演*30しており、両者と長い付き合いだ。
 また、HALCALIも、元々SDPのプロデュースによる楽曲がいくつかある上に、2016年にはメンバーのHALCAが小沢健二「魔法的」にアナログ楽器担当(!)で参加するなど、両者とは何かと縁が深い*31
 「本家」に近しいメンバーによるこのカバー。映像に赤塚不二夫キャラ、楽曲はブギーバック、演奏はソウルセットで唄うのはHALCALI、という組みあわせの妙もあり、このCMは当時かなり話題になったように記憶している。当時、フジテレビの「キャンパスナイトフジ」*32という番組で生ライブをしたこともあった。実際、このCMをきっかけにブギーバックを知った人・世代も多いだろう。
 ただ、このカバーは単体の楽曲としてみると少々物足りないのも事実。元々はCM用に作られたこともあってか、曲は同じリフの繰り返しで、歌もHALCALI担当の小沢パートのみ。せっかくの組み合わせなのだから、もっと凝った構成・アレンジにすればもっと面白くなったのでは? と贅沢を言いたくなったのは筆者だけではないと思う。

【カバー】RYOCO「今夜はブギー・バック」

今夜はブギー・バック
RYOCO
 アルバム「Real World」「Proposal of Healing」収録(後者はLutileとRYOCOの連名によるカバーアルバム)。
 R&B調のアレンジになっている。

【セルフカバー】スチャダラパー featuring 小沢健二「今夜はブギー・バック」(スチャダラ2010)

 SDPの20周年イベント「スチャダラ2010」(2010年5月9日・日比谷野外大音楽堂)のダブルアンコールで小沢がサプライズ出演し、ブギーバックで共演した。

 この日は、小沢健二の13年ぶりのコンサートツアー「ひふみよ」(2010年5月18日~6月25日)の開幕前であった。つまり「スチャダラ2010」こそ、小沢が13年ぶりに出演したライブであり、ブギーバックこそ、小沢が13年ぶりに公の場で歌い演奏した曲だったのだ。
 小沢の出演はシークレット扱いで、終演後のメディアにおけるレポート記事でも写真掲載はおろか言及されてもいなかったのだが、小沢本人は終演後にコメントを出している。
 当日の臨場感あふれる筆者のツイートを引用しておこう。



 6年前のツイートでしかもこの興奮ぶりなので、いま読むと大変に恥ずかしいが、ともかく当日の空気を伝えられているとは思う。
 あまりに動転していたのでどのようなバージョンだったかはまるで記憶にないが、おそらくは後述の「ひふみよ」でSDPをゲストに招いたときと同じ、「完全版」だったのではないだろうか。

【セルフカバー】小沢健二「今夜はブギーバック」(我ら、時)

我ら、時?通常版

我ら、時?通常版

 小沢健二の2010年のツアー「ひふみよ」でのライブバージョン。
 ライブアルバム「我ら、時」に収録のバージョンではSDPがゲスト参加しているが、実際の「ひふみよ」ツアーの大半ではSDPは不参加だった。
 このページに「ひふみよ」の「とき ところ」(日程)が載っているが、筆者の記憶*33では、SDPが客演したのはNHKホールと福岡サンパレスの公演だけで、他の会場ではSDPパートも小沢が歌っていた*34ように記憶している。

 「我ら、時」の歌詞カードには、小沢による以下の文章が添えられている。

僕のカッティングから始まって、途中であの三人が加わる。この曲を愛してくださったみなさんに捧げる、完全版をここに。

 「完全版」とあるように、「我ら、時」収録のバージョンはnice vocalとsmooth rapを組み合わせた構成で、再生時間も8分22秒の大ボリュームだ。SDPの出演が事前告知なしのサプライズだったためか、ラップパートに入った瞬間の驚きの歓声も生々しく記録されている。
 13年ぶりに表舞台に姿を現わした小沢。もちろん、SDPとの共演も、このメンバーでブギーバックを披露したのも、十数年ぶりのことだ。「LIFE」期のメンバー――つまり先述の「DISCO TO GO」に限りなく近い編成での演奏。1994年の「DISCO TO GO」と2010年の「ひふみよ」とでブギーバックを聴き比べてみると、メンバーが重ねてきた年月と経験がサウンドにも大きな変化をもたらしているものの、ライブならではの楽しさ、あふれんばかりの多幸感は一貫しているように感じる。何よりも、「その頃のぼくらと言ったら いつもこんな調子だった」「とにかくパーティを続けよう これからも ずっとずっとその先も このメンツ このやり方 この曲で ロックし続けるのさ」の言葉が、強く、強く、胸に響く。

【SDP客演】相対性理論 feat.スチャダラパー「今夜はブギー・バック」*35

 SDPとスチャダラパーの対バンライブ「LIQUIDROOM 6th ANNIVERSARY『Private Lesson』」のアンコールセッションでブギーバック。
togetter.com
 小沢パートを相対性理論のボーカルのやくしまるえつこが唄っているが、やくしまるは小沢の「東京の街が奏でる」第十二夜(最終日)にゲスト出演。このときはSDPパートでラップをしていた。

【カバー】Sweet Jam Style「今夜はブギー・バック」

今夜はブギー・バック
Sweet Jam Style
 カバーアルバム「渋谷系BOSSA」収録。
 アルバムのタイトル通り、ボサノバ風のアレンジのカバーになっている……と言いたいところだが、電子音が前面に出たアレンジなので、これはボサノバではなくBOSSAという別のジャンルなのかもしれない。
 ちなみにSweet Jam Styleは他に「ジブリBOSSA」というアルバムを出しているようだ。

【カバー】Formee「今夜はブギー・バック ( Nice Vocal )」

今夜はブギー・バック ( Nice Vocal )
ForMee
 カバーアルバム「Sweet Pop J-POP COVERS ~四季のウタ~」収録。
 曲の構成もアレンジも、TOKYO NO.1 SOUL SET + HALCALIのバージョンを元にしているように聞こえる。

【カバー】Sinfonia Voice ft. Aki & rabbitman「今夜はブギー・バック」

今夜はブギー・バック
Sinfonia Voice ft. Aki & rabbitman
 カバーアルバム「J-Popカバー伝説 ii」収録。nice vocalを元に、ラップも含めたカバーになっている。
 縦ノリのケバケバしいアレンジで、同じ「ダンスフロアー」でも、原曲とはずいぶん客層が違いそうな印象を受ける。
 
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2011年以降のブギーバック

 2011年以降のブギーバックを順番に紹介する前に、ひとつ触れておきたい話題がある。
 正直なところ、特別に扱うべき話題かどうか迷ったが――ブギーバックにかかわる大きな出来事として、しっかりと書いておきたい。可能な限り、客観的に。
 
