Cookie Clickerはすごいぞ、と徹底的に褒めたたえたい

 先日(2016年2月8日)、Cookie Clicker(クッキークリッカー)の大規模アップデートがありました。
Cookie Clicker
 2013年8月の初公開以来、ずっとv.1.0系統でアップデートが続いてきた中、今回のアップデートでついにv.2です。
 アップデート自体が久しぶり(正式版はなんと15ヶ月ぶり)だったこともあってか、しばらくプレイしていなかった人の間でも多少話題になったようです。

 ただ、その反応の中でちょっと引っかかったのが、「キワモノ」扱いするコメントが多かったことです。
 もっと悪く言えば「舐めてる」感があるというか。ほんの一瞬話題になっただけの一発屋、時代のあだ花的扱いというか。

 とんでもない!
 Cookie Clickerほど丁寧に面白く作られた(作られ続けている)ゲームはそうそうない! と、僕は強く主張したい。

 そんなわけで、Cookie Clickerが具体的にどう素晴らしいのか、ブーム最初期より(ところどころサボりつつも)長く遊び続けてきた者の立場から、熱く、熱く、たっぷりと説明したいと思います。
 なお、普段の僕の文章はわりと体温が低めというか、予備知識のない第三者にも伝わるよう客観的に書いているのですが、正直、今回ばかりは(個人的な想いが強すぎて)客観的に書ける自信がまったくない。ご容赦ください。
 ゲームの概要は、ニコニコ大百科の記事でものすっごく事細かにまとめられているので、そちらをぜひご参照ください。本稿で用いている用語も基本的にニコニコ大百科準拠です。
Cookie Clickerとは (クッキークリッカーとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

序文〜Cookie Clickerとわたし

 まず、Cookie Clickerに関する僕のやり込み具合をカンタンに説明しておきます。
 遊び始めたのはご多分に漏れず、日本国内で話題になり始めた2013年9月15~16日頃から。

 当時のTwitterのログを読み返してみると、1週間やそこらですぐ飽きてしまった人が多かったようですね。一方、僕はずーっと飽きずにパソコン立ち上げっぱなしのブラウザ開きっぱなしで遊んでおりました。
 それ以来、時々サボる期間がありつつも、丸1年ほど熱中していました。

 ただ、前回の正式アップデートがあった2014年10月頃から遊ぶ頻度が落ち、「今度の正式アップデートが来たら本格的に再開しよう」と思ってから、はや15ヶ月……。待ってました。
 そして今は、アップデート直後から現在進行形でたっぷり楽しんでいるところです。

 ちなみに僕のアップデート直前の生産状況はこんな感じ。
f:id:kagariharuki:20160212212937p:plain
 Cpsが226.881quadrillion(22.6京枚)。Achivement(実績)の達成率は204/216個。あ、ツールやチートの類はまったく使っていません。僕よりずっとずっとやり込んでいる方はいくらでもいるはずですが、ツールなしチートなしのプレイでは、まあまあのところではないでしょうか。

 そして、最新v.2での現状はこんなところ。
f:id:kagariharuki:20160212221011p:plain
 これまで焼いたクッキーの総数は、210septillion(2𥝱1000垓枚)です。*1

Cookie Clickerのここがすごい

 いよいよ本題です。以下目次。

  • 中毒性が高い
  • 独特のセンス
  • 果てしない戦略性とやり込み要素の数々
  • 洗練された遊びやすさ
  • プレイヤーの想像を遙かに上回るアップデート

