2017年3月5日放送、J-WAVE「TOKIO HOT 100」の
小沢健二ゲスト出演部分の書き起こしです。
小沢健二は今回『流動体について』のリリースにあたって
他にもいろいろなメディアで出演していますが、
自身でデザインをやっていることの理由や、
アルバムの話題を振られたときの慌てぶりなど、
短いながらも聴きどころの多い内容でした。
書き起こしはあくまで書き起こしなので、
元の会話の細かいニュアンスまでは再現できていません。
それをご承知のうえでなおテキストで読みたいというかたのために、
個人的に作成した書き起こしを以下に公開いたします。
(なお個人的には、
ラジオ番組の書き起こしをネットで公開するのは決して「良いこと」ではない
と思っています。
今回、個人的なメモのつもりで書き起こしたものを試しに公開してみますが、
これが原因で関係各所へご迷惑をかけてしまうのは本意ではないので、
何かあればすぐ削除するつもりです)
(これまでの/今後の出演情報などはこちらの記事に書いています)
kagariharuki.hatenablog.com
目次
1. J-WAVEに来れてとても懐かしく、甘酸っぱく
♪BGM『今夜はブギー・バック (nice vocal)』
クリス・ペプラー(以下、クリス):
SAISON CARD TOKIO HOT 100、
それではこの時間のゲストをお迎えしておりますので
自己紹介をお願いいたします。
小沢健二(以下、小沢):
はい、小沢健二ですこんにちは。
クリス:
はい。小沢さん、お久しぶり!
小沢:
あ、はい。ありがとうございます。
J-WAVEに来れてとても懐かしく(笑)、
なんか、甘酸っぱく……。
クリス:
甘酸っぱく!
小沢:
はい。
前、97年頃、えーっと……
J-WAVEでレギュラーの番組*1をやってまして。
1時間番組をやっていて、
それでもう、ほんとに当時のスタッフに感謝したいなとすごく思って。
僕はその頃ほんとに、なんか、
今思ったらほんとにメチャクチャな(笑)
27、8歳だったので。
えーっと……この場を借りて当時のスタッフに、
本当にありがとうございました。
クリス:
そうですか。
ねえ、あのー、スタッフ。
潤さん。
小沢:
はい、はい。
クリス:
ね、鈴木潤*2。
鈴木潤はいい女ですよ、あいつは。
小沢:
最高です、最高です。
クリス:
いま何してるんだろうなあ。
2. 僕の目から見るともう「茶屋」
クリス:
いま小沢さんはニューヨークにお住まいなんですよね?
小沢:
はい。一応、ずっとなんか、えっと……
アメリカ以外のそのー、
いわゆる開発途上国といわれる国にいた頃が
トータルで3年ぐらいあるんですけれど。
クリス:
ほうほう。
小沢:
でも、税金はニューヨークに(笑)。
クリス:
USに納めていると。
小沢:
はい。納め続けてもう、20年とか(笑)。
でも、いま日本にくるとほんっとに楽しくて。
クリス:
うん、うん。
小沢:
もう、いろんな日本の――
やっぱり離れているせいもあって、
さほど悪いところが鼻につかないみたいな感じで。
クリス:
はい、はい。
小沢:
それで、だから
「のんきなことを言ってるな」
とは言われるのはわかりながら、
でも、すごいこの「ガラパゴス」と言われる環境の中で、
すごく良いところがいっぱい残っているのはなんか、
いつも、言いたいなと思います。
クリス:
うーん、そうですね。
ほんとに、前までは「右にならえ」じゃないけど、
欧米に追随していたようなところが、
(今は)もう、ほんと「我が道を行く」ような。
そういうカルチャーに、日本は(なっている)。
小沢:
「我が道」が。
なんかコーヒー屋さんに入っても、
日本の大手のコーヒー屋さん*3に入っても、
僕の目から見るともう、
やっぱり「茶屋」っていうか。
クリス:
ほうほうほう。
小沢:
あの、「お茶屋さん」の感じ。
竹のトレイにきれいにものを並べて、
一生懸命ていねいに並べてくる。
こう、なんか、
ジャジャジャってコーヒー作って
ポンて投げる、
とかじゃないから。
クリス:
わかるわかる。
小沢:
これは「茶屋」だなと思って。
だからたぶん中身は、
ずっとこう、たぶん昔から、
戦国時代ぐらいから(笑)
こう、おんなじものが続いていて。
クリス:
わかるわかるわかる。
僕も、実は2週間ほど前、
「トランプランド」に行ってまして。
小沢:
はははは(笑)。
クリス:
あのね、すごくね、あのー、
ちょっと全体的に輪郭がね、
なんだろ、
「あれ? ちょっと大味……」
っていうんじゃないけど、
フォーカシング(焦点)にメリハリがないというか。
日本の方がなんかすべて、