 2011年3月11日の東日本大震災。そして、それに伴う福島第一原子力発電所の事故。
 これを受けて、多くの人たち――とくに表現者、ミュージシャンは――さまざまなかたちで行動を起こした。文章で。音楽で。あるいはシンプルな言葉や写真で。
 
 小沢は、3月12日にニューヨークから短いメッセージを発して、4月11日にはメキシコシティーから「町に血が流れる時」と題した文章を公開した。
 「津波が」とか「原発は」といった具体的な話ではなく、もっと遠くから俯瞰するように、抽象的でいて、慎重に言葉を選びながら書かれた言葉の連なりであった。
 
 一方SDPは、震災を受けてこの画像を公開した。
スチャダラパー とにかくパーティーを続けよう - Google 検索
 「とにかくパーティーを続けよう。」――ブギーバックの歌詞の一節である。
 今となっては遠い昔のようだが、震災の直後は計画停電の話もあり、全国的な自粛ムードを受けて中止となるイベントも多かった。そのなかで「とにかくパーティーを続けよう。」と表明するには、覚悟が必要だったと思う。
 Bose自身が「まったく意味のない歌詞」*36「ひどいもんでしょ?(笑)」*37「『とにかくパーティを続けよう』っていうのも『なんちゃって?』みたいな感じなんだけど、ガチで受け取る人も……」*38と表現していたその言葉が、ここでは強い意味を持った、まさしく「ガチ」なメッセージとなって、ネット上に拡散したのだ。
 これを境に、ブギーバックの持つ意味はガラリと変わった――かといえば、決してそうではないと思う。やっぱり「何にも言ってねー」ような歌詞だし、ライブやカラオケで盛り上がる「心のベスト10 第一位」だし、これ以降に強いメッセージ性をもったカバーが(後述のとある例を除いて)出てきたわけでもない。
 ただ、発する人、受け取る人の気持ち次第では、元々の意味が込められていなかった言葉でさえも、強いメッセージに変質するのだ。「とにかくパーティーを続けよう。」あのとき、あの写真と言葉に心を動かされた人は、少なからずいるだろう。
 この後のSDPの活動には震災の影響を感じさせるものも多いが、これを「意外」ととるか「らしい」ととるかは難しい。かねてよりSDPのリリックには世の中に対するツッコミというか批評性をもったものも多いし、ひいてはヒップホップ自体、メッセージ性の強い曲が多いジャンルである*39
 この「とにかくパーティーを続けよう。」ともう一つ、SDPがブギーバックのフレーズに強いメッセージ性をもたせた出来事があるのだが、それは後述する。
 
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ブギーバック全曲解説[2011-2015]

 2010年代にはブギーバックがカバーされた回数も急増しており、中でも2012年は(セルフカバーを除いても)なんと8回もカバーされている。
 小沢は2012年に「東京の街が奏でる」を開催。ゲストを迎えて新たな装いのブギーバックを披露している。
 一方、SDPが他者のライブに客演してのカバーも、毎年のように行われている。
 この時期にはもう、ブギーバックは名実ともに「スタンダード」化したといえよう。

【カバー】KYOTO'S COOLEST TRIO「今夜はジャジィーバック」*40

 京都のインストゥルメンタルジャズバンドによるジャズアレンジ。
 アナログ7インチのB面曲で、A面では小沢健二「大人になれば」をカバー。
 クボタタケシ(キミドリ)がDJプレイしたことにより人気が出ているそうだ(参照:https://www.jetsetrecords.net/i/816004022512/)。

【カバー】ROTTENGRAFFTY「今夜はブギー・バック (nice vocal)」

今夜はブギー・バック NICE VOCAL
ROTTENGRAFFTY
 2011年のコンピレーションアルバム「My Tunes supported by SPACE SHOWER TV」収録。2016年のシングル「So...Start」のカップリングでも再録されている。

【SDP客演】森山未來 featuring スチャダラパー「今夜はブギー・バック (smooth rap)」

モテキ

モテキ

 久保ミツロウ原作・大根仁監督のドラマ「モテキ」で主演した森山未來が、映画版公開前のイベントでSDPと共演し、ブギーバックをカバー*41。このライブ映像自体が、映画のエンディングにも使用された。
 映画のサウンドトラック「モテキ的音楽のススメ 映画盤」には原曲(smooth rap)が収録されているため、残念ながら、森山とSDPによるバージョンは映画のエンディングでしか聴くことができない。

 「モテキ」は原作マンガの時点で各話のサブタイトルにさまざまな曲名が引用されているのだが、久保ミツロウの趣味もあってか、いわゆる「サブカル」寄りな選曲になっていた。
 テレビドラマ版や映画版では演出や小ネタでこの「サブカル」要素*42を意図的に強調しており、とくに「モテ曲」と称した楽曲の数々に対しては、後に「モテキ的音楽のススメ」なるコンピレーションアルバムが発売されるほどの力の入れようであった。
 そんな「モテ曲」の数々を締めくくる大トリが、ブギーバックだ。元々「サブカルのアンセム」的な側面があったのだろうが、この映画ではそれが堂々と打ち出されている。

 なお、大根仁はSDPと旧知の仲で、モキュメンタリー*43とライブ映像を組み合わせた異色作「スチャダラパーの悪夢」(2009年11月25日発売)も監督している。
 ちなみに原作マンガの第26話のタイトルは小沢健二の曲名「流星ビバップ」が引用されているが、当時筆者がTwitterで久保ミツロウへ尋ねたところによると、こういった理由で選んだそうだ。

【セルフカバー】小沢健二「今夜はブギー・バック」(東京の街が奏でる)

 小沢健二が2012年に東京オペラシティで全十二夜にわたって開催したライブ「東京の街が奏でる」のセットリストにもブギーバックは入っていた。
 さらに、毎回日替わりのゲストミュージシャンを迎え、アンコールでセッションするのがお約束になっていたのだが、ここでブギーバックを披露することも多かった。
 現在のところ「東京の街が奏でる」の音源や映像は世に出ていないが、小沢による各公演の振り返りがあるので、そちらにリンクを貼るかたちで、ブギーバックをセッションしたゲストの名前を挙げておきたい。

 いま振りかえってみると、「東京の街が奏でる」のゲストミュージシャンは、全員が何かしらの形で小沢の曲を演奏していることに気づく。小沢のバンドメンバーの一員としてか、もしくは、カバーで。

