NHK-FM「きらクラ!」小沢健二ゲスト出演部分書き起こし #ozkn

2017年2月26日放送、NHK-FM「きらクラ!」の
小沢健二ゲスト出演部分(&その前後)の書き起こしです。

約2時間の放送の大半にあたる部分
(音楽の部分を除いてもおそらく1時間半くらい)
を書き起こしたので、
約5万文字の大ボリュームになっております。

小沢ファンを公言しているふかわりょうさんと、
「東京の街が奏でる」のライブや「神秘的」のレコーディングで
共演している遠藤真理さんの番組ということで、
和気あいあいとした空気のなかで、
クラシックに関連した話題がたくさん語られています。
小澤征爾さんや武満徹さんとのエピソードや、
大変興味深いオススメ楽曲の紹介など、
聴きどころの多い放送でした。

なお、書き起こしはあくまで書き起こしなので、
元の会話の細かいニュアンスまでは再現できておりません。
その点はご承知おきください。

(なお個人的には、
ラジオ番組の書き起こしをネットで公開するのは決して「良いこと」ではない
と思っています。
今回、個人的なメモのつもりで書き起こしたものを試しに公開してみますが、
これが原因で関係各所へご迷惑をかけてしまうのは本意ではないので、
何かあればすぐ削除するつもりです)

(これまでの/今後の出演情報などはこちらの記事に書いています)
kagariharuki.hatenablog.com

(J-WAVE「TOKIO HOT 100」出演時の模様はこちら)
kagariharuki.hatenablog.com

1. オープニング~こんなにも涙を我慢しないといけない日が来るとは

ふかわ:
こんにちは、ふかわりょうです。

遠藤:
遠藤真理です。

ふかわ:
「きらクラ!」、
今週も始まりました。

遠藤:
はい。

ふかわ:
真理さん。
一言いいですか?

遠藤:
はい。

ふかわ:
ありがとう……
本っ当にありがとう、真理さん。

遠藤:
ふふっ、私(のおかげ)じゃないです(笑)。

ふかわ:
いやいや、真理さんに出会えなかったら、
真理さんがいなかったら、
今日という日は訪れませんでした。
本当にありがとうございます。

遠藤:
そんなことない、
この番組のおかげです(笑)。

ふかわ:
いやー、もちろんこの番組もね、
土壌としてあるかもしれませんが。
この番組で何度、
あなたにお礼を言ったかわかりませんが。
本当に、心から感謝をしております。ええ。

遠藤:
こちらこそ(笑)。

ふかわ:
もしかしたら、これをお聴きの方の中には、
ニュース記事などで
ご覧になった方もいるかもしれませんが、
本日、なんと、小沢健二さんが
このスタジオにいらっしゃいます。

遠藤:
いらっしゃいます!

ふかわ:
いやー、ちょっとね、だいぶ前に、曲(のリクエスト)でね、
真理さんの方からお名前は出ておりまして。
で、僕もーーもちろん本気ではありますけどもーー
夢のように「いつかこの番組で(共演したい)」
みたいなことを話したことがありましたよね。

遠藤:
ありましたねえ。

ふかわ:
本当にそれが、現実になるとは。

遠藤:
なりました。

ふかわ:
真理さんありがとうございます。

遠藤:
こちらこそ。
なんかちょっと、精神状態が私もおかしくてですね。
今日、派手に転びました(笑)。

ふかわ:
えっ!
真理さんはもう、いつもの真理さんでいてください。
私の今日の目標は、「泣かない」ということです。

遠藤:
「泣かない」!
ふふふっ(笑)。

ふかわ:
「落涙しない」ということ。
もう、四十(しじゅう)を超えましたけど、
こんなにも涙を我慢しないといけない日が
来るとは思いませんでした(笑)。
今日はみなさん、
いろいろ思いの丈をぶつけるというか、
お訊きしたいこともありますので、
みなさん楽しみにしていてください。

中略

ふかわ:
さあ、この曲のあと、
いよいよ小沢健二さんの登場です。

遠藤:
ヘンデル作曲『“水上の音楽”から“アラ・ホーン・パイプ”』を、エンシェント室内管弦楽団の演奏、クリストファー・ホグウッドの指揮でお聴きください。

♪「“水上の音楽”から“アラ・ホーン・パイプ”」 ヘンデル作曲
(4分56秒)
(演奏)エンシェント室内管弦楽団
(指揮)クリストファー・ホグウッド
<Polygram POCL-5231>

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2. これ、現実ですよね?

遠藤:
ヘンデル作曲『“水上の音楽”から“アラ・ホーン・パイプ”』を、エンシェント室内管弦楽団の演奏、クリストファー・ホグウッドの指揮でお聴きいただきました。

ふかわ:
(神妙な口調で)
真理さん、いま私が目にしているのは
これ、夢ではないですよね?

遠藤:
夢ではないです!

ふかわ:
これ、現実ですよね?

遠藤:
現実です!

ふかわ:
はい。
では……お待たせしました。
「きらクラ!」に、この方が来てくださいました。

小沢:
あ、えーと、こんにちは。小沢健二です。
こんにちは。
すいません、鼻声です(笑)。

ふかわ:
よろしくお願いします、
ようこそいらっしゃいました!

小沢:
よろしくお願いします!

ふかわ:
いや真理さん、いやこれはもう、
ちょっと心拍数上がってきました。

遠藤:
そうですね。

ふかわ:
小沢さんの、もうとにかく私は
お会いできることはもちろん光栄ですし、
真理さんにも感謝がもうすごいわけですけども、
もともと、真理さんとの出会いから……。

小沢:
あ! 真理さんとは、
2012年に東京オペラシティで
十二回やったコンサート(「東京の街が奏でる」)がありまして。
そのときに、弦カルテットが僕の後ろに座っているんですが、
そのうちの1人が真理さんで。

というか、僕が弦カルテットのメンバーを探しているときに
真理さんのCDを聴かせていただいて、
もう「この人かっこいいなあ!」と思って、お願いして(笑)。

遠藤:
(笑)
ありがとうございます。

ふかわ:
ほぉー! そういう流れだったんですか。

小沢:
ある(元々編成されている)弦カルテットとかではなくて、
ソロでご活躍の方にお願いして、やりました。
すっごい楽しかったです!
ありがとうございました。

ふかわ:
そのタイミングがちょうど、
この番組がスタートするあたりで。

遠藤:
そうなんです。
ちょうど春でね、
3月、4月あたりだったんですけど。

小沢:
そうなんですよ!
「これからちょうど番組を始めるんです」
って言っていたときなんですよね、真理さんが。

ふかわ:
そう。それで、真理さんが僕を(小沢さんのコンサートに)誘ってくれて。
楽屋まで行くことができて、
小沢さんに挨拶して、『LIFE』、
アルバムにサインしていただいて。

小沢:
覚えています。

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3. 「渋谷系」という響き

ふかわ:
まさかここで、
またお会いできるとは、という感じなんですが。
あらためてプロフィールをご紹介します。

♪BGM:小沢健二『流動体について』

遠藤:
はい、ご紹介します。

小沢健二さんは、1968年生まれ。神奈川県出身。
東京大学在学中に、後にフリッパーズ・ギターとなるロリポップ・ソニックを結成。
'91年のフリッパーズ・ギター解散後はソロ活動に専念し、シングル『今夜はブギー・バック』『ラブリー』『ぼくらが旅に出る理由』や、アルバム『LIFE』など、ヒットを連発。
独自の歌詞と、ポップサウンド、甘い歌声で人気を博し、「渋谷系の王子様」と称されました。
'98年に一時音楽活動を休止し、ニューヨークへ移住。
2010年に約13年ぶりとなるライブ・ツアー「ひふみよ」をおこない、久々にファンの前で歌声を披露されました。
そして2017年2月22日、先週の水曜日に、何の前触れもなく、ニューシングル『流動体について』をリリース。
実に19年ぶりとなるシングルリリースで、ファンを驚かせました。
そして、小沢健二さんは私も共演させていただいたこともある指揮者の小澤征爾さんの甥っ子でもあり、実はクラシック音楽との縁が深い方でもあります。

ふかわ:
はい。そうですよねえ。
いまかかっている曲が『流動体について』
ということなんですけども。

小沢:
はい。

ふかわ:
あの、「渋谷系」という響きは、
小沢さんにとって
どのような存在なんでしょうか?

小沢:
えー……っと、なんですかねえ。
なんか……楽しいですけどね、
いろんな友だちの顔が浮かんで。
誰が(「渋谷系」と名)付けたのかわからないですけど(笑)。

ふかわ:
当時、唄っているとき、
「渋谷系」っていうのは、
概念としてあったんでしょうか?