すごくこう、メリハリがあるんですよ。
USってなんかこう、
「ちょっとエッジが甘くね?」
っていう感じが。
いろんな意味でね。
小沢:
いや、ほんとにそうですね。
こないだそれをあの、
ちょうど朝日新聞に書いたところで(笑)*4。
あの、えっと、
僕はそのとき「ハイレゾ」って書いて。
日本の文化はすごくハイレゾであるっていう。
クリス:
うん。わかるわかる。
小沢:
イチゴなんか食べても、
ほんとにハイレゾで。
クリス:
そうそう。
小沢:
国外のものって、
いきなりローレゾになってて(笑)。
イチゴもローレゾでもう、
滑らかになんにも口の中で溶けなくて(笑)。
ゴリ、ゴリ、みたいな(笑)。
クリス:
そう、だからね、わかるような気がして。
最近ガラパゴス化してて、
若い子たちが
「ちょっと海外行っても、日本のほうが楽だ」
って(言っていても)、
「何言ってんだ、もうちょっと見聞広げろよ!」
って(思っていたのに)、
自分が「トランプランド」行ったら……
小沢:
あははははは(笑)。
クリス:
「あれ? ちょっと、もうちょっとこう、
しっかりメリハリつけようよ」
みたいな感じがね。
それがすべて、物もそうだけど、
なんだろう、人間性の関係から、
すべてそんな感じがしちゃいましたよ僕は。
小沢:
うーん(笑)。
クリス:
まあ別にあの、
変に「トランプランド」の悪いことを言っているわけでは
全然ないんですけども。
小沢:
そんなつもりは全然ないです、はい。
3. 「昔、『解禁日』ってあったんだよ」
♪BGM『ぼくらが旅に出る理由』
クリス:
で、今回小沢さん、
ゲストに来てくれたのは、
先日2月22日、実に19年ぶりに
CDシングル『流動体について』
をリリースされまして。
小沢:
はい。
クリス:
しかも、これは……「事前告知なし」!
これはなぜ、そういう風にやろうと思われたんですか?
小沢:
えっと、全然特に狙ってることではなくて。
そのー、こう、じゃあ、んー、
僕がやれるのはなんか、
やはりすごく……人間らしく(笑)……
なんて言ったらいいのかなあ。
んー。そうですねえ、
「人間らしくやれればいいなあ」
と思っていると、
「じゃあ、(新譜情報の)解禁日は?」
みたいな話が(レコード会社との間で)あるんですけど。
「うーん、その解禁日っていうのはなんであるんですか?」
みたいな話になってきて(笑)。
クリス:
うん、うん。
小沢:
「別に(解禁日が)無くてもいいんですけど」
とかっていう答えが(レコード会社の)ユニヴァーサルの方から返ってくると、
「じゃあ、無くていいんじゃないですか?」
みたいなことで決まっていったので。
特になんか大きく
「ゲリラでやってやろう」
みたいなのは、まったくなくて。
えーっと、やっぱり流通が変わっていって、
社会が、それこそ「流動体」というか(笑)
「生き物」として動いていて、
その中で、やはり形式っていうのは、
いつも同じではない、ので。
クリス:
もちろんね、うん。
小沢:
だから、たまたまじゃあたとえば
「Hi-STANDARDが(新譜のゲリラ発売を)やった」とか
「あの方がやった」とかあるけど、
それは誰かの企画としてやっていることではなくて、
やっぱり社会は変わっていくし、
社会の制度って生き物だし。
どんどん動いていく中で、たまたまこういう風に
「もう、じゃあ、無くてもいいんじゃない?」
って言う人がだんだん流れて増えていって。
で、後で思うと
「昔、『解禁日』ってあったんだよ」
っていうぐらいの(笑)。
クリス:
そうそうそうそう、わかります。
僕も、せっかく21世紀なんだから、
「とりあえず、20世紀にずっとこれやってたから」
と継承する必要ないと思うんで。
小沢:
そうなんですよね。
クリス:
で、やっぱり新世紀っていう、
うまい具合に本当にこの、
21世紀になってほぼ20年経とうとしているんだけど、
やっぱりパラダイム、すっげえシフトしてるんで(笑)。
変になんかこう、20世紀の――
「なんでこれやってんの?」
「いや、昔からやってる(ことだから)……」
――それはもう、全部取っ払ってもいいのかなって気がするんですよ。
小沢:
そうですね、
それはもう全然なく、勇気をもって、
どんどん変わっていっていいし。
クリス:
うん。変えないと、と思うんですよね。
小沢:
だし、変わんないことっていうのは無いわけで。
テクノロジーは変わってるし、
人の気持ちも変わってるし。
うん、そこに勇気をもって
飛びこんでいくのがいいのではと(笑)。
クリス:
そうですよね。
4. パンク・ロック的なデザイン
クリス:
ちなみにあのー、
いま、アメリカってどうなんだろ?