【カバー】Jelly Jam KIDS feat. REMI「今夜はブギーバック」

こどもHIP POP -STREET DANCE COVER-

こどもHIP POP -STREET DANCE COVER-

 カバーアルバム「こどもHIP POP -STREET DANCE COVER-」収録。
 アルバムのタイトル通り、子どもによるカバーになっている。こうして全曲を網羅してみると、高木完とK.U.D.O.のリミックスに始まり、アカペラでカバーしたやきそば★SOUL、そしてこのJelly Jam KIDS feat. REMIと、子どもボーカルによるブギーバックの流れも見えてきて面白い。

【SDP客演】田島貴男 feat. スチャダラパー 「今夜はブギー・バック」

今夜はブギー・バック feat. スチャダラパー
田島貴男
 田島貴男が、ORIGINAL LOVEではなく「田島貴男」名義で2011年から現在も継続しておこなっている弾き語りライブ「ひとりソウルショウ」。2011年11月30日の渋谷クラブクアトロ公演を収めたライブアルバム「ひとりソウルショウ」(2012年6月27日発売・同名のライブDVDも存在)には、SDPをゲストに迎えたブギーバックのカバーが収録されている。

 2011年のひとりソウルショウのツアーは「ほぼ日刊イトイ新聞」で密着特集が組まれており、その最終日(ライブアルバムに収録されている11月30日公演)はリアルタイム実況まで行われていた。
ほぼ日刊イトイ新聞 - 田島貴男のひとりソウルショウの旅

 田島はORIGINAL LOVEの楽曲「カミングスーン」(アルバム「白熱」収録)にてSDPと共演しているが、ORIGINAL LOVEがゲストを招くこと自体、非常に珍しいことだ。これを田島は「昔からの仲間のスチャダラパーがコラボしてくれて、初めて彼らと一緒にレコーディングもできた」*44と振り返っている。この公演でも「カミングスーン」とブギーバックを2曲連続で披露。
 また、お互いがメジャーデビューする前から小沢が田島のファンであったことも有名な話で、田島の著書でも「小沢くんはデビュー前の僕の歌詞が大好きだって今でも言ってくれる。僕が覚えていない古い歌詞まで覚えているしね」*45と述べられている。

 なお、田島と小沢の直接的な共演はほぼ無いが、両者と縁の深い真城めぐみ(ヒックスヴィル)のデビューほぼ20周年記念で開催した「MASHIROCK FESTIVAL 2013」(2013年9月29日)のアンコールで小沢がゲスト出演した際は、田島を含むその日の出演者全員がステージに並んで「愛し愛されて生きるのさ」をセッション。その際、「通り雨がコンクリートを……」と田島が歌い出したため、客席が驚きの歓声につつまれたのを筆者はよく覚えている。

【カバー】ABC Project feat. NemP&初音ミク「今夜はブギー・バック」

今夜はブギー・バック
ABC Project feat.NemP&初音ミク
 コンピレーションカバーアルバム「渋谷系 feat. 初音ミク」(2012年7月11日発売)収録。今回、ネット上(ニコニコ動画等)にアップされたものや同人CD等までは調べきれなかったが、これはワーナーミュージック・ジャパンからの発売である。
 渋谷系の楽曲カバーをボカロPたちが競作したアルバムで、ブギーバックの他にもフリッパーズ・ギター「恋とマシンガン」、小沢健二「ラブリー」、ピチカート・ファイヴ「東京は夜の七時」、ORIGINAL LOVE「接吻 kiss」など定番どころを収録。
 トラックリストには各曲ごとにオリジナルのミュージシャンの名前がクレジットされているのだが、ブギーバックは「Originally Performed by 小沢健二」となぜかSDPの名前が省かれているのがちょっと引っかかる。

【カバー】AZUL「今夜はブギーバック (nice vocal)」

今夜はブギー・バックNICE VOCAL
AZUL
 カバーアルバム「じぇいらっぷ : ガールズMC in the mix / house」収録。
 アルバムのタイトル通り、女性MCによるカバーとなっている。

【カバー】kaoru Harada「今夜はブギーバック」

今夜はブギーバック
kaoeu Harada
 カバーアルバム「J-POP REGGAE DRIVIN’ Vol.3.5 mixed by DJ HIROKI」
 アルバムのタイトル通り、レゲエ風のアレンジになっている。

【カバー】g1ammy, marika, MARINA「今夜はブギー・バック smooth rap」

今夜はブギー・バック smooth rap
g1ammy, MARINA & marika
 カバーアルバム「無敵ガチアゲJ-MIX」収録。ボーカル・MCともに女性。
 アルバムの曲順で、ブギーバックの直前に「ぽいぽいぽいぽぽいぽいぽぴー」が入っているのは偶然だろうか? Boseとファンタジスタさくらだは2012年7月に結婚。このアルバムは2012年11月21日に発売。

【カバー】加藤ミリヤ feat. 清水翔太&SHUN「今夜はブギー・バック」

今夜はブギー・バック (feat. 清水翔太 & SHUN)
加藤 ミリヤ
 楽曲単体で配信された後に、アルバム「TRUE LOVERS」に収録。近年のカバーの中ではもっとも知名度が高いと思われる。
www.youtube.com
 YouTubeにアップロードされているMVのコメント欄を見ると、小沢やSDPのファン層とは全く異なる世代・文化圏に属すると思われる人たちのコメントが多く、大変に興味深い。
 このバージョンはnice vocalのカバーだが、なんと、「清水翔太 feat. 加藤ミリヤ & SHUN」の名義でsmooth rapのカバーもしている。本家とはジャンルもファン層も大きく異なるが、両バージョンを(ほぼ)同時リリースしている点も含めて、非常に完成度の高いカバーだといえる。
 

【カバー】清水翔太 feat. 加藤ミリヤ & SHUN「今夜はブギー・バック (SMOOTH RAP)」

今夜はブギー・バック(SMOOTH RAP) feat.加藤ミリヤ&SHUN
清水 翔太
 カバーアルバム「MELODY」のボーナストラックで収録。
 というわけで、上述の「加藤ミリヤ feat. 清水翔太&SHUN」名義のnice vocalカバーに対して、こちらはsmooth rapをカバー。同じメンバーでnice vocalとsmooth rapの両方をカバーしたのはおそらくこれが初めてだろう。

【カバー】D-LITE(from BIGBANG) feat.VERVAL(m-flo)「今夜はブギーバック nice vocal」

今夜はブギー・バック nice vocal feat. VERBAL (m-flo)
D-LITE (from BIGBANG)
今夜はブギー・バック nice vocal (Encore!! 3D Tour [D-LITE DLive D'slove])
D-LITE (from BIGBANG)
 K-POPアイドルグループ・BIGBANGのメンバーD-LITEのソロアルバム「D'scover」収録。iTunes Storeにてライブバージョンも配信されている。
 VERBAL(m-flo)がプロデュースとラップを担当。ラップ部分は別の歌詞に書き換えられている。
 

