小沢健二 #ozkn 729 11:30 PM「夏休み、我らが社会の偉大なる時計」(FUJI ROCK FESTIVAL 2017 PYRAMID GARDEN)ライブレポート~深夜の森、真夏の雨。甘美な音楽、素敵な朗読。

 「FUJI ROCK FESTIVAL 2017」にて、小沢健二氏は1日に2回のライブをおこないました。
 WHITE STAGE(キャパシティ1万5000人)での最初のライブ「魔法的」は、まさに「爆裂炎上」の大成功。それからわずか2時間半ほどの間をおいての2セット目「夏休み、我らが社会の偉大なる時計」は、場所をPYRAMID GARDENに移しておこなわれました。
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(7月28日深夜、ライブとライブの合間に撮影)
 PYRAMID GARDENはフジロック会場の喧騒から遠く離れた、静かな森のキャンプ場。絶え間なく雨が降り続けるなか、入場規制がかかるほどの人数*1が集まり、1時間半もの間、音楽とモノローグにじっと耳を傾けていました。
 
 本稿の前編、1回目のライブの模様はこちら。
kagariharuki.hatenablog.com

9)甘美な音楽、素敵な朗読

 1セット目はご本人の予告通り「爆裂炎上」のライブでした。では、2セット目はどのように予告されていたかというと――。

 1セット目の後、シャワーを浴びて着替えてスタッフ全員移動して、真夜中くらいから昨年の美術館ツアー『言葉は都市を変えてゆく』でやったソロ演奏セットの、真夏の夜版をやります。『神秘的』にあるような、変な音の積みのクラッシック・ギターのアルペジオのやつです。今『神秘的』をやるのは楽しみ。そして深夜の森の中で、『天使たちのシーン』をやりたいです。
(※出典:Kenji Ozawa 小沢健二 Official Site ひふみよ)

 たしかに、基本的な編成は昨年の『言葉は都市を変えてゆく』(いわゆる「美術館セット」)と同様でした。ドラムマシンをバックにしたアコースティックギターの弾き語りと、書き下ろしのモノローグ。
kagariharuki.hatenablog.com
 ただ、今回はフジロックならでは(?)の特別なお楽しみもありました。「美術館セット」では小沢氏1人きりでの演奏*2でしたが、今回はソロ演奏の合間にゲストミュージシャンが代わる代わる登場。この夜限りのセッションが楽しめました。
 
 モノローグを織り交ぜる構成は、「ひふみよ」以降の小沢氏のライブではおなじみですね*3
 僕は例によってリアルタイムで実況をしたわけですが……今回、モノローグの実況がうまくいかず、内容の取りこぼしが多いです。雨でタッチスクリーンがうまく反応しなかったりとか、寒さで指が思い通り動かなかったりとか、いつもより(おそらく)早口ぎみにモノローグが読まれてたりとか*4、いろいろ実況に不利な条件がありましたが、言い訳をしても仕方ない。ごめんなさい。
 肝心な部分がたくさん抜け落ちてしまってますので、モノローグ部分に関しては、あくまで「ごく一部を実況したもの」としてお読みいただければ幸いです。
 モノローグの内容自体は今回もすごく面白かったので、「うさぎ!」の作中での再録とか、モノローグ集みたいな形での書籍化とか、何かしらの形で多くの人が楽しめるようになったらいいなと願っています。
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10)深夜の森、真夏の雨

 ここからは時系列順に書いていきます。
 
 WHITE STAGEでのライブを終え、寄り道をせずまっすぐPYRAMID GARDENへ。
 途中、GREEN STAGEのAphex Twinに目移りしそうになったり、レインウェアで全身を固めた状態でも耐えきれないくらいのどしゃ降りに見舞われたりしつつ、徒歩30分ほどの距離*5をひたすら歩いてPYRAMID GARDENに到着。
 実際に行ったことがないとピンと来ないと思いますが、PYRAMID GARDENはフジロック会場の外、通常のキャンプサイトのさらに外れにあります。会場のゲートを出て、苗場プリンスホテルとキャンプサイトの間の道をひたすらてくてくてくてく*6。何かのついでに通りかかるのではなく、明確な目的がないとたどり着かない場所。だから、ベテランのフジロッカーだけどPYRAMID GARDENには一度も行ったことない、という人も少なくないようです。
 僕は前日の深夜にもPYRAMID GARDENで曽我部恵一氏や'74ネングミ*7のライブを観ていたので、2日連続の来場でした。昨日は半袖Tシャツでも大丈夫なくらいの気温だったけど、この日は終日の雨ですっかり冷えきっています。
 