中毒性が高い

 これはもう説明不要でしょう。
 海外の得体の知れないブラウザゲームにもかかわらず、(ほんの数日間とはいえ)日本で大流行したのが何よりもの証拠。
 最初はクリックしてちまちまとクッキーを増やすしかないけど、施設やアップグレードを購入するにつれて加速度的に増してゆくCpsと貯蓄クッキー枚数。数字がどかどか増えていくさまを見ているだけで、相当に楽しいものです。
 しかも基本は放置しているだけでどんどんクッキーが溜まっていくので、忙しいときも大丈夫。毎日出かける前と帰宅後にちょっとだけ覗くだけでいいし、時間がある時に貼り付いて遊んでももちろん楽しめる。
 昨今ではコンシューマゲームどころかソーシャルゲームまでもが腰をすえて遊ばないといけないタイトルが多いですよね。遊ぶにもカロリーが要るというか。
 そんな中、ほんのわずかな空き時間にブラウザで様子を見たりクリックするだけで楽しめるCookie Clickerはきわめて貴重です。

独特のセンス

 これも説明不要ですね。
 クッキーを焼くための施設に、タイムマシンや反物質コンデンサやプリズムが登場し、各施設に合わせてババアも変化していく、このセンス……。
f:id:kagariharuki:20160212213256p:plain
 さらに、ババアポカリプスが発生するとババアが激怒しクッキーに虫が集まり虫を叩き殺すと食われた分より多くの枚数のクッキーが手に入り……と言葉で説明しても理解できないしゲーム中で目にするとさらに理解に苦しむギミックが多数。
 フレーバーテキスト(施設やアップグレードなどの解説文)もいろいろ凝っているようなのですが、英語が苦手なので部分的にしか理解できないのが残念かつ悔しいところ。

果てしない戦略性とやり込み要素の数々

 この辺りから、「あれ、そんなゲームだったっけ?」と首をかしげる人もいるのでは。
 もしあなたが「特に目標もなく、ただ延々とクリックしたり放置したりで単調にクッキーの枚数を増やしていくだけ」なイメージを抱かれているとしたら、それはあまりに勿体ない!
 むしろ、ハードルの高さとご褒美のバランスがよくとれている、この上なく「真っ当」な作りのゲームと言えましょう。
 個々のやり込み要素をカンタンに解説していきます。

  • アップグレード

 ゲーム序盤から購入できるものも多いですが、中には、相当なやり込みを重ねないと獲得できない(そもそもお目にかかれない)ものも多数。
 なかなか手の届かない高額なアップグレードを貯めに貯めたなけなしのクッキーで獲得し、Cpsの値が倍以上に跳ね上がった瞬間などはもう、とてつもない快感が味わえます。
f:id:kagariharuki:20160212213535p:plain
▲まだ全体の78%しか購入していませんが、画面に収まりきりません

  • 実績(Achivement)

 特定の条件(施設を●個建てる、クッキーを●枚焼く、など)を満たすと解除される実績。
 (ツールやチート無しでは)数ヶ月~数年のプレイ時間を費やさないと達成できないものや、ノーヒントではまず気付かない裏技的なプレイが必要なものなど多彩です。
 しかもこの実績は、単なるやり込み度の指標に留まらず、解除すればするほどクッキーの生産量が増すのです。なのである程度やり込んで来ると、「どの実績の解除を狙ってプレイするか」と計画を立てる面白さもあります。
 アップグレードにしても実績にしても、ゲーム内の「目標」の機能と「ご褒美」の機能を兼ね備えているんですね。
f:id:kagariharuki:20160212213835p:plain
▲実績を解除するとミルクが溜まる。実はこのミルクとクッキーの位置関係を使ったとある実績もあるんですが、この仕掛けは本当によく出来てます
f:id:kagariharuki:20160212214613p:plain
▲Shadow Achivement(隠し実績)もあり。ただしこちらはミルクに影響しないので、完全な自己満足要素

  • 周回要素

 これは特にご存知ない人も多いのでは?
 実はCookie Clickerには、ある程度やり込んだ段階でゲーム内リセットをすると、2周目以降は大幅にパワーアップした状態で再スタートできるのです(いわゆる「強くてニューゲーム」)。
 しかも、何度も周回を重ねれば重ねただけ(累計のクッキー生産数が多ければ多いだけ)、パワーアップの度合いも増します。
 ただし、リセット直後は態勢の立て直しに多少の時間がかかるので、むやみに何度もリセットすれば良いわけでもない。
 そのさじ加減がまた絶妙で、「そろそろリセットするか? いやでももうちょっと粘ってから……」と悩むのがまた楽しいのです。
f:id:kagariharuki:20160212214220p:plain
▲リセットした瞬間、あんなに賑やかだった我がベーカリーが全くの無に。諸行無常。しかし、ちょっと遊んでみると1周目とは格段に異なるペースでクッキーの生産量が増していくので、過去のプレイが無駄になっていないことを実感させられます