小沢:
言われていましたね。
ライターのかたか、マーケティングのかたが
言いだしたと思うんですけれど、
はい、「渋谷系」と言われていました。

ふかわ:
はー……もう私とかの世代もーー世代を超えて、ですけどーー
特にもう、ものすごいパワーを浴びた世代なので。
そして今でもなお、テレビをつければCMソング*1で。

遠藤:
そうですねえ。

小沢:
あーもう、そのことはほんとにうれしいです。
なんか、すごい、その曲がわりと
スタンダードなメロディというか、
何度もカバーされたりいろんなところで使われて、
すごく光栄だし。
やってよかったな、という風に思います。

ふかわ:
それが私みたいなファンの中には、
カバーをまだ受け入れられない自分がいたりする……。

小沢:
あははははは!(笑)

ふかわ:
「なんでカバーしてんの!?」みたいな、
そういう偏屈野郎もね、実際いるんですけども。

遠藤:
ふふふ(笑)。

ふかわ:
そして、お便り届いております。

福島県会津坂下町 Hさん
ふかわさん、遠藤さん、スタッフの皆さん、そしてゲストの小沢健二さん、こんにちは!
先週の「来年度も放送継続」の嬉しいお知らせにホッとしたのもつかの間、またも嬉しいニュース。
「小沢健二さんが19年ぶりにシングルをリリース」とのニュースに続き、22日夕方のふかわさんの「小沢さんが『きらクラ!』に出演される」とのツイートにもう、春が来たかのように心のウキウキワクワクが止まりません。
「きらクラ!」が始まって間もないころに、小沢さんがリクエストされたヴィラ=ロボスの『ブラジル風バッハ』はずっとお気に入りの1曲です。
今日はどのようなお話が聞けるのか、楽しみで仕方ありません。
中村貴子さんの「ミュージックスクエア」*2を毎晩聴いていた当時は、小沢さんの曲も楽しげな部分しかわからなかったけど、アラフィフとなった今、小沢さんの詩の世界の奥深さをしみじみと味わっています。
憂いの見え隠れする歌詞を、とびきりの明るいメロディで颯爽と唄う小沢さんの音楽に、何度も何度も救われました。
毎回録音した「きらクラ!」を子守歌がわりに毎晩聴いているヘビーリスナーの私。
この「神回」は、もちろん永久保存版です。

ふかわ:
ということなんですが、
今回小沢さんがこのスタジオにいらっしゃることが
本当に突然決まったので、
私もツイートとかするつもりじゃなかったんです。

遠藤:
はい。

ふかわ:
あの、番組ホームページのほうとか、
いろいろこう、ネットで、わーっ!
と、こう、一気に――。

小沢:
ははっ(笑)。

ふかわ:
――広がりましたね!(笑)

遠藤:
そうですねえ。

小沢:
ありがとうございます(笑)。

ふかわ:
で、私もあわててファンにね、
連絡という意味でツイートさせてもらったんですが。
この、アラフィフの人だとかね、
やっぱりずーっと身体に小沢さんのメロディが、
流れているわけですよね。

小沢:
ああ。ありがとうございます(笑)、本当に。
本当に光栄です。
なんか本当に……なんだろうな……
聴き手というか、僕がそのときやっているときは、
たとえば『流動体について』の前にシングルを出したときは、
えーっと、19年前の、1998年なんですけれど。
それが僕が29歳のときの最後のシングルで。

要するに20代で、
だから26とか7とか8とかそのへんで音楽やっていて、
やっぱり聴き手の顔ってそんなに見えないんですよ。
まだみんな高校生だったりするから(笑)。
それで見えないんだけども、
今って大人になって会うじゃないですか。
そうすると、みんなすごく「良く」て!
「あ、こんな人たちが聴いててくれてたんだ!」
と思うともう、
それは本当に、うん、嬉しいし、
いつも圧倒されます!

ふかわ:
はー……そうですか。

小沢:
「あー、こんな人たち、
こんな賢い子に聴いてもらえてたんだ!」
と思いますね。

ふかわ:
はい。ただ、私も一応今日はですね……。
(自分のボーダーの服を指さしている?)

小沢:
はははは(笑)。

ふかわ:
あのーそのーなんというんでしょうかね、
やはりこの……。

小沢:
でましたね(笑)。

ふかわ:
このボーダーというのは、はい。
ちょっと控えめなボーダーではありますが、
これ(上着?)を脱いだら
完全にボーダーになるわけですけど。

遠藤:
ふふふふっ(笑)。

ふかわ:
小沢さんはもうあまり、ボーダーには?(笑)

小沢:
いやいや! もう、全然(着てます)!
しょっちゅう子どもとも一緒に(笑)。普通に。

ふかわ:
もう当時渋谷のね――男女ともですけど――とくに女の子。
雑誌のね、『オリーブ』なんかもありましたけど。

小沢:
そうなんですよ。
『オリーブ』に1回、『3才からのボーダー』
っていう連載を書いたことがあるんですけれど。
なんか、3才くらいの写真のときからずっとこう、
ボーダーのやつを着ていて。
ずっと好きだったんですよね(笑)。
で、そのまま、でも、んー、
あれもなんかでもちょっと……
今、ふかわさんがちょっと感じてくださったように、
(90年代にボーダーを着て)やっているときに、
やっぱりそれがすごく人に真似されることが
イヤだったときはありました。
それで、もう「自分の真似されてる」って、
「こうやって消費されるんだ」みたいに思って。

ふかわ:
ああ……そうですか。

小沢:
服装を変えたり、ボーダーを着ないようにしたり、
なんかいろんな……なんて言ったらいいんだろうなあ、
やっぱり、なんか、うん。
こう、葛藤するものはありましたけど。
今は全然、もう、3才に戻ってます、普通に(笑)。
えはははは(笑)。
ボーダーで、3才の子どももボーダー着てます。普通に。

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4. これからも、もうちょっとやろうと思います

ふかわ:
へえ……。
で、お便りにもありました、
かつて『ブラジル風バッハ』をリクエストして
いただいたときがありました。

遠藤:
そうでしたね、ええ。

ふかわ:
そのときは、真理さんとの演奏会を終えた――。

遠藤:
終えた後に。
メッセージをニューヨークからね、いただいて。

小沢:
そうでした。

ふかわ:
そうでしたね。

遠藤:
そのまま私は番組のホームページ(の投稿フォーム?)に入れたんですね。
そしたらスタッフさんが怪しんで
「小沢健二って書いてあるけど……誰(の仕業)?」
みたいな(笑)。

ふかわ:
(笑)
まあそりゃねえ、最初はね、
鵜呑みにはできないですよね。
ただ真理さんも、そのライブで共演して、
数日を共にしたわけじゃないですか。
どうでした?

小沢:
もう、数日どころじゃないですよ。
ものすごい長い。あはははは(笑)。

遠藤:
ものすごく長い間。
ええ、1ヶ月ぐらい。

小沢:
リハ(ーサル)、めちゃめちゃ長いですから。

遠藤:
なのでもう、ほぼね、毎晩ご飯を一緒に。

ふかわ:
へえー!

小沢:
うん、そうなんですよ。

遠藤:
リハーサル中は毎日。

小沢:
「バンドがあって弦カルテットがちょっと数曲入る」
とかじゃなくて、
「弦カルテットがバンド」なので。

ふかわ:
そうですよね。

小沢:
ドラムとかまったくなくて、
弦カルテットと、
僕のクラシックギターと、
ボーカリストがもう一人(真城めぐみ)と、
アナログベース(中村キタロー)
が入るという構成なので。
もう、すっごい時間練習しましたよ!

遠藤:
すっごいたくさん。

小沢:
ありがとうございました。

遠藤:
ありがとうございます。

ふかわ:
いやあ、本当すばらしい空間でしたよ。
真理さん的に、どうでした?
音楽家として、小沢さんは。

遠藤:
いやもう、求めるものがもう「芸術家」です。
もちろん、私たちは音楽とか音に対しての
欲求みたいなのはありますけど。
その、すべて(が芸術)ですね。
もちろん着るもの、私たちの演奏会のときの衣装もそうですし、
物販として販売しているTシャツとか、
またその会場を彩るものたち。
すべてが、ほんとに、ひとつの芸術作品だと思いましたね。

ふかわ:
そうですよね。
小沢さんの楽曲を、
このようなカルテット編成で表現しようと思ったのは、
何かあったんでしょうか?