 PYRAMID GARDENのテント*8の間を抜けてステージへ近づいていくと、ちょっとした広場にたどり着きます。
 広場の奥にステージがあり、その手前にはお店や遊具*9、焚き火など。ステージの近くではみんな椅子に座っているので、遠目にステージの上がよく見えます。
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 この2枚の写真は前日に'74ネングミのライブを観る前後に撮ったもの。ライトセーバーのごとき眩い後光が差しているのがPYRAMID GARDENのステージです。
 
 僕が到着した時点ではまだステージのセッティングやサウンドチェックの最中でした。椅子を広げ、夜中のコーヒーを濃いblackにして、炎みたいなこんな時を過ごします。このタイミングで夜食を口にしている人も多かった気がします。


 
 雨足は、小雨と霧雨の間で強くなったり弱くなったり。スタンディングなら全然気にならないけど、座ったままずっと降られ続けたら厳しそうな印象。
 ステージに目を向けると、中央の譜面台のほかに、キーボードとドラム(スネアとシンバルのみ)とスタンドマイクが確認できます。どうやら小沢氏の完全ソロではなさそう。「SKA CREW」とプリントされたTシャツの人がキーボードをチェックしているので、沖祐市氏の登壇は間違いなさそうだな、と推測。
 
 このあと、サウンドチェックでチップチューン的な電子音やCornelius『Drop』的な水音などが鳴ったので「え、なにこの音!? こういう曲やるの!?」と焦りましたが、ライブ本編でそういう音は一切無し。単にPA卓か何かから適当に鳴らした音だったようです。
 
 サウンドチェック後*10、開演までの間はWHITE STAGEのときと同様に「この街の大衆音楽」がBGMとして流れていました。
 『神秘的』のインスト版や『祈ることは』(『Ecology Of Everyday Life 毎日の環境学』収録曲)といった小沢氏自身の曲もかかりましたし、とくに会場内の反応が大きかったのはフィッシュマンズ『ずっと前』でしょう。名盤『空中キャンプ』の1曲目ですね。『ずっと前』は、「魔法的」ツアーの開演前にも流れていました(自分のツイートを確認してみたら、2016年6月11日、Zepp DiverCity公演の開演前でした)。
 WHITE STAGEにしてもPYRAMID GARDENにしても、開演前BGMの曲目をちゃんと記録しておけばよかったなあ、と今になって後悔してます(あのときはそんな余裕全然なかったですが……)。
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1.天使たちのシーン (with NARGO, ドラムマシン)

 開演予定の23時30分をわずかに過ぎたころ、小沢氏とNARGO氏の2名が揃って登場。
 小沢氏の衣装は先ほどと異なり、ピンクのシャツで頬に白のペイント。
 拍手で迎えられるなか、ドラムマシンの奏でるリズムをバックに、小沢氏のアコギとNARGO氏のトランペットの編成で『天使たちのシーン』。
 
 『天使たちのシーン』って、小沢氏のライブでもっとも多く演奏されている曲ではないでしょうか? 少なくとも「ひふみよ」以降は(客演を除けば)皆勤賞ですし、90年代のツアー・コンサートでも高い頻度で演奏されていたようです。そういえば、今年4月に放送された『Love music』でもご本人が「一番好きな曲」に挙げておられました。
 「魔法的」ツアーでは、ご本人いわく「インプロヴィゼーション」(即興演奏)で、公演のたびにアレンジを変えていました。一方、同じく昨年の「美術館セット」では、インプロ無しで原曲寄りなアレンジ。今回は後者寄りだったと思います。
 
 「真夜中に流れるラジオからの」に続くフレーズ、今回は「いちょう並木」でした。「星がいくつでも」のフレーズは2回繰り返しで、「あてもない手紙」の音程も高め。このあたり、「ひふみよ」ツアーのとき*11と同じですね。
 
 苗場の夜、ステージ後方から上空に向かって伸びるサーチライトの光。光柱の中で、霧雨の粒がきらきらと舞っているのが見えます。これほどまでに『天使たちのシーン』的な美しいロケーションがあろうとは。
 
 曲が終わり拍手喝采のなか、NARGO氏が小沢氏とハイタッチ&握手を交わして退場。小沢氏の口から「かっこいいー!」の声が漏れます。
 
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モノローグ『夏休み、我らが社会の偉大なる時計 第一章 休みの日』

このソロのセットは美術館でやってて、モノローグとかあるんですけど。雨が降ってる中でモノローグを聞く元気、ある?