【カバー】IA「今夜はブギーバック」

今夜はブギーバック
VOCALO COVERS
 カバーアルバム「VOCALO COVERS」収録。
 先に紹介した「渋谷系 feat. 初音ミク」では初音ミクによる歌唱だったが、こちらのアルバムではボーカロイドにIAを起用している(編曲を担当した、いわゆる「ボカロP」は不明)。

【カバー】ホフディラン「TOKYO CURRY LIFE~邦題・東京カレー物語~」

 ホフディランのライブではしばしばブギーバックをカバーしている。ただし、単体の曲としてやるのではなく、たとえば2013年のライブ「YUHI KOMIYAMA 40th Anniversary Live」では「TOKYO CURRY LIFE~邦題・東京カレー物語~」の曲中にインサートする形で歌った。
hoff.jp
 先述の竹中直人とともにカバーした際は小沢パートを担当していたワタナベイビーだが、ホフディランでカバーする際はSDPパートを担当し、小沢パートは小宮山雄飛が歌っている。
 さらに、ワタナベイビーは小沢のアルバム「LIFE」の全曲をギターで弾き語りする「LIFE全曲メドレー」を得意としており、少なくとも2回は披露されているようだ。しかも片方は2016年1月20日の「魔法的」ツアー発表イベント後の関係者パーティーだから、おそらく小沢本人の目の前でLIFE全曲を演奏したと思われる。

http://watanababy.com/post/141255183597/オザケンパーティー
watanababy.com
LIFEメドレー再び! – 日刊ワタナベイビー

【その他】禁断の多数決「今夜はブギウギナイト」

今夜はブギウギナイト
禁断の多数決
 2013年、禁断の多数決のアルバム「アラビアの禁断の多数決」収録。
 曲名のパロディで、歌詞には引用が見られないが、ギターリフやサンプリングの音ネタに原曲の影響らしきものが伺える。
 また2015年には、この曲の新バージョンを収録したEP「今夜はブギウギナイト2015EP」を発表。こちらに収録のバージョンは「今夜はブギウギナイト (smooth rap)」と「今夜はブギウギナイト (nice vocal)」と、より元ネタに近いタイトルになっているが、楽曲のアレンジ自体はむしろ原曲より遠のいている印象だ。
https://www.youtube.com/watch?v=hRo1_Upoi4g

【セルフカバー】小沢健二「今夜はブギー・バック」(笑っていいとも!)

 2014年3月20日、最終回目前の「笑っていいとも!」の「テレフォンショッキング」ゲストに小沢健二が出演。その際にギターの弾き語りで数曲演奏したうちに、ブギーバックも含まれている。
 ブギーバックを演奏したのは生放送のCM中だったが、この週の日曜日に放送の「笑っていいとも! 増刊号」にて日の目を見ている。
 ギター一本での弾き語りで、しかも歌のメロディも(おそらくは即興で)大幅にアレンジされていた。「魔法的」ツアーの際の小沢の言葉を借りるなら「インプロヴィゼーション」といったところか。

【カバー】たま&やっぴ~「今夜はブギー・バック (nice vocal)」

今夜はブギー・バック nice vocal
たま&やっぴ~
 カバーアルバム「笑顔のレシピ」収録。
 ニコニコ動画の「歌ってみた」で人気を博してメジャーデビューしたデュオで、ピアノとギターの弾き語りでカバーしている。

【SDP客演】電気グルーヴ×スチャダラパー「今夜はブギーバック」

電気グルーヴ25周年記念ツアー “塗糞祭

電気グルーヴ25周年記念ツアー “塗糞祭"(Blu-ray Disc)

 電気グルーヴ25周年ライブ「塗糞祭」(2014年10月29日~11月8日)にSDPがゲスト出演した際のテイク。同名のライブBD・DVD(2016年3月30日発売)にも収録されている。クレジット上のバージョン表記はないがsmooth rapのカバー。
 両者はもともと「電気グルーヴ×スチャダラパー」(以下「電スチャ」)名義で2枚のシングルと1枚のアルバムを共作*46している仲であり、これまでも数回の対バンや客演を重ねている。
 この日は電スチャの代表曲「聖☆おじさん」*47のあとにANIとピエール瀧の小競り合いと「ANI VS 瀧」「瀧 VS ANI」を挟んでからブギーバック、の流れであった。
 なお、電スチャでは2005年の「SUMMER SONIC 05 pre PARTY」でもブギーバックを披露しているが、このときは七尾旅人をゲストボーカルに迎えていたそうだ。七尾は2012年の小沢の「東京の街が奏でる」第十一夜にゲスト出演。小沢本人とブギーバックをセッションしたようだ。
 塗糞祭では小沢パートを石野卓球とピエール瀧が歌っている。さらに、「心変わりの相手は~」のパートで電気のサポートメンバーをつとめる牛尾憲輔(agraph)がマイクスタンドの前に立ち、小沢の(見た目の)完コピを成し遂げて大歓声を浴びていた。
 ちなみに、約半年後の2015年4月11日にSDPの25周年ライブ「華麗なるワンツー」が日比谷野外大音楽堂で開催された際には、逆に電気グルーヴがゲスト出演し、「聖☆おじさん」、ANIと瀧の小競り合い、そして「Shangri-La」といった流れであった。お互いの代表曲を客演しあったことになる。

【カバー】HITOSHI ARAI ACCOUSTIC BAND SET「Boogie Back」

Boogie Back
HITOSHI ARAI ACOUSTIC BAND SET
 アルバム「Accoustic Rock」収録。
 珍しいことに、「今夜はブギーバック/あの大きな心」のカバーである。

【セルフカバー】スチャダラパー「今夜はブギー・バック (smooth rap)」

 先に述べた「SDPがブギーバックのフレーズに強いメッセージ性をもたせた出来事」がこれだ。
 2015年10月18日、学生団体「SEALDs」がJR渋谷駅前でおこなった街頭イベントにSDPが登場し、ライブを行った。1曲目は「アーバン文法」。そのアウトロで「とにかくパーティーを続けよう これからもずっとずっとその先も」のフレーズを強調するように繰り返してから、「今夜はブギー・バック」*48
 SEALDsは元々、ヒップホップのコールアンドレスポンスを取り入れたシュプレヒコール「民主主義ってなんだ?」「これだ!」をおこなっているが、SDPもブギーバックのアウトロでこのコールアンドレスポンスを取り入れて、最後には「民主主義ってこれよくなくなくなくなくなくない?」と締めくくった*49
 ECDがSEALDsのデモに参加したり、宇多丸がラジオのゲストにSEALDsのメンバーを招いたりと、SEALDsとヒップホップミュージシャンとの関わりはいろいろあるが、とくにこのSDPのパフォーマンスに対しては大きく賛否が分かれたようだ。
 筆者がここでその是非を述べるつもりはないが、ブギーバックに関する話題を書き連ねていくうえで、印象的な出来事だと思い、記載した。
 当日の模様はYouTubeに多数アップロードされている。
https://www.youtube.com/results?search_query=%E3%82%B9%E3%83%81%E3%83%A3%E3%83%80%E3%83%A9%E3%83%91%E3%83%BC+SEALDs