小沢:
えーっと……その、
2010年にツアーは再開(「ひふみよ」)したんですけど、
――「再開した」といっても3,4年に1回しか
やんないのであれなんですけど(笑)――
その、えー……、
あ。
(あらたまった口調で)
これからも、もうちょっとやろうと思います。はい。

えーっと(笑)――そのときに、うーんと……
やっぱりドラムってものすごい楽器で。
あれが鳴ると他のもの、
スネアが「バンッ」て鳴るとその瞬間、
他のものが何にも聞こえてない
という状態があるんですけど。

そうじゃなくて、もうちょっともうちょっと、
こう、波動が全部見えるような(笑)ものをやりたいなと思って。
それで「東京オペラシティはどうだろうか」という話になったときに、
その東京オペラシティは武満徹さんが設計して、できたホールで。
そのーえーっと……武満さんはなんか、
子どものころから、いつも見ていた「大人」だったので。

ふかわ:
へえー……。

小沢:
あの、叔父の小澤征爾と親しくて。
それで、いつもよくお会いしていた方なので。
それで「あ、なんかあの感じの場所」。
なんて言ったらいいんだろ、なーんかうまくいえないんですけど。
「そこならこういうことができるんじゃないか」と思って。
で、クラシックっていうよりは、
もうちょっとアナログのベースのシンセサイザーが
「ブーッ!」と鳴ってたりするので、
すごく不思議な独特の音像だったと思うんですけど。
僕はクラシックギターのアルペジオをずっと弾いているので。

ふかわ:
ああー。

小沢:
すごく、変わった音像だったと思うんですけど。
すごく良いコンサートだったと思います。

ふかわ:
そうですよ。いや、素晴らしいコンサートだったですよ。
そして、真理さんはクラシック音楽ではないものを、
もちろんスコアにはなっているものの、
クラシック音楽ではないものを
演奏するわけじゃないですか。

遠藤:
そうなんですよ。
私も本当に、ほぼ初めての経験です、
自分の楽器にこう、マイクを立てて演奏するというのは。
だけど、やっぱりそこの求める方向性というのが一緒だと、
すごく楽しかったですね。

小沢:
ほんと楽しかったですよねえ。

遠藤:
ねえ、ほんとに!

ふかわ:
そうですよねえ!
そして、今回もまた!
(『神秘的』のレコーディングで)
あらためて共演という!

小沢:
あ、そうなんです。

ふかわ:
はい!

小沢:
それでもう、真理さんに(この番組に)「来い」
って言われたら来ざるを得ない(笑)。

遠藤:
(笑)

ふかわ:
え、(『神秘的』のレコーディングは)真理さんが呼びだしたんですか!?(笑)

遠藤:
そんなことない(笑)。

ふかわ:
あ、この番組――の前に。

(※ここのふかわさんの反応は、『神秘的』のレコーディングの話を振ったつもりが、「きらクラ!」出演の話と勘違いされたと気づき、慌てているように聞こえました)

小沢:
いや、真理さんが呼び出したんですよこれ(この番組)!(笑)

遠藤:
え、本当に?
私は1本のメールが「ぜひ来てください」って(笑)。

ふかわ:
みんなの想いですからね。
「来てほしいな」という(笑)。
さて、小沢さん。
この、先ほど聴きました『流動体について』。

小沢:
はい。

ふかわ:
BGMで流れておりましたが、
もう1曲のほうで、真理さんと。

小沢:
はい。もう1曲はそのオペラシティのコンサートのときに、
一番最後にやった曲で。
とても、えー、きれいな曲だったので
いつかスタジオ録音したいと思っていたんですけれど。
その曲で、『神秘的』という曲が
『流動体について』のシングルのもう1曲として入っています。

ふかわ:
はい。じゃあ……今から聴きましょうか。
この中で、真理さんのチェロが。

小沢:
はい、チェロが遠藤真理です。

遠藤:
カルテット編成で、ヴァイオリン2本、ヴィオラ、チェロで入ってます。

小沢:
奥村愛さん、山名玲奈さん、南かおりさん、
そして遠藤真理さんのチェロです*3

ふかわ:
では、あらためて曲紹介をお願いします。

小沢:
あ、小沢健二で「神秘的」という曲です。

♪「神秘的」 小沢健二・作曲
(4分13秒)
(歌)小沢健二
<ユニバーサル TYCT-39050>

流動体について

流動体について

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5. 飛べるような気持ち

ふかわ:
小沢健二さんのニューシングルから、「神秘的」。
お送りしました。
いやー、すてきな音色ですね真理さん。あらためてどうですか。

遠藤:
私もこの、今できあがったものは、初めて耳にしました。

小沢:
あ!

遠藤:
レコーディングのときは、別録りといいますかね。
歌を聴いて弾くわけではなかったので。

ふかわ:
はい、はい、はい。

遠藤:
いいですねえ……。

小沢:
ああ、ありがとうございます!

遠藤:
またライブのときとは全然違って。

ふかわ:
そうですよねえ。
小沢さん、やはり少なからずその、
クラシック音楽の影響というのはあるかと思うんですけれども。
どうでしょうか、これまでの「人生」というと大げさですけども。

小沢:
あーっと、そうですね……なんか振りかえると、
もちろんそうなって、自然にクラシックが家でかかっていたり。

ふかわ:
はい。

小沢:
その、叔父のコンサートに伺っていたりしているなかで、
ものすごく影響されていると思います。
それと、えーっと、征爾叔父とうちの母が、
えっと中学時代に、コーラスのグループをやっていて。
合唱のグループをやっていて。

ふかわ:
はい。

小沢:
で、そのグループは今も続いていて。
(中学時代から)60年後なんですけれど(笑)、また続いていて。
まだ唄っているんですね、コンサートで。
それで、もちろんそのなかでは小澤征爾というのは
小澤征爾であり、指揮者であることもあるんだけど、
小澤征爾という人間であって歌を唄っているときもあるんです。
それでみんなで、仲間で集まって。
今でも、60年後の今も唄っているっていうのは、
毎年集まって唄っているっていうのは、
ほんとにすごくすてきで。
で、そこの音楽会によくお邪魔して。
子どもだから行って走り回ってたりして
「うるさい」とか言われながら走り回ったりして(笑)。

でもいま考えると、そのコーラスとか、
そのすごく「昭和」な――
僕は「ミッドセンチュリー日本」って言っているんですけど(笑)――
日本の20世紀中盤というか、昭和の時代の。
なんか、あそこの空気からすっごい影響を受けているんだろうな、
っていうのはだんだん客観的に、
そういう風に思うようになっています。

ふかわ:
うーん。あのー、一般的に、なんでしょうかね。
たとえば教科書でクラシック音楽を
授業として習うと、反発して――

小沢:
ああー。

ふかわ:
――たとえばロックだとかパンクだとか(の音楽に向かう)っていう。
もともと当たり前のようにあった音楽の魅力って、
なかなか気づけなかったりするじゃないですか。

小沢:
わかります。

ふかわ:
小沢さんのなかでそういう、
なんか心の動きって、どうでしたか?

小沢:
いやー、反発して、っていうのはなかった……ない、と思いますね。
なんか、わりと強要されたことがあんまりなく育ったので(笑)。
何々への反発、っていうのはなんかさほど、
何に対しても、あまりないというか(笑)。

ふかわ:
音楽との出会いは、イコール、
ギターとの出会いだったりしたわけですか?

小沢:
そうですねえ……えーっと、どうなんだろう?
そうやって「自分で作っていいんだな」と思ったのは
やっぱり、ギターを持って他の人の曲をコピーすると
「あっ、これは作れるな!」
っていう風に思いました。

ふかわ:
はあー……。

小沢:
それで、えーっと、
作ることも、とても好きなので(笑)。

ふかわ:
へえー!

小沢:
そのときに
「あ、こんなふうに言葉を組み合わせて、
メロディと合わせて、
こんなふうに言(ゆ)えてしまうんだ!」
と思ったときはもう、
飛べるような気持ちがしました(笑)*4

ふかわ:
ああー。飛べるような感覚! はあー。
その、クラシックの表現者とか、
そういうのはあまり、選択肢の中には、なかったんでしょうか?

小沢:
えっと……これもまったく、えーと……
叔父の受け売りになってしまうんですけれど……
「まったく別のものだ」と。

ふかわ:
ああー……。

小沢:
あの、書かれているものを、
それをこう「表現していく」のと。
あの、「何かを書く」っていうのは。
もう本当に、皆さんが思うより、ずーっと別のことだと。

ふかわ:
はー……いやあ、でも、
そのメロディって、今でこそ、パソコンがあるおかげで
いろんな人が音楽表現できますけど。
その「心に響く音楽」って、
だからこそすごく難しいじゃないですか。
小沢さんのなかで、メロディを書くって、
感覚としてはどういうものだったんでしょうか?