(客席から「あるー!」「聴きたい!」といった声)
(小沢氏、ここでたしか「モノローグをやりますけど、雨が強くなってきたら途中でやめます」的なことを言ってからモノローグを開始した気がします)

モノローグのタイトルは『夏休み、我らが社会の偉大なる時計』。
『第一章 休みの日』。
 
いまや、仕事の時間に終わりはない。
20世紀は仕事が終わったあと、同僚から電話がかかってくることはなかった。
今の社会では、みんながずっとうーっすらと仕事をしている。
 
ハーバードビジネススクールの調査。
今のアメリカ人は休みをとれない。
使われないまま消えてしまった有給休暇がどれだけあったか計算した結果、
年間、46万年分の有給休暇が消えてなくなっている。*12
46万年。
 
アメリカ人は休みをきっちり取るイメージがあるが、いまのアメリカ人は休みをとれてない。
ちょっと偉くなるとホワイトカラーエグゼンプション*13に契約させられる。
 
今のアメリカは、「何でもプロに任せるライフスタイル」という流れ。
犬の散歩すら、プロに任せようとしてる。
洗濯物を折りたたむのもプロの役目。
今は、けっこう中流の人がそういう生活をしている。
 
どうして洗濯物を折りたたむのがプロの役目になるかというと、
「洗濯物を自分でたたむ人は、洗濯屋の仕事を奪っている」というわけ。
 
今のアメリカはそんな感じ。
お金、お金、お金、だから。
 
(1930年代に?)経済学者のケインズは、
「休みはどんどん増えて、21世紀には人は週2日しか働かないだろう」
と予測したそうだ。
(しかし、実際は逆に休みが減っている)
 
そんななか、フロリダ州オーランドのアラン・グレイソン議員は休みを増やそうとしている。
(グレイソン議員は、自ら率先して休暇を楽しんでみせている。ほんとうにそんな人物なのだろうか? といった主旨の話)
グレイソン議員のいる、フロリダ州オーランドといえば?
オーランドといえば。オーランドといえば――
 
「ボクだよ!*14
ボクのクラブハウスへようこそ!
ミースカ・ムースカ!*15
ミッキーマウス!」

(※まさかの小沢健二氏によるミッキーマウス声真似でした。その場の思いつきや短期間の付け焼き刃とは思えないクオリティの高さだったので、普段からご子息を相手に「やあ、りーりー! ミッキーだよ! 一緒に遊ぼう!」とかやっておられるに違いありません)
 
――オーランドといえば、ディズニーランド。
(客席から押し殺したような笑い声が漏れる)
 
わかるだろうか。
人は、休みの日にディズニーランドに行く。
休みが増えるほど、ディズニーランドはうれしい。
(ミッキー声で)「世の中には、いろいろ裏があるんだよ!」
 *16
お金の余裕がなくなって、娯楽型の産業はどうなるだろうか。
ディズニーランドがなくなって、ロックフェスがなくなって。
長い目では困らないけれど、僕らは真夏のスキー場に集まる。
名前は変わっても、暖まるために集まるのだ。

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2.飛行する君と僕のために(with ドラムマシン)

 本日2回目の『飛行する君と僕のために』。11人編成だった1回目に対し、こちらは小沢氏とドラムマシンのみの編成。
 WHITE STAGEでのMCによれば「まだ録音してない」そうですが、1日に2回も別アレンジで演奏するとは、かなりお気に入りなのでしょう。僕も大好きな曲です。気が早いかもしれませんが、9月6日のシングルの次には、何らかの形式でこの曲が聴けるようになったら嬉しいですね、
 