【カバー】hy4_4yh「今夜はブギー・バック (smooth rap)」

今夜はブギー・バック(smooth rap)
hy4_4yh
 カバーアルバム「ハイパヨ△の青春J-RAP」収録。
 hy4_4yhは2人組のラップデュオであるため、このアルバムも日本語ラップのスタンダードを多くカバーしている。女性シンガーによるブギーバックのカバーは枚挙に暇がないが、ラップ側からのアプローチは珍しい。
 
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ブギーバック全曲解説[2016]

 いよいよ2016年まで辿りついた。なんといってもこの年最大のカバーは、本稿を書くきっかけにもなったBEAMSの40周年企画「TOKYO CULTURE STORY 今夜はブギー・バック(smooth rap)」だ。ほかにも小沢の美術館ライブでのセルフカバーやSDPの「SMAP×SMAP」出演といったコラボレーションもあったし、珍しいところでは中野テルヲのカバーなどもあった。詳しくみていこう。

【カバー】中野テルヲ「今夜はブギー・バック」

TERUO NAKANO 1996?2016

TERUO NAKANO 1996?2016

 ベストアルバム「TERUO NAKANO 1996-2016」収録(新録)。nice vocalを下敷きに、ラップ部分の歌詞にアレンジが加えられている(クレジット上は「Lyrics altered by Teruo Nakano」と記載)。
 中野テルヲとブギーバック、というと違和感を覚えるかもしれないが、中野が所属していたLONG VACATIONは渋谷系を自称し、ライブで小沢健二の「愛し愛されて生きるのさ」をカバーしていたこともあるので、けっしてありえない組みあわせとは言いきれない。
 無機質なドラムパターンとシンプルだが耳鳴りの良いギターリフに、(ヴォコーダーを通したと思われる)抑揚のない中野の歌声。これがとても気持ちいい。そしてラップ部分も省略することなく、歌詞を改変したうえで電子音楽らしいアプローチをしているのだが、これがまた*50素晴らしい。
 このベスト盤のライナーノーツには今までに中野がおこなったライブのセットリストが載っているのだが、これによるとライブ「中野テルヲ [Live141220]」(2014年12月20日公演)でもブギーバックを披露しているらしい。

【その他】二階堂ふみ「オオカミ少女と黒王子」

オオカミ少女と黒王子 DVD (初回仕様)

オオカミ少女と黒王子 DVD (初回仕様)

 映画「オオカミ少女と黒王子」(2016年5月公開)にて、二階堂ふみ演じる主人公が作中でブギーバックを口ずさんでいるらしい。
 二階堂ふみの写真集に小沢が推薦文を寄せたり*51、「魔法的」ツアー発表時の小沢の朗読が二階堂とハマ・オカモトのラジオ番組でOAされるなど、二階堂と小沢の交流を示すエピソードがいくつかある。この選曲も、二階堂と監督の話し合いで決まったそうだ*52

【SDP客演】スチャダラパー×SMAP「今夜はブギー・バック (smooth rap)」

 フジテレビ系「SMAP×SMAP」(2016年5月30日放送)にSDPがゲスト出演し、SMAPとともに、ブギーバックと「レッツロックオン」*53の2曲をセッション。ライブのみの共演で、残念ながらトークはなし。
 番組内のテロップには「スチャダラパー×SMAP 初のコラボレーション!」とあるが、2016年いっぱいでSMAPが解散のため、これが最初で最後のコラボレーションとなってしまった。
 アナログレコードを模したセット上で8人のメンバーが入り乱れ、木村拓哉とANIが「いや 泣けたッス」「えーっ」とかけ合ったり、「キミこそスゲーぜ 中居 MY MAN」と呼びかけたり、香取慎吾が「“運命のファンク”草彅剛」とラップしたりと、短い(2分半程度)ながらも凝りに凝った構成である。

【セルフカバー】小沢健二「今夜はブギー・バック」(言葉は都市を変えてゆく 小沢健二 美術館セット×2)

 小沢健二の2016年ツアー「魔法的 Gターr ベasス Dラms キーeyズ」の、番外編的な位置付けでおこなわれたアコースティックギター弾き語りソロライブ「言葉は都市を変えてゆく 小沢健二 美術館セット×2」(2016年6月21日金沢,2016年6月26日大分)。「魔法的」本編のセットリストにブギーバックは入っていなかったのだが*54、「美術館セット」ではブギーバックが披露された。
 この「美術館セット」のサウンド的な特徴は、ギター一本の弾き語りに合わせて、小沢個人の携帯電話(iPhone?)を使ってリズムマシンのバックトラックを重ねていた点である。

 以下、金沢公演に行った際の筆者のライブレポートから引用。

 「ひふみよ」の、スチャダラパーがゲストで出なかったときのバージョン*55に近かったと思います。基本は「nice vocal」で、ラップ部分も小沢さんが独特の節回しで歌って*56、最後は「大きな心」のサビも入ってくる。「ダンスフロアーに~」はみんなで合唱しました。
 歌い出しのところでマイクトラブル*57があり、「……ビーブラザー」みたいな感じになってましたね。
(大分では、Boseさんが飛び入りでゲスト出演したそうです。「魔法的」ツアー史上、初のゲストですね)
「言葉は都市を変えてゆく 小沢健二 美術館セット×2」金沢21世紀美術館2016.6.21ライブレポート #ozkn - 小さなドーナツを描いていた

TakiRen & Phonk Gee「今夜はブギーバック」

今夜はブギーバック
TakiRen & Phonk Gee
 EP「Don't Give Up Your Dream」収録。
 ラップの歌詞はまったくのオリジナルだ。

