「深い愛を抱けているか?」

 ええと。以下の文章は、自分としてもどうまとめたらいいか、迷いながら、悩みながら、書いています。
 普段このブログで書いている内容とはだいぶ毛色が異なりますし、ネット上でこういう問題提起や議論をしたこともほとんど無いですし、そもそもインターネットってもの自体が議論には向いてないと思っています。個人攻撃みたいなことをするつもりも毛頭ないです。なので、あくまで「僕はこう思うんですが、どうでしょうか」ってくらいのトーンで受け止めていただけると幸いです。
 
 昨日5月29日、小沢健二の新曲『流動体について』のMVの完成版がついに公開されました。これ自体は本っ当に喜ばしい話題です。僕もさっそく観ましたが、さすがタケイグッドマン監督! と拍手喝采を送りたい、素晴らしい映像でした。1回や2回観ただけでは気づかないような仕掛けが詰まっているように見える内容なので、いろんな人と語り合いたくなります。このMVについて、機会があればあらためてブログの記事にしようかなと考え中です。
 
 ……という明るいニュースで盛り上がっているなかで冷や水を浴びせてしまうような話題になるのは百も承知ですが、本題はここからです。
 
 今のところ(29日~31日までの3日間)は、この『流動体について』のMV、スペースシャワーTV(以下、スペシャ)のみの限定OAとなっています。
natalie.mu
 そのあとの公開予定は明らかになっていませんが、どうやらウェブでの公開も近々予定されているご様子。『流動体について』のシングルCDリリースに合わせて(限定公開と謳われてはいるものの)小沢健二公式のYouTubeチャンネルも開設されていますし、おそらくはそちらでも公開されることでしょう。
 ご存じのかたも多いでしょうが、スペシャは有料の音楽専門チャンネルです。視聴方法はスカパーとかひかりテレビとかいろいろありますが、つまり、この3日間にどうしてもいち早く観たい人はスペシャに契約してね、ってことです。
 
 記念すべき初OAがなされたのが、29日8:00~の「NEW CUTS」というMV番組。
 その放映から1時間も経たないうちに、その動画がTwitter上に投稿されていました*1。もちろん、関係者のかたや公式アカウント等によるものではなく、一般のかたによる投稿です。そして、その投稿した動画が多くのかたに支持されて、瞬く間に拡散されていく様子を目の当たりにしました。
 
 すごく感情的な言い方になってしまいますが……個人的には、すごくショックでした。そんなことしちゃうの? と。
 
 先に書いたように、この3日間は、スペシャだけの「独占公開」です。のちのち正式に公開される予定があるものを、放映されてすぐ、無料で誰でも観られる場所に公開したりそれを共有したりするって。ちょっと乱暴すぎやしませんか。
 これが民放の番組だったり独占公開ではないMVだったりすればいいのか、っていうともちろんそんなことはないです。どっちがマシでどっちが悪質か、って比較をするのもおかしな話だと思いますが――今回の場合って有料放送で先行公開されている映像なのだから、いわば劇場で封切りされたばかりの新作映画をビデオで撮って公開初日の午前中にYouTubeに投稿するようなものだと思うんですよ。それはやりすぎでしょう。
 繰り返しになりますが、個人攻撃みたいなことをするつもりはないです。Twitterでアップロードしたかた個人ではなく、アップされた動画に対して多くの人が違和感なく盛り上がっている様子、それ自体にショックを受けました。
 
 今回の件、個人的にはすごく危機感と恐怖を覚えています。
 偉そうな言い方になってしまいますが、「好きならどんなことでもしていい(したほうがいい)」という意識が広まってきて、それが当たり前になってきている気がするのです。
 
 たとえば、2ヶ月後に開催を控えているフジロック。小沢健二の出演をきっかけに、今年初めてフジロックへ行くという人は、僕も含めてかなり多いと思います。
 フジロックの時にも「好きならどんなことでもしていい」の考えから、何かトラブルが起きてしまいそうで心配です。たとえば、他の出演者のときにあからさまな場所取り(いわゆる地蔵)をしたり。ライブ中に堂々と録画をしたり。
 そういうことがきっかけで、周りから「ろくでもないファンばっかりなんだな」と思われて、「小沢ファンはマナーが悪い」なんて不名誉なイメージがついてほしくはありません。せっかく小沢氏ご本人が「僕のファンはみんなかしこい」なんて言ってくださっているのに。
 ここ最近、僕がフジロック関連で事細かに調べてブログを書いている動機のひとつに、「先輩フジロッカー諸氏にご迷惑をかけないよう、少しでも予習をしておきたい」「新参の小沢ファンがフジロックの場を台無しにしている、なんて絶対に思われたくない」という想いがあります(実際、ちゃんとご迷惑をかけずに楽しんでこられるかどうか、まだわかりませんが……)。
 
 『流動体について』の歌詞に、「深い愛を抱けているか?」というフレーズがあります。この歌詞の解釈はいろいろあるでしょうが、「深い愛」は、身近な人に対する「愛」だけでなく、もっと広く、もっと大きなスケールの「愛」も指しているんじゃないかと思っています。
 
 その行動は、「宇宙の中で良いこと」なのか。「深い愛を抱けている」のか。差し出がましいようですが、Twitterのタイムラインなどを見ていると、「現状を問いかけ」たほうがいいのでは? と思うことが多いです。
 むろん、僕自身の行動も例外ではありません。「宇宙の中で良いこと」ではなかったな、と日々反省してばかりです。
 皆さん、「深い愛を抱けているか?」と問いかけてみませんか。ほの甘いカルピスでも飲みながら。

 
 ……収拾がつかなくなるのでこのあたりで筆を置きますが、今回の件、小沢健二ファン界隈の話だけではなく、もっと大きな規模の問題だと思っています。

 違法アップされてるものを見たら「これを作ったり売ったりを生業にしてる人たちが気の毒だな」とつらくなる人って、もはや少数派なんでしょうか。どうか、そうでないことを祈ります。

(2017年6月1日追記)
 本日、YouTubeにてMVが正式公開されました。めでたい!
www.youtube.com

*1:いちおう、現在は削除されているようです