さっきの「音楽の流通も変わっている」っていう部分で、
音源的に言うと、いま、CDってのは売れてるんですか?
それともみんなダウンロードに、なのかな。
どういう状況なんですか、向こう(アメリカ)は?
小沢:
えーっと……
あの、日本であまり浸透していないと言われる、
えー、あの、Spotifyだの何だの、
やっぱりそういうもの*5が強いですね。
クリス:
はいはい、Spotify。
うーん、なるほど。
小沢:
えーっと、それで、
ただ僕がじゃあ、音楽消費者として感じるのは、
えーっと……あれはやっぱり
「字引」みたいなものでもあって。
やっぱり覚えないですよね、
Spotifyでどんどん聴いちゃった曲っていうのは。
クリス:
うん、うん、うん。
小沢:
でもやっぱり、パッと
「この曲ってなんだっけ?」
みたいなことを満足させるっていう点では、
すごく良いけれど、うーん……。
そうですね、でも、ただ、
今回のたとえば僕のシングルは自分で、
「こういう風なタイポグラフィーがあって、こうなると良い」
って自分で手を動かしてデザインを、僕はするのです。
Illustratorという(ソフトを使って)。
クリス:
これ(CDのデザイン)、
自分で全部手作りでやられて。
小沢:
それで、あのー、もう、
Illustratorを使う技術はほんとに、
パンク・ロックのギタリストぐらいしかないんですけれど(笑)。
それでもやっぱり、
「歌詞を書いている本人がデザインするから、
こういうタイポグラフィーになるんだなあ」
っていう部分はあって。
クリス:
はい、はい。
小沢:
それでだから、パンク・ロック的な(笑)デザインをしながら、
えーっと、でも、これがなんか、伝えている、
このデザインが伝えている部分って、
すごく大きいと思うので。
クリス:
でかいですね、うん。
小沢:
なので、これが(Spotifyのような)ストリーミングで聴いて、
おんなじことが伝わるかっていうと、
そうでもなくって。
クリス:
なるほどねえ。
小沢:
と思っていますね。
クリス:
そうですか。
じゃあさっそく、話題の、
小沢健二さんのニューシングルを聴いてみたいと思うので、
曲紹介をお願いいたします。
小沢:
あ、えーっと、
『流動体について』という曲です。
♪『流動体について』フルコーラス
- アーティスト: 小沢健二
- 出版社/メーカー: Universal Music =music=
- 発売日: 2017/02/22
- メディア: CD
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5. あわ、あわ、あわわわわ……。
クリス:
SAISON CARD TOKIO HOT 100。
お送りしたのは、この時間のゲスト、
小沢健二さんの新曲で『流動体について』。
♪BGM『流動体について』
クリス:
あのー、うん。
わたくしからすると、
すごく「オザケン節健在」という――
小沢:
ありがとうございます(笑)。
クリス:
――サウンドなんですけれども。
ご自身はどうですか、その、
「オザケン節健在」とか言われるのは?