小沢:
どうなんでしょうねえ……。
でも、そうですね、でも、
今そうやってCMやなんかで
使われたり残っていっている曲のメロディは、
できた場所の風景も、いつできたかも、
もう、本当に全部浮かんできます。

ふかわ:
はー……。

小沢:
それで、
「あ、ここの転調は、あのときに目の前に何があった」
みたいな、映像みたいな感じで残っていて。
それでやっぱり、
そういう風に映像が残っている曲っていうのはメロディも強くて。
映像って、頭のなかに映像が浮かんでくるんですけど。
もう、ほんっとに細かいところまで覚えていて。

『今夜はブギー・バック』だと、
あるところで――というかもう言っちゃうと(笑)、
「華やかな光」もそうだけど、
「♪包むようなハーモニー」
っていうところで、そこの、
Bに音が落ちるんですけど。
その落ちたときのことはもう、
ほんとにスローモーションのように覚えていて。
その、「あ、できた!」
と思ったんですよ、なんか。

ふかわ:
ほぉ……。

小沢:
そのときに本当に目の前にあった鍵盤を押した、
その、タッチも、まわりにあったものも、
まわりの家具も、全部浮かんでくるんですよ!
それを、いま、『ブギーバック』を聴くと。
もう、20何年も前の(瞬間の映像が)。
そういうのはすごい不思議だし、楽しいですけれど。

ふかわ:
はー……。
ある種、自分の思いもよらぬところで
ストーン、となんか、降りてくるというか。

小沢:
ねえ。そのときに、
時間がゆっくりになるっていうか(笑)。

ふかわ:
はははは(笑)。

小沢:
逆にいうと、時間がゆっくりにならないで
作っちゃった曲というのは覚えてない、
っていうのもあって。

遠藤:
それだけ集中しているときに降りてくるんですかね?

小沢:
どうなんでしょうねえ……
でも、本当に鍵になっているところで
「あ、これはいいな」と思う曲は、
やっぱり残る。残りますね、

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6. 子どもの頃から好きなことを追っかけて

ふかわ:
うーん。そして、まあ……
いろいろとこう、転々となさって。
ニューヨークに拠点を、というか、
お住まいになるわけですけども。

小沢:
はい。

ふかわ:
ニューヨークを「選んだ」、
というんでしょうかね?

小沢:
えーっと、僕は子どもの頃から
アメリカの音楽、ブルースとか、
そういうのに基づいたロックとかって、
ほんとにアメリカで生まれた音楽なので、
そういうのはもちろん好きで。
そしてアメリカ文学というのもとても好きで。

ふかわ:
ああー。

小沢:
それでそれを(大学で)勉強していたので。
もう本当に、逆に言うと、その、
一旦こう、ポップ音楽っていう、
ポップミュージックっていうのを棚に上げて、その。
一回ああいう風に、なんていったら、
「勉強を続ける」っていうとあれなんですけど。

ふかわ:
ほう、ほう。

小沢:
「知りたいことを続ける」っていう風にすると、
やっぱりアメリカに住むのは、
もう、まったく、自然すぎてもう、
まったく何か特に大きな決断ですらないぐらいの(笑)。
自然に、それでそのあとじゃあアメリカに拠点があって、
えーっと他の、いわゆる「第三世界」と呼ばれるところに行って、
トータルで3年ぐらいいるんですけれど。

ふかわ:
ほー。

小沢:
それでじゃあ、
「その体験が今ない自分がいたらどうだろう」と思うと、
ちょっと、考えられないですし。
すごく、たぶん不安だろうと思うし、
悔しいんじゃないかなと思って。
だから、まったく自然な選択で(笑)、
僕としては何か特に大きく何かを変えたというつもりはなくて。
「自分が子どもの頃から好きなことを追っかけていると、
こういう風になってしまった」
という感じです。

ふかわ:
はー。ではここで1曲聴きましょうか。

遠藤:
はい。

バーンスタイン作曲、『“オン・ザ・タウン~3つのダンス・エピソード~”からタイムズ・スクエア1944年』
ニューヨーク・フィルハーモニックの演奏、レナード・バーンスタインの指揮でお聴きください。

♪「“オン・ザ・タウン~3つのダンス・エピソード~”から
タイムズ・スクエア1944年」バーンスタイン作曲
(4分38秒)
(管弦楽)ニューヨーク・フィルハーモニック
(指揮)レナード・バーンスタイン
<SONY SRCR9120-2>

遠藤:
バーンスタイン作曲、『“オン・ザ・タウン~3つのダンス・エピソード~”からタイムズ・スクエア1944年』ニューヨーク・フィルハーモニックの演奏、レナード・バーンスタインの指揮でお聴きいただきました。

ふかわ:
はい。
小沢さん、バーンスタインの曲はいかがでしょうか?

小沢:
えーっと、アメリカだなーと思って聴いてました。
ははははは(笑)。

ふかわ:
(笑)
なにか、匂ってきたりしますか?

小沢:
なんかこれも、あのー、
『ザ・シンプソンズ』のテーマ曲も一緒か、って。
「♪ざー、すちゃすちゃっちゃっちゃっちゃーちゃっちゃっちゃちゃちゃちゃっ」
って(笑)。やっぱりアメリカだなって(笑)。

ふかわ:
ははは、わかりました(笑)。

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7. 「オン」で録音されている楽器が大好き

ふかわ:
さあ引き続き、おつきあいいただきたいと思いますが……
先週の放送でですね、
北海道札幌市のSくんという中学2年生から、
「吹奏楽部に所属しているんですけど、
チューバを担当しているんですが、
新入部員がなかなかちょっと入ってこない」
というお悩みがありまして。

小沢:
なるほど。

ふかわ:
それを受けての、ほかのリスナーさんからの
お便りがきております。

遠藤:
はい。岐阜県美濃加茂市のAさんです。

「きらクラ!」の皆さん、こんにちは。
私、20何年かぶりにインフルエンザになりました。
予防接種は受けていたので熱は高くないのですが、身体中の痛みと咳、悪寒。
いつもなら趣味の鞄作りやペン習字の練習をしながら「きらクラ!」を聴いていますが、先週はさすがの私もベッドに横になり、うとうとまどろんでいたところ、チューバの演奏で目が覚めました。
人気のない楽器、との投稿でしたが、心身共に弱っている私には心地よい響き。
「ああ、動かなきゃ! インフルなんかに負けてられない!」
そんな気持ちになりましたよ。がんばって、チューバの君!

ということです。

ふかわ:
はい。
小沢さんは、軽音楽部とかそういうのには
所属されていたんですか?

小沢:
いやなんか、あんまりやってなくて。
高校の時、なんとなくそういうクラブがあったりするけど、
べつに、とくにすごく盛んなクラブではないし。

ふかわ:
はー。

小沢:
あんまりそういうのはなくって。
なんか友だちとなんかやったりとか、でしたね。
でも、軽音楽部はなんかいいなぁと思いますけどね(笑)。

ふかわ:
ああ、そうですか!

小沢:
すてきだなーと思いますね。

ふかわ:
あの、よくコピーしたバンドとか、
そういうのってあったんですか?

小沢:
コピーした……えーっと……。

ふかわ:
でも、洋楽になるんでしょう?

小沢:
そうですね。
ローリング・ストーンズが好きでしたねえ*5
なんでなんでしょうね?
地味というか、あれなんですけど。

ふかわ:
はあー……。
そういうのを重ねてね、オリジナルにつながるんでしょうけど。
そしてもう1通。東京都多摩市のAさんですね。

はじめてお便りします。チューバに人が集まらないと嘆いていたかた!
私は人気のあるフルートを吹いていますが。低音が大好き!
20年ほど前からフルートアンサンブルをやっていて、今ではフルートオーケストラのように40人近くで吹いていますが、ここまでくると普通のフルートだけでは無理!
そこで私はバスフルートを購入。低音でみんなを支えています。やっぱり低音が入ると、音楽が変わります。低音楽器、応援しています!
リクエストは、フルート・アンサンブルの廣瀬量平作曲の「ブルー・トレイン」をお願いします。
フルートの低音、ぜひ知ってください。

バスフルートというのは、あるんですね?