洗練された遊びやすさ

 これもあまり言及する人がいないと思うのですが――Cookie Clickerの遊びやすさ、UIの洗練のされ方は、国内外のブラウザゲームの中でも際立っていると思います。これは本当に、声を大にして言いたい!
 Cookie Clickerの基本システム自体はシンプルなものの、アップデートによりどんどん要素が追加されているので、各種やり込み要素も含めれば相当複雑な代物になっています。しかし、アップデートの度にUIも修正されているので、特に不便を感じないどころか、どんどん遊びやすくなっている。
 たとえば、テキストがポップアップしてすぐ消えるだけだったアラート類の表示が、ユーザーが自分で「×」をクリックするまで表示され続けるようになっていたり。
 たとえば、Golden Cookieをクリックしたときの効果の残り持続時間が画面下部のバーで確認できるようになっていたり。
f:id:kagariharuki:20160212214912p:plain
▲最下部の黄色のバーが残り時間表示
 たとえば、施設をまとめ買い・まとめ売りするためのボタンが追加されていたり。
f:id:kagariharuki:20160212214752p:plain
▲最新のv.2ではキーボードショートカットにも対応
 痒いところに手の届く微調整がなされているおかげで、我々プレイヤーは心おきなくクッキーを焼きまくれるわけです。
 Cookie Clickerが流行った当時いくつかのクローンゲームが公開されましたが、それらと本家の最新版とを比べてみると、UIの洗練度の違いは歴然です。

 あとUIの話とは別ですが、オプション機能の充実っぷりも目を瞠るものがありますね。
 中でも秀逸なのが、セーブデータのテキストでの書き出し&読み込み機能。
 「Export Save」をクリックすれば、その時点でのセーブデータがテキストで書き出されるというもの。昔のゲームのパスワード(ふっかつのじゅもん)みたいな感じですね。
f:id:kagariharuki:20160212215007p:plain
 これをコピペしてテキストファイルやメール等で保存しておけば、プレイする環境が変わっても簡単にセーブデータを移行できるのです。もちろん、いざという事態に備えてのバックアップとしても有効。しかも先述の周回要素絡みで「今のタイミングでリセットしてみたらどうなるかな?」と試してみたいときにも、一旦セーブデータを書き出しておけば、「今リセットしてもメリットが少ないな」と思ったときにすぐ復旧できるわけです。
 他にもプレイ環境に合わせて画面演出を細かくON/OFFできるなど、長い時間遊ぶゲームだからこそ有り難いオプションが充実しています。
f:id:kagariharuki:20160212215332p:plainf:id:kagariharuki:20160212215338p:plain
▲諸々の描画オプションを切った状態(左)とONにした状態(右)とでこんなに違います

プレイヤーの想像を遙かに上回るアップデート

 そう。これこそが、Cookie Clickerを夢中で遊び続ける大きな理由のひとつです。
 「次はどんなアップデートが来るんだろう」と我々プレイヤーが期待するのに対して、作者のOrteilさんは毎回毎回、斜め上のアップデートで度肝を抜いてくれます。
 「うわなんだこの新要素!?」とびっくりして大騒ぎできるのは、リアルタイムで遊び続けているからこその醍醐味でしょう。