小沢:
えーっと……、とても嬉しいです。
でも、そのー、基本的に、んー……
日本で録音したくて。
それも、昔その、90年代、
94年、5年、6年、7年ぐらいで使っていた
機材そのものを使って録音したくて。
クリス:
うん、うん。
小沢:
やっぱり手で慣れている機材なので。
そのー、「選ぶ必要が無い」というか。
「これならこの音」っていうのがわかっている中で、
やるのがすごく楽しかったですし。
だから、ほんとに言(ゆ)ったら
(90年代と)おんなじ部分がすごくあって。
それでもやっぱり……
いろんなことが変わっているから。
違う部分も自然に入ってくるけれど。
「節」っていうものがあったら、それは嬉しいです。
クリス:
なるほど。
小沢:
はい。
クリス:
じゃあ、無理なく、いわゆる
「自分の中でアジェンダ(課題、約束ごと)をもって作る」
というよりかは、
「自然に作られた」
っていう感じなのかなあ。
小沢:
そうですね。
自然に作ると、こうなっちゃうっていう(笑)。
で、それが気に入っていただけたらもう、ほんとに嬉しくて。
クリス:
なるほどね。
あのー、ちなみに、
あのー、アルバム……の構想っていうのは、
現時点で……?
小沢:
あわ、あわ、あわわわわ……ふふっ(笑)。
クリス:
まだ、そこまでは?
小沢:
いや、あの……えっ……ははっ(笑)。
クリス:
言えない?
小沢:
……(囁き声で)楽しみに。
クリス:
お楽しみに、ということですね。
6. あの空気を入れてもらったらいいかな
クリス:
あの、日本の音楽っていうのは?
ニューヨークにいま住んでいらっしゃいますけれども。
日本の音楽とか、やっぱりフォローされているんですか?
小沢:
やっぱり友だちが、
ニューヨークに遊びに来たり、
東京に僕が来たときに持ってきてくれてるやつは
みんなすべて聴くので。
なので、たぶんそのー、
普通の日本のミュージックシーンは、
たぶん追えている、と思います。
すごく楽しいし。
クリス:
最近なんかこう、
小沢さんの耳に引っかかった
サウンドっていうのはあります?
小沢:
えーっと、ですね……
こないだいろいろ言ったんで*6、
あとは何かな……。
DJみそしる――(笑)。
クリス:
ああ、はい。
DJみそしるとMCごはん*7。
小沢:
はい、とても好きですね。
でもなんかもう、挙げだしたらきりないです(笑)。
クリス:
なるほど、そうですか。
あのー、ちなみに、新曲「流動体について」、
クレジットに
ハナレグミ(永積タカシ)と
一十三十一さんが入っているんです。
このあたりは、なんか若手が入っているという……。
小沢:
(永積)タカシくんは昔から、
すごく親しくしていただいていて。
僕がメキシコに部屋を借りているときに、
泊まりに来てくださったり。
クリス:
ああ、そうなんだ! へえー。
小沢:
あのー、すっごく昔から話を一緒にして。
クリス:
ええっ、どのぐらいの付き合いなんですか?
小沢:
えーっと、すごい長いと思います(笑)。
クリス:
SUPER BUTTER DOG時代から?
小沢:
えっと、その後かなあ?*8
でも、2人で、8人ぐらいしかいないバーで、
2人で弾き語り合戦やったこともあります(笑)。
クリス:
へえー……。
どこですか、メキシコでですか?
小沢:
いやいやいや、日本で!(笑)
クリス:
日本で!
へえー、すごいは、それは。
小沢:
なんか、それで一十三十一さんは、うーんと……。
その、「魔法的」っていう昨年のツアーに、
たぶん一番来てくれたミュージシャンだと思います。
で、いつも(その日のライブが)終わると、
すっごく良い顔で、裏で迎えてくれて。
「良かったよ!」とかっていう、
そのときの顔がすごい忘れられなくて。
それで……
「ああ、じゃあ、あの空気を入れてもらったらいいかな」
と思って。
とにかく、「流動体について」は、
去年のツアーでほんとに、(皆さんから)もらったものです。
クリス:
なるほどー。そうか。
でも今回、あの、ちゃんとクレジットにもね、参加されてますし。
小沢:
はい。
7. 「みんな、おじぎはどのぐらいしますか?」
♪コーナーBGM
クリス:
じゃあここであの、小沢さん、
もちろん初めてだと思うんですけど、
「ピンポンボックス」っていうのがありまして。
これは、小沢さんにランダムな質問をぶつけようということで。
小沢:
はい。
クリス:
ピンポン球(の番号)、読んでください。
小沢:
あ、2番です。
クリス:
2番!