 曲の終わりにMC。

『飛行する君と僕のために』、さっきホワイト(ステージ)でやったらすげえよかったですね! 雨が降ってるなかで。

ホワイトといえば、さっきちゃんとできました?
「フッジーって言ったらロックって言ってよ、フッジー! (ロック!) フッジー! (ロック!) フジフジって言ったらロックロックって言って、フジフジ! (ロックロック!) フジフジ! (ロックロック!)」*17って。

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3.ぼくらが旅に出る理由 (with 北原雅彦, ドラムマシン)

 北原雅彦氏が登場。
 北原氏のトロンボーン、ドラムマシンとの編成で『ぼくらが旅に出る理由』。
 アウトロでは小沢氏が「ダダッ、ダダッ、ダリララダダッダッ……」とスキャット。
 
 北原氏、小沢氏とハイタッチ&握手をして退場。
 

これ、ガチャガチャやってるのはドラムマシンです。ドラムマシンと僕のギターだけでやってます。

 アコースティックギターとドラムマシンを組み合わせるのは、「美術館セット」や今年4月放送の『Love music』でのスタジオライブと同様。今回は小沢氏の手元がよく見えなかったですが、少なくともこれまでは小沢氏個人の携帯電話にてドラムマシンのアプリを使っておられました。テレビ放映時に(画面を凝視して)調べたところ、携帯電話はおそらくiPhone6か6sで、ドラムマシンのアプリは「FunkBox Drum Machine」で間違いなさそうです。
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4.それはちょっと(with ドラムマシン)

 ドラムマシンをバックに、『それはちょっと』。
 出だしの「1, 2, Some shit!」は無く、「欲しいものを……」の歌い出しからスタート。
 
 アウトロに、
「僕をじっと見たって、ダメダメダメダメ……
「決定だねって、イヤイヤイヤイヤ……
「結婚してって、ダメイヤダメイヤダメイヤダメイヤ……
といった感じの、これまでにない衝撃的なリフレインが加わっていました*18。なんだったんでしょうか。
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5.ドアをノックするのは誰だ?(with GAMO)

こないだ、春にテレビの「ライナーノーツ」――『Love music』*19でやって、すごく好評だったやつをやります! スカパラGAMOです!

 GAMO氏登場。
 『Love music』で披露したときと同じアレンジで『ドアをノックするのは誰だ?』。
 ちなみに『Love music』よりも前、2015年3月29日に世田谷文学館の岡崎京子展でおこなったライブの際にも、GAMO氏と一緒に『ドアノック』を演奏したようです*20
 


 『ドアノック』といえば、「右、左、右左右!」のドアノックダンス、ですが――

  • アコースティック編成だと演奏中に歓声や手拍子で騒ぎづらい雰囲気がある(理性)
  • でも、ドアノックダンスをせずにはいられない!(本能)

 ――と、理性と本能のせめぎ合いの結果、マナーモード*21でドアノックダンスをしている人が(僕を含めて)多くいました。
 
 「一緒に歌える?」の呼びかけを受け、みんな、ささやくような歌声でサビを合唱。
 
 曲終わりにGAMO氏退場。
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モノローグ『第二章 夏休みって、春休みだったのか』

モノローグ、『第二章 夏休みって、春休みだったのか』というタイトルです。
 
僕たちは、夏休みという感覚をもっている。
実はあの感覚は「輸入もの」らしい。
あの感覚が輸入される前、日本にはお盆など土地土地の感覚があった。
 
では、夏休み感覚はどのように輸入されたのか?
明治時代、西洋式の学校教育に付随して輸入されたらしい。
 
ご存知のように、欧米の学校は9月にはじまる。
欧米では、卒業式や学年末のせつなさには初夏のイメージがある。
 
だから、明治の最初の学校は9月入学だった。
それが、いろいろあって4月入学になったらしい。
「いろいろ」とは、軍隊が4月入隊だったり、国の予算が3月決算*22だったりしたことに合わせたため。
 
アメリカのように9月入学の場合、そこで大きな*23夏休みがある。
しかし、9月入学の教育システムをもってきた日本では、
途中の夏休みで大きく息を吸ってしまうのだ。
 
夏休みは欧米で学年と学年の間に頭を休める目的でつくられた。
しかし日本には夏休みの宿題があるのだ。
アメリカ人の妻に宿題がないのかきくと、
「夏休みは“休み”*24。神聖な休みなんだよ」という。
 
そうか、もともとの夏休みは、あの春休みがすごーく長いやつなのか。
では、8月31日の日本列島をゆるがすものは、教育システムによるひずみなのだ!
 