【カバー】「TOKYO CULTURE STORY 今夜はブギー・バック(smooth rap)」

 そしていよいよ、今回のBEAMSの企画である。

1970年代: 南佳孝 [シティ・ポップ] / 戸川純 [ニューウェーヴ]
1980年代: SEIJI(GUITAR WOLF) [ロックンロール] / こだま和文(ex.MUTE BEAT) [ダブ] / 森高千里 [ダンス・ポップ]
1990年代: EYE(BOREDOMS) [オルタナティブ・ロック] / 野宮真貴 [渋谷系] / サイプレス上野・高木完 [ヒップホップ]
2000年代: HUSKING BEE [メロコア] / ナカコー&フルカワミキ (LAMA/ex.SUPERCAR) [テクノ/エレクトロニカ] / クラムボン [ポストロック] / sasakure.UK feat. 初音ミク [ボーカロイド]
2010年代: チームしゃちほこ [アイドル] / tofubeats・仮谷せいら [クラウド・ラップ] / YONCE (Suchmos) [アシッド・ジャズ/ロック]
http://www.beams.co.jp/company/pressrelease/detail/85

 全体のベーシックアレンジと、一部アーティストの編曲を制作したのは、プロデューサー・アレンジャーとして数多くの作品を手がけてきたCMJK。Twitterにて制作の裏話を明かしている。



 では、以下に各ミュージシャンについて簡単に解説してゆきたい。なお、公式のプレスリリースでは大まかな年代しか記載されていないため、以下に記した年号は筆者が動画上のテロップから書き写したものとなる。

1976~1977年:南佳孝 [シティ・ポップ]

 1976年は、南佳孝が2ndアルバム「忘れられた夏」をリリースした年にあたる。全曲が本人による作詞作曲で、名盤との評判も名高いが、残念ながら現在は廃盤のようだ。

1978~1980年:戸川純 [ニューウェーヴ]

 戸川純がゲルニカを結成したのが1981年でメジャーデビューは翌1982年(ソロデビューアルバム「玉姫様」に至っては1984年)なので、1970年代に括るには少々無理があるが、日本でのニューウェーブバンドは1970年代後半から徐々に登場しているため、そのムーブメント全体を代表しての人選ということだろう。

1981~1983年:SEIJI(GUITAR WOLF) [ロックンロール]

 セイジはギターウルフのギター・ボーカル担当。2016年末現在は治療のためライブ活動を休止中とのことで、快復が待たれる。
 なお、ギターウルフは1987年結成のため、時代考証の上では少しズレがある。

1983~1986年:こだま和文(ex.MUTE BEAT) [ダブ]

 ダブバンドMUTE BEATの中心人物でトランペット奏者のこだま和文。
 MUTE BEATの解散後、こだまはソロ作のほか、Fishmansのファーストアルバムのプロデュースなども手がけている。
 また、MUTE BEATのメンバーといえば、こだま和文のほか、先述のリミックス作「DO THE HOUSE BACK (ADAPTED?)」を手がけたDub Master X(当時は宮崎泉)も挙げられる。

1986~1990年:森高千里 [ダンス・ポップ]

 1987年にメジャーデビュー。ボーカルはもちろんのこと、自身で作詞やドラム演奏などもこなし、特に歌詞に対しては影響を公言するミュージシャンも少なくない。
 また、tofubeatsの2013年のメジャーデビューシングル「Don't Stop The Music」のタイトル曲では森高千里がフィーチャリングされている。

1990~1992年:EYE(BOREDOMS) [オルタナティブ・ロック]

 EYEはBOREDOMSのほかにもハナタラシ等での活動があり、ハナタラシは小山田圭吾のレーベル・TrattoriaからCDをリリースしているため、広義でいえば渋谷系といえ……ないか。

1993~1995年:野宮真貴 [渋谷系]

 野宮真貴はこの当時、ピチカート・ファイヴの3代目ボーカルとして国内外で活躍していた。Instagramにて本人のコメントも発表されている。

BEAMS 40th movie公開!おめでとうございます!私は1993年渋谷系代表として出演しました~♪名曲「今夜はブギーバック」を歌えてうれしいです!当時は確かにカフェブームでしたね(^_-)-☆
www.instagram.com

 野宮真貴や渋谷系に関してはいろいろ書くべきこと、書きたいことがあるが、野宮は2016年11月にソロライブであらためてブギーバックをカバーしているため、詳しくはそちらで述べる。

1996~1998年:サイプレス上野・高木完 [ヒップホップ]

 参加ミュージシャンの中でも、サイプレス上野は活動時期と映像内の時代が明確に乖離している。
 本来、この時代にヒップホップの第一線で活躍していたミュージシャンといえば真っ先に名が上がるのはSDPだろう。だが、今回の企画ではあえて本家本元のSDPではなく、その先輩格にあたる高木完*58と、逆にSDPからの影響を公言している後輩のサイプレス上野を起用しているのだ。明らかにSDPを意識した人選で、なんとも手が込んでいる。

1998~1999年:HUSKING BEE [メロコア]

 HUSKING BEEは2005年の解散後、2012年に再結成。現在も精力的に活動している。
 ジャンルでいうとメロコアはパンクの一種に分類されることが多く、この数年後には、メロコアの影響を受けた世代により青春パンクのムーブメントが訪れる。先述のチャッカマンズなどはまさにその流れにあるだろう。

2000~2004年:ナカコー&フルカワミキ (LAMA/ex.SUPERCAR) [テクノ/エレクトロニカ]

 元SUPERCAR(1995-2005年)、現LAMA(2010年-)の中心メンバーであるナカコーとフルカワミキ。この時期はまさにSUPERCARが第一線で活躍していたころ。ジャンル表記は「テクノ/エレクトロニカ」となっているが、SUPERCARは前期と後期とで作風が大きく異なっており、このジャンルと今回のアレンジは後期(およびLAMA)寄りである。ちなみにLAMAには、(先述の電気グルーヴ×スチャダラパーがブギーバックをカバーした際に小沢パートを真似した)牛尾憲輔も在籍している。

2005~2006年:クラムボン [ポストロック]

 1996年の結成から現在に至るまで一貫して同じメンバーで活動を続けているクラムボン。バンドとしてはSUPERCARなどとほぼ同期である。
 メンバーの原田郁子は小沢の「東京の街が奏でる」第七夜にゲスト出演。「ぼくらが旅に出る理由」をセッションしたようだ。
 クラムボンとしても、2014年の小沢の「笑っていいとも!」出演時にスタジオへ花を贈っている。

2007~2010年:sasakure.UK feat. 初音ミク [ボーカロイド]

 ニコニコ動画のオープン*592006年12月、初音ミクのリリースが2007年8月。先述のとおり、ボーカロイドによるブギーバックのカバーは(筆者がCDリリースを確認できただけでも)2件の先例がある。
 sasakure.UKはボカロPとして名を上げつつも、ソロアルバムでは土岐麻子をゲストボーカルに迎えたり、矢野顕子の2014年のアルバム「飛ばしていくよ」への曲提供と同作のリリースツアーに参加をしたりと、この企画に参加しているミュージシャンとも近しいフィールドでの活躍が多い。