「タイムマシーン」。
「タイムマシーンがあったら、
行ってみたい場所、時代、
会ってみたい人は誰ですか?」。
小沢:
おおっ……。
タイムマシーンがあったら……
今は、興味は日本ですね。
クリス:
おおー。
小沢:
日本で……。
クリス:
何時代?
小沢:
えーっと……戦国時代、
あんまり危なくないとき、
って感じですね。
クリス:
戦国時代!
小沢:
あんまりすごく危なくない、
落ちついたぐらいのとき(笑)。
クリス:
ああー。戦国時代も一件落着したような。
天下はもうこいつだぞ、っていう。
小沢:
天下はこいつだぞ、ぐらいの、
まとまったところで。
クリス:
なるほど。
小沢:
そうですね。
そこと、今の日本がどういう風につながっているか、
っていうのを。
その当時の、えー……
偉い人に訊いてみたいと思います。
クリス:
なるほどー。
これからどうやって、
一国をこう、治めていくのかと。
小沢:
そうですね。それと、じゃあ
「いま、こういう日本があるよ」
って話をして、
「うーん、それは儂の日本とここが似てる」
みたいなことを教えていただきたいなあ、と思って。
クリス:
ほうほうほう、
なるほどね。比較。
小沢:
そうなんですよ。
たとえば、みんな……なんだろうなあ……なんかこう、
「みんな、おじぎはどのぐらいしますか?」
っていう(笑)。
その、日本の今の生活と、
昔の生活がどのくらいつながっているのかな? と。
クリス:
あ、そっか、おじぎの角度とかね。
小沢:
おじぎの角度とか(笑)。
クリス:
昔だったら45度までいっていたのかどうか、とか。
小沢:
えはは(笑)。
クリス:
そういうことですよね。
小沢:
あのー、
見送るときに、どのぐらい、ちゃんと見送るのか、
っていうか。
クリス:
ああー。
小沢:
アメリカ人とかって、
「見送り」が無いじゃないですか*9。
クリス:
無いですねえ。
小沢:
その、なんか(笑)。
クリス:
なるほど。
いわゆるテクノロジーうんぬんっていうよりも、
もうちょっとその、マナーだったりとか、礼儀。
人とのつながりが、どこまで変わったのか、と。
小沢:
そうですね。
単純に暮らしがどのぐらい同じなのか、
どのぐらい違うのか、
と訊きたいです。
クリス:
ですよね。わかりました、じゃあ……。
8. あの要素は人生に要らない
(ピンポン球を混ぜる音)
小沢:
あ、まだ(質問)いくんですね。
クリス:
まだいくんです。
小沢:
はい。じゃあ、3番です。
クリス:
3番!
「自分ルール」。
「必ず守る、
自分だけのルール、
鉄則を教えてください」。
小沢:
えー……っと、なんでしょうね……
えーっと……
「空港に行くときは、なるべく早く行く」。
クリス:
ほー。
小沢:
「不必要なくらい、早く行く」。
クリス:
あ、そうなんですか。
小沢:
はい。
クリス:
それはなぜですか?
小沢:
一回、えーっと……
ワールドカップ、サッカーのワールドカップの
セミファイナル(準決勝)かなんかのチケットを持っていたのに、
飛行機に乗り遅れて観れなかったことがありまして。
クリス:
げっ!
小沢:
あの、JFK空港のまわりがものすごく渋滞していて、
それを逃したことがあって。
クリス:
ワールドカップ、行けなかった!
小沢:
(笑)。
クリス:
それはスーパー痛いですねえ。
小沢:
もう、ほんっとにそのときから心を入れ替えて。
クリス:
うん。
小沢:
で、早く着いて、
問題はまったく無いわけじゃないですか。
クリス:
うん、うん。
小沢:
で、空港で待つ時間も、空港は楽しいし(笑)。
クリス:
はい、はい。
小沢:
だからもう、
不必要なぐらい、その後は早く。
クリス:
どのくらい早く行きますか?
小沢:
もう、3時間半~4時間。
クリス:
でも3時間半だとたとえば、
パスポートとかなんか忘れても、
なんとか、家に戻って……。
小沢:
ああ、それもありますし、
なんかもう、あの、
「飛行機に間に合うか間に合わないかドキドキする」
あの要素は人生に要らない
ということを思いました*10。
クリス:
わかるわかる。
ありがとうございます。
9. かっこいいオヤジぶりを見て、どのぐらい、励まされたか
♪BGM『ラブリー』
クリス:
さあ、19年ぶりニューシングル『流動体について』。
ただいま絶賛発売中ですけど。
そしてこの間、Mステで。
もう、タモリさんとは、
小沢さんというのは、ほんとにもう……
小沢:
はい、はい。
クリス:
仲がね、もうすごくよろしい間柄だからこそ、
ポロッと言ってしまいました!