子供たちは日本の近代化が生んだひずみ、
8月31日のやらなかった宿題に苦しむのだ。
がんばってください、子供たち。

(観客拍手)

いや、拍手するようなやつじゃない!(笑)

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6.神秘的

 ギターのみ(ドラムマシンなし)で、『神秘的』。
 弦カルテットやボーカルの多重録音が特徴的なシングル収録版とは、大きく印象が異なりました。
 
 じっと聴き入っていたのでなかなか感想を述べるのが難しいですが、やはり場所や時間帯との相性がよかったですね。
 ただ、このまましっとりとした雰囲気が続くのかなと思っていたら、そんなことはなかった。
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7.流星ビバップ(with 沖祐市, 白根佳尚)

じゃ、オルガンにスカパラ沖祐市を呼びます!
そしてドラム、白根佳尚を呼びます!

 拍手に迎えられて沖氏、白根氏が登場。

いきなり。へへへへ(笑)、大丈夫かな。

 沖氏の力強いカウント「ひ! ふ! ひ、ふ、み、よ!」から『流星ビバップ』!
 
 これまでのしっとりとした曲の流れからうってかわって、力強く激しい『流星ビバップ』です。
 沖氏のオルガン、白根氏のドラム、小沢氏のギター、いずれもキレのある激しい演奏。その演奏に応えるように、ステージの照明もリズムに合わせてド派手に点滅。もちろん客席も大盛り上がりでした。
 
 ちなみに『ドアノック』同様、『ビバップ』も岡崎京子展の際に沖氏とセッションしたようです*25
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8.いちょう並木のセレナーデ(with 沖祐市)

 白根氏退場、沖氏続投。
 沖氏の、今度はやさしい声のカウント「ひ、ふ、ひ、ふ、み、よ」で『いちょう並木のセレナーデ』。イントロは沖氏の口笛からスタート。
 
 サビの「I'm ready for the blue」の部分、1番では「わかってきてる」で、2番では「I'm ready for the blue」でした。
 
 アウトロでまた沖氏の口笛。真夏の夜のスキー場に響く口笛、たまらなく良いです。
 曲終わりに沖氏が退場。
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モノローグ『第三章 夏休み、我らが社会の偉大なる時計』

『第三章 夏休み、我らが社会の偉大なる時計』
 
「今年の夏はフジロックに行くぞ」
と冬から思って過ごしてきた人もいるはず。
そういったことを、ある学者がこう言った。
「夏休み、我らが社会の偉大なる時計である」と。
 
元々の夏休みはどうやってできたのだろう。
欧米ではここ200年くらいのもの。
もともとは地域によって違った。
農業地域では春秋に。寒い地域では雪の多い冬に。
 
夏休みの理由に「夏は暑くて勉強がはかどらないから」というが、ここ苗場ではどうだろう。
夏は涼しくて勉強がはかどりそうだ。
逆に、冬は寒すぎて勉強がはかどらないだろう。
 
今の社会は大都市一点集中のシステムをつくりがち。
まとめると、都市の力の成長は、夏休みの仕組みを地方にまで広めた。
 
そう思うと、夏休みも違うもののようにみえてくる。
20世紀、太陽のようにみえていた夏休みは小さくなってきている。
夏休みという偉大な時計は、他の時計のようにいつか消えるのだろう。
 
そもそも、「仕事の休み」という考え方自体が消えるかもしれない。
ミュージシャンがそういう仕事だ。
 
あなたはもう思っているだろう、「休みなんて、もうとうになくなっているよ」と。
子ども遊んで楽しいのは、「当たり前とされるものに驚く」からだ。
りーりーは言う、「自動販売機、日本にくるといっぱいあるんだよ!」。
 