2010~2012年:チームしゃちほこ [アイドル]

 2010年代のカルチャーを語る上でアイドルの話題は欠かせない。もはやアイドル「ブーム」でもなく、完全に定着した文化だ。ここではチームしゃちほこがその代表格として登場している。

2012~2014年:tofubeats・仮谷せいら [クラウド・ラップ]

 tofubeatsのメジャーデビューは2013年だが、それ以前からリミックスやインターネット・レーベル「Maltine Records」からのリリース*60などで数多くの作品を発表しており、中でも2012年発表の「水星」は、2010年代のブギーバックといっても過言ではないだろう。
 今回の企画の担当者もおそらく、「水星」のイメージでtofubeatsにオファーしたのではないだろうか。

2014~2016年:YONCE (Suchmos) [アシッド・ジャズ/ロック]

 Suchmosは、若手バンドの中でもいま特に勢いのある1組だろう。2016年内の活動だけみても無数のフェスで引っ張りだことなっており、この企画のトリにはふさわしい人選だ。

【カバー】野宮真貴「今夜はブギー・バック」

 渋谷系ほど、音楽的な定義があいまいなジャンルもないだろう。渋谷系の代表的なミュージシャンといえば、小沢やコーネリアス(小山田圭吾)、ピチカート・ファイヴ、ORIGINAL LOVE(田島貴男)などの名が真っ先に挙がる*61。だが、これらを「渋谷系といえばこういう曲調の音楽だ」なんて一括りに語ることは不可能に等しい……などと語り始めると大変ややこしい話になってしまう(この時点で既にややこしい)ので、渋谷系の定義を語るのは避けておく。
 ただ、一般に渋谷系に分類されるミュージシャンの中でも特に、元ピチカート・ファイヴの野宮真貴は近年「渋谷系」のキーワードを積極的に用いて活動している。デビュー30周年アルバム「30 ~Greatest Self Covers & More!!!~」(2012年1月25日)でピチカート時代の楽曲を多くカバーしたのを境に、2013年から始まったBillboard Liveでのライブシリーズ「野宮真貴、渋谷系を歌う。」や、その模様を収録した同名のライブ盤(2014年11月12日発売)、それに渋谷系カバーアルバム「世界は愛を求めてる。 What The World Needs Now Is Love~野宮真貴、渋谷系を歌う。~」(2015年11月11日発売)や「男と女 ~野宮真貴、フレンチ渋谷系を歌う。」(2016年8月31日発売)を立て続けに発表。また、やはり渋谷系の代表格であるカジヒデキとともに、渋谷区のコミュニティFM「渋谷のラジオ」にて「渋谷のラジオの渋谷系」(毎週月曜日)のパーソナリティも務めている。……と、近年の野宮の活動に「渋谷系」のキーワードは密接に関わっているのだ。
 その野宮が2016年11月にビルボードライブ東京などで行った「野宮真貴、渋谷系を歌う-2016-。“男と女”」のセットリストには、ブギーバックのカバーが名を連ねている。残念ながら筆者はこの公演を観に行けなかったのだが、近年の活動のサイクル通りであれば、来年にはこのライブ音源が発売されるのではないか……と期待している。

【カバー】FAMM'IN「今夜はブギー・バック」

 本稿の前編は2016年12月9日に公開したのだが、まさにその日、新たなブギーバックが世に出ていたようだ。
block.fm
 「SHIBUYA ILLUMINATION 2016 点灯式」というイベントにて、FAMM'INがブギーバックを初披露したという。いずれは何らかの形でリリースされるのかもしれない。

おわりに

 以上、現時点で筆者が確認できたブギーバックのすべてである。
 
 単純に時系列順に紹介していくだけのはずだったが……どういうわけか、こんな超長文になってしまった。説明文が極端に簡素になってしまったものも多く、当該ミュージシャンの方やそのファンの方には申し訳なく思う。
 途中途中でも述べてきたが、ブギーバックのカバーの数は年を追うごとにどんどん増えている。ご覧のとおり、カバーしているミュージシャンの属するジャンルも様々だ。どんなジャンルにアレンジしても通用する「懐の広さ」こそが、ブギーバックがスタンダードナンバーと化しつつある最大の理由なのだろう。
 また、前編から述べてきたように、ブギーバックの歌詞、特にSDPのパートは「何も言ってねー」ような内容だ。だからこそカバーしやすいのだろうが、それでいて逆にこの歌詞が特別な意味を持つ場面も増えてきていて、その逆転現象もなかなか興味深い。

 本稿を書き始めたきっかけはごくごくシンプルで、「ブギーバックのカバーはどれだけあるんだろう?」「どうしてこんなにカバーされているんだろう?」の2点だった。両者ともに、いちおうの回答は出したつもりである。
 ただ、2017年以降もブギーバックは歌われ続けるだろう。
 だから、これだけの長文にお付き合いいただいた皆様に感謝しつつ一旦筆を置くが、折を見て本稿も改訂していきたい。これからもずっとずっとその先も。

*1:※全ての小見出しを目次に載せると膨大なボリュームになるため、主要なものに絞り込んでいる

*2:音源化されていないカバーの情報も充実していて大変助かったが、他媒体での裏付けがとれなかったものは基本的に省いた

*3:間違っている可能性大なのでご指摘いただけると幸い

*4:実際、BEAMSの『TOKYO CULTURE STORY 今夜はブギー・バック(smooth rap)』のプレスリリースhttp://www.beams.co.jp/company/pressrelease/detail/85でもこのジャケ写が用いられている

*5:https://www.google.co.jp/search?q=ecd+do+da+boogie+back&tbm=isch&tbo=u&source=univ&sa=X&ved=0ahUKEwjHkLHy0ZrRAhWJf7wKHWAcBK0QsAQIKQ&biw=1296&bih=773

*6:参照:http://tower.jp/article/series/2008/04/03/100047337「このアルバムはかなりアナログを切ってますよね。“DO THE BOOGIE BACK”は7インチで出して」

*7:キミドリの「自己嫌悪」を小沢は非常に気に入って1日100回聴いていた、と2016年4月17日の「スチャダラ2016 ~LB春まつり~」にてBoseが証言しているhttps://twitter.com/kagariharuki/status/721684738604290052

*8:考えてみれば、ソロデビュー前のフリーライブ※や「レヴュー96」も同様なのだが

*9:ここで初披露となり、後に「LIFE」へ収録された新曲は「愛し愛され生きるのさ」(「て」が抜けているのは、改題されたためか単に脱字なのか不明)、「JACKSON」(後の「東京恋愛専科・または恋は言ってみりゃボディ・ブロー」)、「LOVELY」(ラブリー)の3曲