遠藤:
そうですね。

ふかわ:
はい。
あのー小沢さん、いろいろこう曲をつくる上で、
ギターはもちろんだと思うんですけど、
特にちょっと、思い入れのある音とかってあるんですか?
楽器だったり。

小沢:
えーっとー……えー、思い入れのある音というか……
たとえばさっき聴いていただいた「神秘的」は、
弦カルテットで弾いているんですけれど。
やっぱりコンサートホールで弾くと、こう、
気持ちいいんだけどリバーブ(残響)っていうか、
「ワワワン」っていうのがつくじゃないですか。

ふかわ:
ああー。

小沢:
それでー……だけども僕はスタジオ録音もとても好きなので。
スタジオで録ると、ガッ、ってこう、
マイクが「オンになる」って言うんですけど。
その音自体がはっきり見えて!
ごまかしがきかない、というとあれなんですけど。
表情がはっきり見えるんですね。
カメラでアップにしたみたいに。
それで、その、えーっと……
いい演奏を聴くと、
「もう、スタジオ録音したいな」
って思うこと、ありますね(笑)。
そうすると、この「神秘的」なんかは絶対そうなんですけども、
真理さんのこう、息づかいまで見えるみたいなのが、やっぱりあって。

ふかわ:
ああー。

小沢:
その、ふわーっとしたリバーブって、
気持ちいいんですけど、
やっぱり、ある意味なんていうのかな、その、
もろ! 弾いているその、息であり弦がこすれる感じっていうのが、
伝わらなかったりするので。
僕はけっこう、「オン」の録音が好きで。
「オン」で録音されている楽器が大好きです。

ふかわ:
映像でいうと、アップが多い作品、という。

小沢:
アップ! アップ! アップ!*6

ふかわ:
真理さんそれは感じましたか?

遠藤:
うーん。うん。

ふかわ:
どうでしょう、ディレクションもされるわけですよね、小沢さんが。
レコーディングのときに。

遠藤:
いやでもね、とにかく優しいんですよ!

小沢:
いやいやいや。

遠藤:
いっつも褒めてくれる!
あっははは(笑)。

小沢:
だってすごいんです!
すごいんですから褒めますです、そりゃあ(笑)。

ふかわ:
真理さんに対してはそういう風にね、
こう、向き合えるわけですよね。

小沢:
いやもうすごいですから、
褒めるだけです(笑)。

遠藤:
ふふふっ(笑)。

ふかわ:
さあ、ではお便りにありましたリクエストを聴きましょうか。

遠藤:
はい。
廣瀬量平 作曲「ブルー・トレイン」。東京フルート・アンサンブル・アカデミーの演奏でお聴きください。

♪「ブルー・トレイン」 廣瀬量平・作曲
(7分01秒)
(演奏)東京フルート・アンサンブル・アカデミー
<東芝EMI株式会社 TOCZ-9138>

遠藤:
廣瀬量平 作曲「ブルー・トレイン」。東京フルート・アンサンブル・アカデミーの演奏でお聴きいただきました。

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8. コーナー「はじまりはクラシック」~84年の音

♪コーナージングル
「はじまりはクラシック。はじクラ!」

ふかわ:
さあ、ここからはいつもおこなっているコーナーを、
小沢健二さんとともにお送りしたいと思います。

「はじまりはクラシック」です。
世界の名だたるアーティストが、
クラシックの名曲にインスピレーションを得て、
新しいジャンルの名曲を生み出しています。
そんなジャンルを超えた名曲を、
原曲とともに紹介しようというコーナーです。
きっと小沢さんも好きなコーナーじゃないかなあ!
と思います。

小沢:
楽しそうです。

ふかわ:
さあ、まずは。

遠藤:
京都府京都市の、Mさんです。

クラシックビギナーながら、いつも楽しく聴いています。
「はじまりはクラシック」の投稿です。
先日、来たる4月の引っ越しに向けて、部屋の掃除をしていたところ、セルジュ・ゲンズブールの懐かしいCD『ラヴ・オン・ザ・ビート』が出てきました。
当時、「ゲンズブールの音楽が好きで買った」というよりかは、写真家ウィリアム・クラインによる、ゲンズブールが煙草をくゆらせるジャケット写真が好きで買ったCDで、インテリアとして部屋に飾るだけで、実際に聴いたのは一度か二度だけだったような、そんなCDです。
今回、久しぶりに聴いてみたところ、そのなかの1曲に聞き覚えのあるクラシックのメロディが。ネットで調べてみたところ、ビンゴ。
8曲目の『レモン・インセスト』はどうやら、ショパンの『別れの曲』が元になっているようです。
歌詞の内容は、やや過激なようですが、父セルジュと娘シャルロットの囁きあうように唄うデュエットがいい感じです。
ぜひ、聴いてみてください。

ふかわ:
はい。ということですが……
ではまず、原曲のショパン作曲『別れの曲』をお聴きください。

♪「別れの曲(抜粋)」 ショパン作曲
(ピアノ)ジャン・マルク・ルイサダ
<BMG BVCC-31082>

ふかわ:
ショパン作曲「別れの曲」をお聴きいただいています。
小沢さん、ショパンというのは、クラシック音楽の中で非常にこう、
キャッチーでポップな曲が多い気がするんですが。

小沢:
ねえ。本当に。

ふかわ:
はい。こちらの曲がどのようにアレンジされているんでしょうか。
セルジュ・ゲンズブールとシャルロット・ゲンズブールの
デュエットによる「レモン・インセスト」、お聴きください。

♪「レモン・インセスト(抜粋)」
ショパン/セルジュ・ゲンズブール作曲
(歌)セルジュ&シャルロット・ゲンズブール
<日本フォノグラム 32PD-48>

ラヴ・オン・ザ・ビート(紙ジャケット仕様)

ラヴ・オン・ザ・ビート(紙ジャケット仕様)

  • アーティスト: セルジュ・ゲンスブール,シャルロット・ゲンスブール
  • 出版社/メーカー: ユニバーサル インターナショナル
  • 発売日: 2006/10/25
  • メディア: CD
  • この商品を含むブログを見る

ふかわ:
小沢さん、いかがですか。

小沢:
えーっと……
これって何年? 84年、なぁるほど!
84年の音がして良いと思います!(笑)

ふかわ:
84年の音! はい。
セルジュ・ゲンズブールと娘シャルロットによるデュエットで、
『レモン・インセスト』をお送りしております。
1984年のアルバム『ラヴ・オン・ザ・ビート』の収録曲で、
シングルカットもされています。
えー、この曲はインタビューでですね、
シャルロットは
「この曲は父と子の純粋な愛についての歌」
と答えているそうです。
録音当時シャルロットは13歳、これが歌手デビュー曲と。
ウィスパーボイスってなんでしょうね、
フランス語のこの独特な(響きが)。
かなりこの曲の印象を。

小沢:
はい。そうですね。なんだろう、えー……
ドラムの音に耳がいってしまって(笑)。

遠藤:
あははははは!(笑)

ふかわ:
ははは(笑)。なるほど。

小沢:
なんかすごく、やっぱり、機材って、
使う機材ってそのときどき、流行りのものっていうか。あるから。
それがはっきりしているやつ、なんか、これを聴くとやっぱり、
そのときのドラムシンセサイザーはこういう音だったとか。思いますね。

ふかわ:
はー。

小沢:
ポップスってすごく変わるんですよ、使う楽器が。
それで、その、なんか曲を聴いて
「あー、これは90年代っぽいな」
とかっていうと、使う機材がみんなそのときで違うので。
テープレコーダーもどんどん変わるんですよ。

ふかわ:
あー。そうですか。

小沢:
それで、だから80年代だったら、
ソニーのデジタルのテープレコーダーの音があるし。
「なにで録るか」ってすごい大事なので。
「なにで録音するか」。

ふかわ:
小沢さん、その「音」に対するその、
愛情というか……。

小沢:
あははは(笑)。

ふかわ:
こだわりがどんどんね、見えますけども。

遠藤:
見えますねえ、本当に。

ふかわ:
これまた、ビートが淡々としているのがまたいいですね。

小沢:
そうですね。これはきっと、
そのときすごく新しく感じたんだと思います。

ふかわ:
はい、ありがとうございました。
「はじまりはクラシック」では皆さんのお便りをお待ちしています。
ジャズやポップスなど、ジャンルは何でもかまいません。
皆さんの知っているクラシック音楽を元にした曲を送ってください。

では、ここで音楽をお聴きください。

遠藤:
プーランク作曲『即興曲第15番 ハ短調 “エディット・ピアフに捧ぐ”』、パスカル・ロジェのピアノでお聴きください。

♪「即興曲第15番 ハ短調 “エディット・ピアフに捧ぐ”」
プーランク作曲
(3分02秒)
(ピアノ)パスカル・ロジェ
<ポリドール POCL-3088>

遠藤:
プーランク作曲『即興曲第15番 ハ短調 “エディット・ピアフに捧ぐ”』、パスカル・ロジェのピアノでお聴きいただきました。

9. そういうのに使わないでくださいよ!