僕はものを知れば知るほど、当たり前とされているものに驚く。
「なんて奇妙なんだろう」と。
子どもも同じように「なんて不思議なんだろう」と驚く。
 
自動販売機とか、
民主主義とか、
人権とか、
セックスとか、
保険とか、
国とか、
言葉とか、
夏休みとか*26
なんて不思議な世の中。

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9.天気読み(with ドラムマシン)

 ギターのみのイントロから、ドラムマシンを入れて『天気読み』。
 
 「雨のよく降るこの星では」のフレーズにハッとして空を見上げたら、雨はほとんど止んでました。
 「美術館セット」同様、「新しいフレーズが君に届いたらいい」を3回連続で繰り返し。
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10.流動体について (with ドラムマシン)

 ドラムマシンとギターで、『流動体について』。
 
 「間違いに気がつくことがなかったのなら」の「のなら」が裏声にならず、低かったです*27
 間奏で『ある光』からのフレーズ引用があったらしいですが、恥ずかしながら気づかず……。
 
 ラスト、「宇宙の中で良いことを決意するときに」のあとにもう1回大サビを繰り返して、客席に「歌える?」と呼びかけ。
 客席の声量*28が物足りなかったのか、それともご本人のテンションの高まりゆえか、さらにもう1回、大サビを繰り返す! 計3回も大サビが繰り返されました。
 
 大きな拍手のなかで立ち上がり、

どうもありがとうございました。雨の中、こんな変なセットをありがとう! そして、ホワイト(ステージ)ほんと楽しかった! ありがとうフジロック!

 の挨拶で終演。
 
 もちろん客席からはアンコールを求む拍手があったはずですが*29、即座に機材の撤収が始まったので、アンコールは無いのだなと悟った(そして雨に振られつづけて身体が冷えきってしまった)人たちから早々に会場を離れていきました。
 
 時刻は深夜1時過ぎ。開演が23時半ごろだったから、約1時間半、WHITE STAGE(約1時間)よりもたっぷり聴いていたことになります。
 2セットあわせれば2時間半。ワンマンライブ1本分のボリュームですね。なんて贅沢な1日だったんでしょうか。
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「はじまり、はじまり」と扉が開く

 最後に、2つのステージを観たうえでの総論的なお話を。
 
 今年2017年の小沢健二は、「アウェーへ果敢に飛びこんでいる」と思います。
 
 活動の皮切りとなった2月20日の「小沢健二AMA 私の並行世界」こそ、勝手知ったる(?)音楽ナタリーで大山卓也氏を相手にした企画でしたが、2月22日*30のシングル『流動体について』発売以降のテレビ・ラジオ出演ラッシュはもう、アウェー戦の連発。
 「Mステ」はタモリさんとの縁があるからまだわかるとしても、まさか朝の情報番組(「スッキリ!」)へ生出演する姿を観るなんて、思いもよらなかったですよ。
 そして、そのアウェーゲームの極めつけが今回のフジロックです。
 
 テレビ・ラジオ出演もフェス出場も普通のミュージシャンなら当たり前にやっているじゃないか、と言われるかもしれない。
 でも、ここ20年近くの間、氏はそうしたアウェーから距離を取り続けていた。
 
 『Eclectic』にしても『うさぎ!』にしても『毎日の環境学』にしても『おばさんたちが案内する未来の世界』にしても『ひふみよ』(サイト)にしても『ひふみよ』(ツアー)にしても『我ら、時』にしても『「我ら、時」とポップアップ・ショップ』にしても『東京の街が奏でる』にしても数回のSkype中継企画にしても『超LIFE』*31にしても『魔法的』にしても『美術館セット』にしても、いずれも、ご本人の選んだ場(=ホーム)へ能動的に向かってきた観客に向けて、ご本人がベストだと思う形に磨かれた状態で発信してきた。
 このほかには、スチャダラパーなどの信頼できる人たち*32のホームへ客演した、数度の例外があるのみです。
 
 なぜ、ここまでアウェーから距離を取り続けていたのか。ご本人にとって理想的な場所で発信することに強い思い入れがあるのか。不本意なかたちで自分の言葉や音楽が発信・拡散されることに抵抗があるのか。いろいろと想像はできますが、ほんとうの理由はわかりません。
 