 たとえば、季節にちなんだギミックの話。
 2013~2014年にかけて、季節ごとにちなんだギミックがリアルタイムで実装されてきました。ハロウィン、クリスマス、バレンタイン、エイプリルフール、イースター
f:id:kagariharuki:20160212215552p:plain
▲今の季節はバレンタインイベント真っ最中。ハート型のクッキーが手に入るという、(このゲームにしては珍しく)可愛いギミックです
 先ほどのセンスの話にも繋がりますが、クリスマスイベントだからといって試験管から生まれたサンタにクッキーを食わせて育てるミニゲームを実装するなんて、一体誰が思うでしょうか*2
f:id:kagariharuki:20160212215438p:plain
▲試験管のどこにどうやってクッキーを与えるのか

 しかも、そのアップデートに対する作者Orteilさんの姿勢がまた素晴らしい。
 「そう来たか!」と意表をつくアップデートを繰り返す一方、ゲームバランスが大きく変化するような大規模アップデートは、β版でプレイヤーの反応を充分に伺ってからリリースされています。
 実際、今回のv.2アップデート「legacy」は、かなり大胆な新要素が加わっているので、β版「legacy beta」を3回もリリースした上での正式アップデートです。
 僕は最初のlegacy betaしか遊んでいないのですが、あまりにもパワーアップの度合いが極端すぎてゲームバランスが破綻してしまう、大味な代物になっていました。「これはさすがにちょっと……」と思っていたら、今回の正式アップデートではちゃんと絶妙なバランスに整っていましたね。

 また、新要素を追加するアップデートには慎重な一方、何かしら不具合が見つかった場合には即対応されているのも素敵です。
 企業が作った有料のゲームなら当たり前の対応ですが、個人製作の無料ゲームでこれだけ長年にわたって丁寧に作っているのは、本当に立派だし、応援し続けたいと思います。

 ここまで長々と書いてきましたが、今回のv.2アップデート「legacy」が凄いのは、以上に挙げたCookie Clickerの魅力すべてを網羅する大規模アップデートになっている点です。
 一番の目玉は、「Legacy」ボタンから実行できる「Ascend」機能。リセットしたときにしか購入できない特別なアップグレードが追加されました。
f:id:kagariharuki:20160212215848p:plain
▲Ascendしたときの演出には度肝を抜かれます。クッキーが割れたとき、世界はもう一度再構築されるのだ……
 他にもドラゴンの育成とか新施設3つとか新実績とか新アップグレードとかUIの改良とかセーブデータのテキストデータ書き出しとか効果音の追加とか、どれもこれも説明が大変な大ネタばかりなので、詳しくはニコニコ大百科の該当項目をご覧あれ。
f:id:kagariharuki:20160212220106p:plain
▲ほどほどに成長したドラゴンの姿。ドラゴンの主食はクッキーとかカーソルとかババアとか銀行とかタイムマシンとか、要は全部です

 さて。実はCookie Clickerには、未だに実装されていない新要素がまだあります。それがダンジョン。2013年9月に「dungeon beta」がリリースされたのですが、未だに正式実装の気配はありません。*3
 このままお蔵入りになって次はまた全く別の新要素が加わるのか、それとも今度こそダンジョンの正式実装に向けて動き出すのか。今後の展開に首を長ーーーーくして待ちつつ、今はv.2の新たなやり込み要素を楽しみ尽くすべく、ただひたすらにクッキーを焼くのであります。

 何にせよ、Cookie Clickerは現在進行形で本当に楽しいので、ブームになった当時ほんのちょっとだけ遊んだという人も、そもそも遊ばなかった人も、この機会に遊んでみてはいかがでしょうか。こんなに細ーーーく長ーーーく楽しめるゲームなんてそうそう無いですよ。
f:id:kagariharuki:20160212221608p:plain
MacBook Proのトラックパッドはクッキーをクリックしまくるのにこの上なく最適なデバイス。ありがとうジョブズ、ありがとう……

*1:小学生のころに数字の桁の日本語表記(万~無量大数)を丸暗記してみたことがあるんですが、まさか今になってそのとき覚えた𥝱(じょと読む。億、兆、京、垓の次の桁)を実際に使う場面が来ようとは……

*2:しかもその成長したサンタの最終的な姿が……

*3:β版自体はまだプレイできるので、可能性はゼロではないはず