ふかわ:
真理さん、このあと2回目の「きらクラDON!」*7の出題なんですよ。

遠藤:
ええ。

ふかわ:
(内緒話をするような囁き声で)
真理さん、ちょっと(小沢さんに)お願いして……。

遠藤:
小沢さん――

小沢:
あははははは(笑)。

遠藤:
――これ、「きらクラDON!」って
一緒に言ってもらってもいいですか?

小沢:
(笑)。だから真理さんに言われると断れないんですよ。

ふかわ:
(囁き声で)
「オザケンソロ」で(お願いしてください)……。

遠藤:
「オザケンソロ」で!?(笑)

小沢:
「オザケンソロ」って(笑)。

遠藤:
オザケンさん、1人で言ってもらってもいいですか?

小沢:
そういうのに(真理さんとの関係を)使わないでくださいよ!(笑)

ふかわ:
(囁き声で)
「きらクラDON!」をね。

遠藤:
「きらクラDON!」って言ってください。

小沢:
はい。「きらクラDON!」。

♪「きらクラDON!」出題

ふかわ:
ははははは(笑)。

遠藤:
ははは(笑)。

ふかわ:
するっと出てきましたね(笑)。
はい、ご協力ありがとうございました。

遠藤:
(笑)。すいません。

小沢:
とんでもないです。

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10. コーナー「BGM選手権」

10-1. すごく、すてきな小説

♪コーナージングル「BGM選手権」

ふかわ:
さあ、「BGM選手権」です。
番組が発表したシチュエーションに合うBGMを、
クラシック音楽の中から選んでいただこうというコーナーです。
第111回、今回のお題はボリス・ヴィアン作/曾根元吉訳『日々の泡』からでした。
お題の朗読を、もう一度お聴きください。

 コランは地面にすわりこんで耳をかたむけていた。カクテルピアノに寄りかかって彼はしなやかな楕円形をした大粒の涙をこぼしているのだった。その涙は服を伝って流れ落ちると塵の中に糸をひいていくのだった。音楽は彼のなかを通りぬけて濾過されてまた出てくると、彼からぬけ出すその旋律は『ヴァガボンドのブルース』よりもずっと『クロエ』に似かよっていた。古物商は牧歌風な質朴さで変り節をつけて口ずさんでその頭をガラガラ蛇のように左右にふり動かしていた。スリーコーラスをひきおわると彼は手を停めた。コランは、魂の底までうれしくなって、じっとそのまますわりこんでいた。それはまるでクロエが病気にならない時のようだった。
「さあこれでどうすればいいのですかな?」と骨董屋はきいた。
 コランは立ち上がると機械を操作して小さな鏡板(ルビ:パネル)をひらいた。虹いろに輝く液体をたたえた二杯のグラスがとり出された。骨董屋が先に舌を鳴らしながら飲みほした。
(ボリス・ヴィアン(著),曾根元吉(翻訳)『日々の泡』(新潮文庫)より引用)

今回も4つのBGMをあてたいと思います。
その中から、もちろん! 小沢さんに
「ベストBGM賞」を選んでいただきたいと思います、
よろしくお願いします。

遠藤:
埼玉県北本市のIさんです。

今回のBGM選手権のお題、ボリス・ヴィアン作の『日々の泡』からの文章には、シューマン作曲の『“森の情景”から“寂しい花”』はいかがでしょうか?
対話を続けるようなピアノの音色に、この文章での会話の様子が重なって、良いシーンになるように思えます。
できましたら、マリア・ジョアン・ピレシュの演奏したCDを使っていただければありがたいです。

ふかわ:
では、音楽をあててみたいと思います。

(『日々の泡』の朗読とともに)
♪「“森の情景”から“寂しい花”(抜粋)」 シューマン作曲
(ピアノ)マリア・ジョアン・ピレシュ
<ERATO WPCC-5287>

ふかわ:
いかがでしょうか、小沢さん?

小沢:
えーっと……
このボリス・ヴィアンの『日々の泡』は、
20数年前に読んで以来なんですけど、
僕知らなかったんです、これが(今回の)お題だと。

ふかわ:
ああーっ。

小沢:
でも、えっとこれはですね、
コランという青年と、その彼女のクロエという、話なんですけど。
クロエの、たしか、えーと、肺に百合の花が咲く病気になってしまう。

ふかわ:
はあー。

小沢:
それで今、「カクテルピアノ」って言いましたけれど、
これはですね、
「ピアノを弾くと、その旋律に合ったカクテルが作られる」
っていうピアノだと思います。
最近読んでないので記憶してないけど(笑)、
たぶん正しいと思うんです。

ふかわ:
百合(ではなくて)……睡蓮かもしれないですね。

小沢:
ああ、睡蓮! 睡蓮ですね。

ふかわ:
でもお読みになったんですね!

小沢:
覚えてます。
すごく、すてきな小説。

ふかわ:
音との絡み合いはどうでしょうか?

小沢:
音との絡み合いですね?
うんと、だから、これ「寂しい花」っていうのは、
その花が生える病気なんだろうな、
と思って聴いていました。

ふかわ:
んんー。さあ、続いて行きましょう。

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10-2. 日本の作曲家のもつ日本の空間が

遠藤:
東京都小金井市の、Sさんです。

番組が延長されるってビッグニュースです、よかったよかった。
喜んでBGM選手権にチャレンジですが、いつも以上に難題です。原作を読んでいないので状況がつかめません。
クロエが、肺に睡蓮の花が咲く難病にかかったりとか、ピアノからいろんなカクテルがでてきたりとか、奇妙奇天烈なお話のようだけど、美しい若者たちのロマンチックな恋の話には違いないようですね。
コランのクロエに対する深い想いは、ひしひしとこちらに伝わってきます。
BGMは、大好きな武満徹作品の中から選びました。『“3つの映画音楽”から“ワルツ”』です。
エレガントでおしゃれで、少しユーモラスで、でもどこかさみしさを含んだこのワルツ。
ボリス・ヴィアンが聴いたら、ほほえみながらこう言うでしょう、「Tres bien」。

ふかわ:
では、音楽をあててみたいと思います。

(『日々の泡』の朗読とともに)
♪「“3つの映画音楽”から“ワルツ”(抜粋)」 武満徹・作曲
(演奏)ロンドン・シンフォニエッタ
(指揮)ジョン・アダムズ
<NONESUCH WPCS-5090>

ふかわ:
印象が変わりました。

小沢:
はい。
えーと、武満さんが昔おっしゃったことで、
「武満さんの音楽の、
一番、個性みたいなものがあらわれるのは、
実は、そういう西洋のクラシックの楽器の
(演奏による)曲を書いているときに一番あらわれる」
って武満さんが言われたことがあるそうです、
アメリカ人の音楽家に。

で、僕はそれ、すっごくよくわかるんです!
武満さん、
「言われてわかんなかった」
ってたしかそのときおっしゃってたんだけど。

えーっと、そうなんです。
日本の和楽器が入ったりするよりも、
その、まさに、本当に
「西洋、クラシックの伝統の楽器でやったときのほうが
日本の作曲家のもつ日本の空間みたいなものがあらわれる」
っていうのは、本当だと思います。

ふかわ:
へえー……!

遠藤:
んー、すごい話ですね!

ふかわ:
真理さんどうでした?