 ただ、少なくとも2017年の小沢健二が「アウェーへ果敢に飛びこんでいる」ことと、その極めつけといえるフジロックでの2回のステージがいずれも大成功に終わったことは、もう、紛れもない事実です。
 特に後者、フジロックでの成功は、氏自身が誰よりも強く実感しているだろうと思います。だから本稿でも書いたように、PYRAMID GARDENでのMC中に「ホワイトでやったらすげえよかった」「ホワイトほんとに楽しかった」としきりに述べていたのでしょう。
 
 シングル『流動体について』が“シングルではキャリア・ハイ(経歴上最高位)”*33のヒットを記録し、フジロックでのステージも大成功。
 アウェーへ果敢に飛びこんだ結果、(おそらくご本人が想像した以上に)多くの人たちから諸手を挙げて歓迎されている。
 ここで大きな手応えを得たことが、今後の小沢氏の活動にどう影響するのでしょう。
 この手応えを小沢氏自身がどう捉えているか。あえて部分的な引用はしませんが、“「流動体について」の便箋”の3月2日に書かれた内容が、(フジロック以前に書かれたものではありますが)大きなヒントになっているような気もします。
 
 もちろん僕個人の願望をいうなら、ここで弾みをつけて、(ご本人に無理のない範囲で)たくさんの作品*34を発信していただきたい、のですが――。
 どんなかたちであれ、今回のフジロックが、今後に向けて“「はじまり、はじまり」と扉が開く”きっかけになったらいいなと思います。
 
 さしあたって、9月6日にはシングル『フクロウの声が聞こえる』と絵本『アイスクリームが溶けてしまう前に(家族のハロウィーンのための連作)』の発売が控えています。

フクロウの声が聞こえる(完全生産限定盤)

フクロウの声が聞こえる(完全生産限定盤)

 8月6日のWORLD HAPPINESS 2017でのBose氏のMCによれば、「小沢健二はもう(アメリカに?)帰りました」とのことなので*35、次に何かしらの情報発信があるとすれば8月末~9月初頭のあたりでしょうか。
 とにかく今は新しい曲と新しい本が楽しみで楽しみで待ちきれませんが、コアなショッカーは何の情報もなく数年単位で待たされることに慣れています。予告された上で1ヶ月待たされるくらい、どうってことありません。それまで、日常をほどほどに過ごしていきましょう。
 
 それと、最後の最後にもうひとつ。
 今回のフジロック、僕は日本のミュージシャンを中心にいろいろ観てまわりましたが、振りかえってみると、小沢氏の話題を出す出演者の多いこと多いこと。
 僕が観て覚えているだけでも、以下のとおり。

スチャダラパー(1日目/RED MARQUEE)

『ブギーバック』前後のMCで、
Bose「小沢健二は出ません!」「まだ(小沢健二は)越後湯沢にもいません!」

'74ネングミ(1日目/PYRAMID GARDEN)

MCにて、
永積タカシ「明日(の出演者)はオザケン、それにコーネリアス! さっき曽我部さんも言ってたけど、フリッパーズ・ギター、大好きなんだよねー!」

PUNPEE(2日目/WHITE STAGE)

オープニングのフリースタイルで、
「小沢健二さんとかやるらしい!」
のフレーズ

DJみそしるとMCごはんのケロポン定食(3日目/Gypsy Avalon)

「フジって言ったらロックって言って!」「フジフジって言ったらロックロックって言って!」
のコールアンドレスポンスをさっそく引用

レキシ(3日目/WHITE STAGE)

MCにて、
「いとおしいです! ラブリーラブリーです!
昨日(小沢健二)みた? 俺はみれなかった!

 他にも、サンボマスター(2日目/GREEN STAGE)のオフィシャルライブレポートによれば「”月に咲く花のようになるの”では、途中の歌詞を”今夜はブギーバック”の一節に変えて熱唱*36したとのこと。
 
 今年のフジロックに出演したとあるミュージシャンが、「ほらね また だれか きみの噂 している みんな きみを 好きなんだ」と唄っていました。作詞者の坂本慎太郎氏は、「ストレートなラブソング」のテーマに沿って書きつつ、一方でデヴィッド・ボウイやプリンスのこともイメージしていたそうですが――まさに、そういう存在なんだと思います、小沢氏も。
 もちろん小沢氏はご存命ですが、その場にいるとわかるだけでみんなが噂をしたくなる。ミュージシャンもオーディエンスも、みんなが好きで、みんなが話題に出したくなる。
 そんなことを、今回のフジロックの3日間を振り返りながら、ふと思いました。
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*1:おそらく数千人単位