小沢:
はい。
クリス:
「この夏、フジロックフェスティバルに出る」(笑)!
小沢:
ははははは(笑)。
クリス:
……とおっしゃって、
みんな(の反応が)「え! そんなこと言っていいんですか!?」。
小沢:
ははっ(笑)。
クリス:
生放送でそれが。
あのー、いいんですか、そんなこと言って?
小沢:
いやー……スタッフのほうがすごい騒ぎだったらしいんですけど。
はい。あれはでも……言っていいんです。
それで……これもさっきの……えっと、
人間関係っていうのかなあ。
ほんとに人間らしくやっているっていうのと同じように、
僕は、フジロックに出るのはもう
――ここで本人、言われて嬉しいかどうかわかんないですけど――
ほんとに日高(正博)さん*11にお会いして、
「あっ! こんな風でいいんだな!」
すごく嬉しかった。
日高さんのチームもそうですし。
この前に、(「流動体について」の)録音で日本にいたときに、
日高さんのチームと、
そして、「エヴァンゲリオン」と「シン・ゴジラ」を作った
庵野秀明さんのチーム*12(にお会いして)。
クリス:
はい。
小沢:
そこの、あのー、
ほんっとにかっこいいオヤジぶりを見て、
どのぐらい、励まされたかって、思います。
クリス:
へえー、
日高さんはほんとに、あのー……
あの人は「人生悔い無し」で生きている男なので。
小沢:
うん。
クリス:
でも、楽しみですね、
フジ(ロック)はもう、本当に、
たぶん、一番世の中で美人(?)なフェスだと思います。
小沢:
ああ、そうなんですね。
クリス:
たぶん、すごく楽しめると思います。
小沢:
もう、すごく楽しいと思います。
それで、なんか、
「フジ(ロック)出る」とかっていうと、
みんなどこかに
「ブギーバックはやるのか?」
みたいなことを思っているのが明らかに顔にあるので、
それでミュージックステーションでも言ったんですけど、
やるに決まってますよそんなの!(笑)
クリス:
やるに決まってると!(笑)
ということで、それじゃあ、
これから大いに期待大、ということで。
小沢:
はい。
クリス:
楽しみにしたいと思います。
10. 「多科目専攻」みたいな感じに
クリス:
小沢さん、最新情報はオフィシャルサイトをチェックすれば。
小沢:
はい。
クリス:
諸々、いろいろな情報が出てきます。
あとは、現在、ご自身の「デザイン監修」の
特設ページもできているということで。
小沢:
ははは(笑)。
クリス:
これ、全部自分でもう、
ホームページは作られちゃっている
っていう感じなんですか?
小沢:
なんか、えーっと、さっき
「パンク・ロックのギタリスト程度のデザイン能力」
って言いましたけど、
それはなんかもう、開き直ってて。
よくあの、デザイナーのかたがバンドとか音楽をやってて、
僕はわりと好きですごく聴くんですね。
それですごく参考になることがあって。
だったら逆にじゃあ、
バンドというか、音楽やっている人間がデザインやって、
それを見せるのも面白いかなと思って。
クリス:
ですよね。うん、うん。
小沢:
開き直って。
それで、そうですね、
デザイン系のソフトは、
Pro Tools*13って音楽に使うの(ソフト)に比べたら、
ずーーーっと簡単なので(笑)。
他のミュージシャンにもおすすめです、本当に(笑)。
クリス:
やっぱり、みんな今までは
「餅は餅屋」でできなかったから、
その術がなかったからやらなかっただけであって。
小沢:
ああー、ねえ。
クリス:
その術さえ、ツールさえあれば、
どんどんできるっていう。
小沢:
そうなんですよ。
で、もちろんこれは、それこそ
「これはデザインのプロだからできること」
っていうのは逆にすごくはっきりしてくるし。
なんかそういう、
異種格闘技というか、
マルタイディスプリナリー*14というか。
クリス:
はい、はい。
小沢:
「多科目専攻」みたいな(笑)感じになると、
文化がまた豊かになるかなと思って。
クリス:
そうですよねえ。
あのー、今までだとどうしてもやっぱり人生の中で、
ひとつのその、道――
たとえば「絵を描く」っていう
それに没頭しないといけなかったのが、
今だと、実は、3本ぐらいの道を
歩むことができる時代、になってますよね。
小沢:
そうなんですよ。
それが良いのか悪いのかわかんないですけど、
ほんとにその、
都市とか世の中っていう生命体が動いているなかで、
そういう選択肢があって
「ああ、やってもいいな」
って思ったら、ぜひぜひ、と思います。
クリス:
ねえ。
11. 家族みんな日本にいて、すごく意味がある時間を過ごせる
クリス:
今後、どういうペースで活動は、されていきたいですか?