遠藤:
いまのコラボレーション、
一通目のお便りと違って、どこかこう、
動きみたいなものが見えて。

小沢:
ああー。それはそうですね。

ふかわ:
ドラマ性がね、高まったかもしれないですね。
では続いていきましょう。

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10-3. ハーモニカの音が聞こえてくるような

遠藤:
神奈川県大磯町の、Dさんです。

BGM選手権へ挑戦です。
今回のお題、『日々の泡』はもちろん読んだこともなく、作者の名前も放送で初めて耳にしました。
切り取られたこの場面が、何回読んでも、悲しい場面なのか楽しい場面なのかすらわかりかねず、ほとほと困ってしまいました。
曲も思いつかず、苦し紛れに「この場面に合いそうな楽器はなんだろう?」と考えてみたら、なぜだかハーモニカが思いつきました。
そして家にある唯一のハーモニカCD、トミー・ライリーのソロアルバムの中から、一番お題に合う曲を選びました。
私が選んだ曲は、ストラヴィンスキー作曲『歌劇“マヴラ”より “ロシアの歌”』です。
ハーモニカの音色がもつ、切なさやユーモラスな響き、そして音楽の不思議な感じが、このお題の中の世界観に合っているような気がするのです。

ふかわ:
では、音楽を合わせてみたいと思います。

(『日々の泡』の朗読とともに)
♪「歌劇“マヴラ”より “ロシアの歌”(抜粋)」
ストラヴィンスキー作曲
(ハーモニカ)トミー・ライリー
(ピアノ)ジェームズ・ムーディ
<ポリドール POCL-3683>

ふかわ:
ハーモニカの音は、存在感がありますね。

小沢:
いいですね、これ、とても、良いような気がします!
あの、ボリス・ヴィアンという人は、なんか、
すごく僕は親近感を感じて(笑)。
アメリカの、それこそ「ミッドセンチュリーアメリカ」、
20世紀中盤のアメリカをすごく好きなんですね。
それでデューク・エリントンってジャズの作曲家が大好きだし、
それで、一度そのニューヨークのハーレムを舞台にした
『墓に唾をかけろ』っていう小説を、
名前を隠して(「ヴァーノン・サリヴァン」名義で)書いたことがあります。
それは本当にジャズとブルースと、
それこそ、ハーモニカの音が聞こえてくるような小説なんですけれど。

ふかわ:
はあー!

小沢:
それを考えるとこれはけっこう、
ハーモニカを思いついたのはすごいと思います!

ふかわ:
はい。この方、Dさんはね、
状況はつかめないながらも、
感覚として選んだわけですけどね。

遠藤:
イメージがね。

ふかわ:
バッチリですね。
では最後です。

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10-4. ボリス・ヴィアンのリズム感

遠藤:
岩手県奥州市の、Mさんです。

BGM選手権に、コープランド『クラリネット協奏曲』はいかがでしょうか。
クラリネットのメロディは、骨董屋さんのハミングのように牧歌的で、単純素朴なのに、和声にはどこかクロエの肺にすでに深く根を張ってしまった睡蓮のような陰がさしているようにも感じます。
コランはこの瞬間は魂の底まで幸せで、幸せでいっぱいで、涙が流れるのに一番不幸なことはこれから起こることが決定的にわかってしまっている。
自慢のカクテル製造機能付きピアノはまさに人手に渡らんとし、クロエの病気はきっともう治らない。
お題の直前にある、骨董屋さんの奏でるピアノの音が、バーニー・ビガードの真珠のたまを転がすようなクラリネットの音のように宙を舞う。
という描写((当該箇所を正確に引用すると“バーニー・ビガードのクラリネットの真珠のようなひびきとおなじような軽やかな楽音が飛び立ってくるのだった。”(ボリス・ヴィアン(著),曾根元吉(翻訳)『日々の泡』(新潮文庫)より)))にも、かなり背中を押されました。
30年以上も本棚の隅で埃をかぶっていた『日々の泡』を、初めて通読することができました。ありがとうございました。

ふかわ:
では、音楽をあててみたいと思います。

(『日々の泡』の朗読とともに)
♪「クラリネット協奏曲(抜粋)」 コープランド作曲
(クラリネット)アンドレアス・オッテンザマー
(管弦楽)ロッテルダム・フィルハーモニー管弦楽団
(指揮)ヤニック・ネゼ・セガン
<Deutsche Grammophon
UCCG-1630>

ふかわ:
これもいいですねえ。

小沢:
これもいいですねえ、すごく。
これはだから、アメリカの感じがして。
それでこのクラリネットの音の……
うん、合う気がしますね。

ふかわ:
うん。真理さんどうですか。

遠藤:
うん、とっても(合いますね)。
このテンポ感っていうのもね、すごく感じますけど。
ゆったりとした、瞑想するじゃないけど、
想い、っていうのに、なんていうか、
集中させてくれるというか。

ふかわ:
うん。ぬくもりがね、
伝わってくるようですが。
さあ小沢さん、この4つから……ベストを。

小沢:
いや、どれもすばらしく。
本当にすばらしく、(BGMが)あてられていて。
(ふかわさんの)朗読もすばらしく(笑)。

ふかわ:
えへへへへ(笑)。

小沢:
そして作品もとても良くて。
僕、これが読まれるとはまったく知らなかったですけど。

ふかわ:
はい、はい。
今回、小沢さんのキャスティングが決まる前に、
この朗読はもう録っていたので。

小沢:
ほんとですか!

ふかわ:
はい。

小沢:
もう、ドンズバなやつを(笑)。
ありがとうございます。
えーっとね……。

ふかわ:
決まりましたでしょうか。

小沢:
えー……、はい!

ふかわ:
では、今回のベストBGM賞、
何曲目でしょうか?

小沢:
えーっと……3曲目。

ふかわ:
はい。3曲目の、
ストラヴィンスキー作曲『歌劇“マヴラ”より “ロシアの歌”』
を送ってくれました、
神奈川県大磯町、Dさんに決定いたしました!
ステッカー・クリアファイルさしあげます!
(選考理由は)なぜでしょう?

小沢:
えーっと、やっぱり、
ボリス・ヴィアンの作品はいつも、
リズム感がすごくあって。

ふかわ:
おおー。

小沢:
えーっと、すごく、なんていうのかな、
不思議なことをやるんですよ。

ふかわ:
はい。

小沢:
そのー……なんせこの、ちょっとシュールな風景が、
その日常の中の描写も、とてもちょっとシュールで。

ふかわ:
はい。

小沢:
その、なんか、軽妙さみたいなのがあって。

ふかわ:
ああー。

小沢:
リズム感がとても良いので。
うん、なんか、あの、どれもいいんですけれど、
なんとなくこのハーモニカの、
ちょっとしたアメリカの香りと、
うまくこう、テンポが合って、みたいな。
で、3曲目と思いました。

ふかわ:
はい。読んだことないというかたのセレクトがちょうど! ね。

小沢:
ふふふふふ(笑)。

ふかわ:
いい化学反応になったになったということで。
はい、たくさんのご応募、ありがとうございました!

ではここで、「勝手に名付け親」のお題出題です!
リスナーの皆さんの感受性と想像力、
フルに働かせていただき、
古今東西のクラシック音楽の曲に勝手に名前をつけます!
前回、バッハ作曲、『ゴールトベルク変奏曲 BWV988から アリア』には、
『あんよがじょうず』という新たな名前がつきました。
そして今回の「名付け親」の出題がこちらです!

♪「プリンク・プレンク・プランク」 アンダソン作曲
(2分41秒)
(管弦楽)セントルイス交響楽団
(指揮)レナード・スラットキン
<BMG BVCC-709>

遠藤:
今回の「勝手に名付け親」のお題は、
アンダソン作曲『プリンク・プレンク・プランク』、
セントルイス交響楽団の演奏、
レナード・スラットキンの指揮で
お聴きいただきました。

ふかわ:
いまの曲を聴いて受けた印象をもとに、
新たな名前を考えて送ってください。
応募はハガキまたはメールでも受け付けています。

遠藤:
(宛先の読み上げ)
たくさんのご応募、お待ちしています。

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11. 「解釈」の手助け

♪番組ジングル

ふかわ:
「きらクラ!」、
ふかわりょうと遠藤真理と、
そして本日は、小沢健二さんとともにお送りしております!

さあ、次は我々の好きな曲を1曲ずつ紹介しております、が!
本日は、小沢健二さんに、
1曲セレクトしていただきました。

小沢:
あ、ここで(紹介するんですね)。

ふかわ:
好きな曲、たくさんあるとは思いますが、はい。

小沢:
はい。えーとじゃあ、えー、
Dennis Johnsonという人が作曲をして、
R.Andrew Leeという人が、ピアノを弾いています。
『November』という曲です。

♪「November」 Dennis Johnson作曲
(3分40秒)
(ピアノ)R.Andrew Lee
<Irritable Hedgehog Music>

Dennis Johnson: November

Dennis Johnson: November

小沢:
(曲をバックに)
……えーと、
ふかわさん、遠藤さん。

ふかわ:
はい。

小沢:
この曲は、いま途中で聴きながら、
お二人には言っていたんですけれど。

ふかわ:
はい。

小沢:
ある音楽を、えー……模して、というか。
ほとんどそのまま、やっているような曲なんです。
あの、聴いているかた、
リスナーのかた、わかるかなあ……?
ちょっと聴いてみてください。

ふかわ:
……ええっ?

(20秒ほど無言のまま曲が流れる)

小沢:
これは、じゃあ、
答え、正解、言っていいですか?

ふかわ:
真理さんは、なにか……
ピンとくるものあります?