*2:大分では『ブギーバック』のときのみBose氏が飛び入り参加

*3:昨年の「魔法的」ツアーはモノローグ無しの構成でしたが、かわりに「美術館セット」のほうにモノローグがありました

*4:雨ざらしになっている観客を気づかってのことだと思うのですが、あくまで推測です。もしかしたらいつもと変わりないスピードだったかも

*5:混雑なしの状態でまっすぐ早足で歩いて30分程度。実際は混雑していたので軽く1時間はかかりました

*6:キャンプサイト券を持っていない場合は別ルートから迂回する必要あり

*7:永積タカシ氏・TOSHI-LOW氏のユニット

*8:PYRAMID GARDENにテントを張れるのはツアーバス利用者のみ

*9:ハンモックやブランコなどがありました。子どもだったら間違いなくテンションが上がりまくるはず

*10:もしかしたらサウンドチェック中も(聞こえにくいだけで)BGMは流れていたかも

*11:『我ら、時』収録

*12:最初に、1ヶ月あたり(?)の消えて無くなっている有給休暇の数字を挙げた上で、年間に直すと46万年分、という流れだったと思います

*13:労働時間に関係なく、出来高で給料を決める労働契約

*14:この瞬間、客席の空気が張りつめる感覚がありました。「え、いまの声真似、小沢健二の口から発せられたの!?」と全員が呆気にとられた印象

*15:ディズニーのアニメ番組『ミッキーマウス・クラブハウス』における魔法の合い言葉のようです

*16:この部分、ちょっと話が飛んじゃってます

*17:ここのMCで初めて「さっきのコールアンドレスポンス、“ロック”って言ってたのか!」と気づいた人も多かった模様

*18:あまりに衝撃的だったので、正確なフレーズは覚えていません。細部は間違っているかも

*19:2017年4月23日にフジテレビで放送された『Love music』の特集回「小沢健二ライナーノーツ」

*20:※参照:小沢健二ライブ 岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ - TAKUYAONLINE

*21:手拍子で音を立てず、右、左、右左右の動きも控えめ

*22:※ここ記憶があいまいです

*23:「おおーきな」と音を伸ばす

*24:このフレーズ、英語でも(おそらくエリザベスさんの口調を真似て)復唱されていました

*25:※参照:小沢健二ライブ 岡崎京子展 戦場のガールズ・ライフ - TAKUYAONLINE

*26:あと2,3個挙げられていたと思いますが、メモが間に合わず……

*27:ただ、「夜の芝生の上に舞い降りるときに」の「ときに」はおなじみの高さでした

*28:アコースティックセットなのでやはり周りを気づかって控えめな声量の人が多かった印象

*29:このあたり、身体が冷えきっていたのでわりと記憶があいまいです

*30:実質的な発売日となる、いわゆる「店着日」は2月21日

*31:これだけは小沢氏の作品というよりタケイグッドマン監督の作品と捉えるべきでしょうが

*32:具体的には、スチャダラパー、東京スカパラダイスオーケストラ、真城めぐみさん、タモリさん、岡崎京子さん。それと活字媒体だと「VOGUE」、柴原元幸先生の「MONKEY BUSINESS」「MONKEY」と、マガジンハウスの「GINZA」「POPEYE」(と「GINZA」付録の「Olive」)、二階堂ふみの写真集、渋谷PARCOなど

*33:※出典:“「流動体について」の便箋” http://hihumiyo.net/kenji-ozawa/%E5%B0%8F%E6%B2%A2%E5%81%A5%E4%BA%8C-%E8%AA%AD%E3%81%BF%E7%89%A9-%E6%96%87%E7%AB%A0/letterhead.htmlの3月2日

*34:レコーディング作品もライブも活字作品もメディア出演もそれ以外も

*35:それにしても、未だに公式サイトが更新されていないこのタイミングで、小沢氏と関係のないフェスでたまたま耳にしたMCで近況を知る――というのもなんだかすごい話です

*36:※出典:http://fujirockexpress.net/17/p_1536