*10:原文ママ

*11:元ネタはおそらくブルース・ブラザーズ

*12:どれだけ糸井が愛聴していたかは、SDPの3rdアルバム「WILD FANCY ALLIANCE」(1993年2月21日発売)に関する糸井とBoseの対談「彼方からの手紙」http://www.1101.com/kanata/index.htmlに詳しい。この対談には小沢の名前も少しだけ出てくるので、未読の方はぜひ。

*13:「週刊ファミ通」を経て、現在は株式会社ほぼ日(2016年12月に「東京糸井重里事務所」から社名変更)の取締役http://www.hobonichi.co.jp/company/about.html。「ほぼ日」にアクセスしたことがあって、この人の文章やインタビューを読んだことのない人はいないはず。ゲームのプレイ日記にも定評があり、とくに『ファイナルファンタジーXI プレイ日記 ヴァナ・ディール滞在記』は知る人ぞ知る名著。

*14:2003年6月20日発売。MOTHERとMOTHER2のゲームボーイアドバンス向け移植版

*15:「Creative Direction」の肩書きで川勝正幸の名がクレジットされているが、いかにも川勝ワークスといった異様な凝りかた。歌詞カードの代わりに、収録曲それぞれをイメージした架空のジャケットが計12枚封入されている

*16:原文ママ。よくよく数えてみると本来の歌詞に対して「なく」が1個足りない

*17:出典:http://amebreak.ameba.jp/column/2010/12/001834.html

*18:これをリミックスと呼べるかどうかは別として

*19:前者は「トリプルショット EP」よりも収録曲が2曲少ないCDと、ビデオがセットになった限定生産のボックス

*20:フェス出演時の模様がテレビで放映されたもの等も勘定に入れると

*21:RIZEのJESSEと金子ノブアキのユニットらしいが詳細不明

*22:PVを除けば

*23:あるいはYouTubeだったり

*24:単純に「良い」「悪い」「好き」「嫌い」の話ではなく、「難しい」と表現するのが最適だと思う

*25:FLOWが海援隊の「贈る言葉」をカバーしてヒットしたのも2003年のことである

*26:2009年に解散したSPARTA LOCALSとメンバーの多くが重複

*27:過去形で表現したら皮肉っぽくなってしまったがけっして他意は無い

*28:元々は脱線3のメンバーだが、近年のSDPのライブではワンマンでもフェスでも必ず出演しており、SDP4人目のメンバーといえる

*29:グラフィックデザイナー、VJなど様々な肩書きがあるが、現在は「DOMMUNE」の運営者として有名

*30:参考: https://web.archive.org/web/20020203051653/http://soulset.eccosys.co.jp/soulset/profile.html

*31:HALCALIには、やはり小沢と縁の深いギタリスト・木暮晋也も、かせきさいだぁと組んで「フワフワ・ブランニュー」という楽曲を提供している。個人的な思い入れで恐縮だが、これも超名曲だ

*32:自分の実況ツイートによると、放送日は2009年9月19日

*33:SDPが出演した日は観に行けていないため、当時ネット上で目にした情報

*34:もしくは観客の合唱?

*35:[12/31追記]Twitterにて@DankiGrooveさんより指摘をいただき追加。ありがとうございます。

*36:「ラップのことば」2010年刊

*37:「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」2008年2月23日放送

*38:Amebreak「永久保存版!スチャダラパー20周年記念特別対談!Bose ×サイプレス上野(前編)」http://amebreak.ameba.jp/column/2010/12/001834.html 2010年12月24日公開

*39:とはいえ、ヒップホップの全部が全部メッセージ性の強い楽曲ばかりではなく、やっぱり「何も言ってねー」ものもあるのだが

*40:2017年1月1日追加。Twitterにて@hicha_nさんより情報提供いただきました。https://twitter.com/hicha_n/status/815505463710056448ありがとうございます。

*41:参照:森山未來、「モテキナイト」に飛び入り参加 「今夜はブギーバック」を熱唱 | ORICON STYLE

*42:「サブカル」というと定義が曖昧だが、「モテキ」(とくにドラマ版)のもつ要素を表現するには「サブカル」というほかないと思う

*43:ドキュメンタリーを模したフィクション

*44:出典:田島貴男「ポップスの作り方」

*45:出典:田島貴男「ポップスの作り方」

*46:正確にはもうひとつ、「赤塚不二夫トリビュート~四十一才の春だから~」にて「NA.NO.DA」を発表

*47:中村光の大ヒット作「聖☆おにいさん」のタイトルの元ネタであることは、意外と知られていない気がする

*48:smooth rapのカラオケバージョンをバックトラックに使ったらしく、小沢の歌声はスタジオ音源がそのまま流れていた

*49:2016年4月17日の日比谷野外音楽堂でのライブでも、(曲は忘れてしまったが)SDPの楽曲のアウトロで「民主主義ってなんだ?」「これだ!」のフレーズを用いていた。

*50:好みは分かれるだろうが

*51:参照:小沢健二、ニューヨークでオフ過ごす二階堂ふみ写真集にコメントhttp://natalie.mu/music/news/166204

*52:参照:大人もハマるラブコメ『オオカミ少女と黒王子』廣木監督インタビュー「恋愛映画って一つの成長モノ」http://getnews.jp/archives/1468474

*53:2016年4月20日発売「あにしんぼう」収録。余談だが、歌詞にある「ドブス」のフレーズがSMAP×SMAPにて字幕付きでOAされたのはかなり凄いことだと思う

*54:「魔法的」ツアー後に小沢のサイトで公開された文章「天を縫い合わす」http://hihumiyo.net/kenji-ozawa/%E5%B0%8F%E6%B2%A2%E5%81%A5%E4%BA%8C-%E8%AA%AD%E3%81%BF%E7%89%A9-%E6%96%87%E7%AB%A0/amanu.htmlでは“「なんかさー、変な新曲とかいいからさー、ブギーバックやってよ」みたいな客席だったら、ああいうライブはできないです。”と書かれている

*55:つまり「我ら、時」では聴けないもの

*56:笑っていいとも!出演時もこんな感じだったかな?

*57:他の方によると、マイク切替のミス?

*58:SDPの1st「スチャダラ大作戦」のプロデュースも手がけている

*59:当初はYouTubeなどの動画にコメントを付ける機能のみで、動画サイトとしての機能は無かった

*60:変名のdj newtown名義での活動も含む

*61:よくよく考えてみると、ここに挙がった面々のすべてがブギーバックをカバーしている