今、アメリカにいらっしゃいますけど、
また、日本に戻ってくるっていう可能性もあるんですか?
小沢:
えーっと……なんか、それこそその、
妻と子どもがもう、
ほんとに今、日本が大好きで。
クリス:
はい。
小沢:
とくに子どもが日本語がペラペラなので。
クリス:
ああ、そうなんですか!
それは素晴らしい。
小沢:
そのー、だから日本文化っていうのを、
そのたとえば、子ども用の「ドラえもん」だのなんだの観て、
すごく知ってて、すべてを知ってるんだけど、
現実には見たことがないわけで。
そうすると、(日本に)来るともう、
コンビニとかで固まってるんですよ!
クリス:
ほうほう。
小沢:
「おでん売ってる!」とかなってて(笑)。
「森永キャラメル!」とか言ってて(笑)。
すごくやっぱり、楽しいらしくて。
僕もでも、彼の目から、そのー、
日本の、それこそ良いところ、
エキサイティングなところをすごく教えてもらうし。
だから、家族――みんな日本にいて、
すごく意味がある時間を過ごせるので、
増やしていきたいと思います。
クリス:
ええ、そうですか。
はい、ありがとうございました!
じゃあ、充実した日本での滞在、
過ごしていただきたいと思います。
小沢:
ありがとうございます。
クリス:
また夏には、(フジロックで)お目にかかると思います。
小沢:
はい。
クリス:
では今日はありがとうございました!
小沢:
ありがとうございました。
クリス:
小沢健二さんにお越しいただきました-!
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*1:1997年~98年放送の番組「A Radio Show Named “SATURDAY”」
*2:調べてみたところ、J-WAVEのスタッフで鈴木潤さんという方がいらしたようなので、おそらくその方だろうと推測
*3:具体的にはドトールとか? コンサート「東京の街が奏でる」発表時の小沢・うさぎ対談http://hihumiyo.net/tokyo.htmlでも、うさぎが「あー、ドトールもすてきですね。あれも日本ならではです。」と言っています
*4:直リンクはしませんが、http://hihumiyo.net/に紙面のPDFがありますので未読のかたはぜひ
*5:Spotify、Apple Music、Google Play Music、といった定額音楽配信サービス。中でもSpotifyは、無料で利用できる(かわりにCMが流れる)プランがあったり、ユーザーの音楽の好みに応じたレコメンド(オススメ)機能が優秀とされていたりする
*6:音楽ナタリーの企画「小沢健二AMA 私の並行世界」http://natalie.mu/music/pp/kenjiozawa/page/4では、neco眠る、cero、神聖かまってちゃん、ぼくのりりっくのぼうよみ、の名を挙げていた
*7:クリス・ペプラーは「DJみそしる&MCごはん」と発音
*8:SUPER BUTTER DOGは2008年に解散
*9:2012年の「東京の街が奏でる」で、「小走り」に関する朗読の中で「日本人は別れ際におじぎしながら後ずさりしてゆく」みたいな話がありましたね
*10:2016年のライブツアー「魔法的」の新曲「飛行する君と僕のために」の歌詞に「間に合うかな? 大丈夫かな?」ってフレーズがありましたね
*11:フジロックを主催する株式会社スマッシュの代表
*12:スタジオカラー(庵野秀明率いるアニメ制作会社)が制作したアニメ作品「龍の歯医者」(2017年2月にNHKで放映)の主題歌が、小沢健二「ぼくらが旅に出る理由」のカバーでした
*13:プロの音楽制作環境で必ずと言っていいほど使われているソフトウェア
*14:multidisciplinary=学際。多くの学問領域にまたがること