遠藤:
いや……もう、ぜんぜんピンときません。
おんなじ音のくりかえしっていう、ねえ。

小沢:
これは……「雅楽」。

遠藤:
雅楽!

ふかわ:
ああー……!

小沢:
雅楽を模しているんです。

ふかわ:
ああー、そういうことですか!

遠藤:
(雅楽の)なんの楽器(を模している)?

小沢:
(いま弾いているのは)ピアノで。

遠藤:
あ、これ(いま弾いているの)はね……。

小沢:
あ! (模している雅楽の楽器は)ああ、そうそうそう、
あのー、なんだっけ、しち? はちりき?

遠藤:
しちりき?

小沢:
しちりき? はちりき? しちりき!(正確には篳篥(ひちりき))
はい、すみません!(笑)
この……(楽器をジェスチャーで示している?)。

遠藤:
ああ! この、あれ?
あれは笙(しょう)か。しちりき……。

小沢:
ま、笙だの(も含めた雅楽の楽器)*8
雅楽で、こう、音がすーっと伸びていくんだけど、
音って、一度も同じ音って出ないじゃないですか。
いつも、ある音を弾いたら絶対、
そのモジュレーションというか震えかたって――

遠藤:
ああー、なるほど。

小沢:
――常に違うじゃないですか。

遠藤:
ええ、ええ。

小沢:
それでこれは、その違いっていうか、
ぐーんと伸びていくなかで、
いろんなハーモニクスがあって、
弦がいろんな震えかたをして。
ちょっとこう、お互いに共鳴したりして、
いろんな音が聞こえるっていうのを、楽しむ。

遠藤:
へえー!!
おもしろいですねえ。

小沢:
ミニマリズムっていうやつの、
最初の作品というふうに言われているんですが。

遠藤:
ああ、そうなんですか。

小沢:
ほとんど、知られていない曲だと思います。
それで、(咳払い)その、さっきその、
武満さんの特徴を一番表すのは、
「おそらく西洋クラシックの楽器の編成のときに、
一番武満さんの(曲の)特徴があらわれる」
という話があったんですけど。

ふかわ:
はい、はい。

小沢:
これ、それはその、
ある意味、日本人がたとえば、
日本人の洋服のデザイナーの特徴が一番あらわれるのは、
おそらくジーンズとかをつくったとき、だと思うんですね。
和服を作るより。

ふかわ:
はー……。

小沢:
ジーンズを作ると、
「アメリカ人だとこういうジーンズを作るのに、
日本だとこういうジーンズになって、
こう、すごくきれいに縫われていて、ていねいに……」って。

ふかわ:
ああー、そういうことか!
ああ、すごく腑に落ちました!

小沢:
そうなんですよ。
その、ジーンズを作ると、
逆にアメリカ人ができない日本のていねいさとか、こう……。

ふかわ:
着物とかで、よりも!

小沢:
そう、(着物とか)よりも、むしろ日本の、
(日本)人のもつ性質があらわれる。

ふかわ:
浮き彫りになる。

小沢:
ということなんですね。

ふかわ:
はー!

小沢:
それと同じ意味で、
さっきの武満さんの話があると思うんですけれど。

ふかわ:
そういうことか……!

小沢:
それとおんなじように、
これも、僕らがとっても慣れている
ピアノっていうもの(の演奏)で聴くことで、
雅楽っていうのはどういうふうな音楽なのか、
っていうのをなんか示してくれるような気がするんです。

ふかわ:
はー。

小沢:
で、今度雅楽を聴いたときに
「ああ、伸びていくあの音っていうのは、一度も同じ音のない……」
だから音階じゃなくって、
そのときの音階だとか、「ソ」っていう音じゃなくて、
「そのとき一度きりしかない、音の波動」
っていうふうに捉えると、
「あ、それがこの隣の音とこういうふうに震えて、
ああ、いま広がった……」
みたいな。

遠藤:
たしかに。

小沢:
それを雅楽を聴いたときに
今度は楽しめるんじゃないかと思って。
そのなんか、翻訳というか、
「解釈」の手助けを、
このピアノはすごくしてくれる気がしています。

ふかわ:
……いや、これをねえ、話しているのが、
ポップ・スターの小沢さんがこれを、
解説するというのが、すごいことですよね。

小沢:
でも、なんか、わかります?
とぼけたこと言ってないですか、大丈夫ですか、僕?(笑)

ふかわ:
いや、ねえ……(感銘を受けて言葉が出ない様子)。

遠藤:
楽器のいま、イメージというのがすごくわきますし、
やっぱり、邦楽――
大学生のときに、邦楽の(学んでいる)子たちが
先生のレッスンを受けるときに、
もちろん楽譜というのが基本的にはなくて。
こう、口伝えで聴いて。

小沢:
はい。

遠藤:
で、先生の真似をして。それで学んでいく。
――っていうのを、聞いてて、
それでどうやってこう、個性とかね、出していくのかなあ?
と思っていたんですけど。
わりと個性というのは、後からでてくるもので。
そのときにほんとに、その人が音を出したとか、
その、なんていうんですかね、
「すでに個性になっている」っていう。

小沢:
ああー。……深い!
すごい!

遠藤:
そういう感じをいま、思い出しましたね。
大学生のときに、みんなそういうことをやっていたなあ、
隣の棟で……みたいな(笑)。*9

小沢:
ああ、大学生のときといえば、
この作曲家はとても不思議な人で。
これ(この曲)は大学生の、UCLAで
作曲を勉強していたときに作ったんですけど。
そのあと姿を消してしまうんです。

ふかわ:
はあー……。

遠藤:
ええー……!

小沢:
そして、えーっと……いまも、
あ、そのあと姿を消して、
NASAの、火星探査機の研究にかかわっていたと聞いています。
それで、いまもEメールもなければ電話もない、
5メートル×6メートルみたいな部屋に、住んでいる。

遠藤:
(笑)
5メートル×6メートルって
すごくちっちゃいですよね(笑)。

小沢:
そうなんです。
ピアノ入らないから、入れてないそうです。

ふかわ:
はあー……すごいところまで話広がりましたが、
小沢さん選曲、Dennis Johnson作曲、R.Andrew Leeのピアノで、『November』、お送りしました。

さあ、では、最後の「きらクラDON!」の
出題に参りたいと思います。
じゃあ、今度は3人でいきましょうか。

遠藤:
はい。

ふかわ:
いきますよ。

3人:
「「「きらクラDON!」」」。

♪「きらクラDON!」出題

ふかわ:
さあ。わかりましたでしょうか。

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12. 「オザケンさん」

ふかわ:
さあ、ほんとに今回はお便りがですね、
急な(小沢さんご出演の)インフォメーションにもかかわらず
いっぱい来ているんですけど、
やはり今後の(ご活動の)こととか
お伺いしたいという(リスナーの)かた、
多いわけですが……はい。

小沢:
ああ。

ふかわ:
さしつかえない範囲で、はい。

小沢:
なんか。えー、なんか……
できることがあるなあ、と思って、
なにかいろいろやります。

遠藤:
うっ、ふふふふ(笑)。

小沢:
はははははは(笑)。

ふかわ:
作品づくり、そしてライブ活動だったり、
そして、まあ私も、この、なんていうか、
どさくさにまぎれて
「オザケン」なんていうことも
言ってしまいましたが……。

小沢:
はい。

ふかわ:
自ら表現する、表現したい音、
そして求められる音――
その、なんていうんでしょうかね、
そのー、乖離とかあるときもあるかとは思うんですけど、
表現者として、今後、
どのように進んでいくんでしょうか。

小沢:
えっと、僕は、音楽は、
なんていったらいいんだろうな……
もともとその、文学を勉強してて、
だからさっきもボリス・ヴィアンと言われてもわかるんですけれど(笑)。
それの延長でやっているので、
音楽をやることももちろんあるし、
そうじゃない書き物をしたりすることもあるだろうし、
えー……そうですね、なんか、あのー……
でも、セルジュ・ゲンズブールも
そんな感じじゃないですか、なんか(笑)。

ふかわ:
ああー……まあ、そうですね。

小沢:
(笑)。あんまりなんかとらわれずに、
あの、やれることをやろうと思います。

ふかわ:
うーん。じゃあ、小沢さんが、
いくつになっても、われわれは
「オザケン」と呼びつづけて……?

小沢:
あー、もう、もう、
問題ありません(笑)。

ふかわ:
はあー……(恐縮している様子)。

小沢:
真理さんも「オザケンさん」なんて(呼んでいるので)(笑)。

ふかわ:
「オザケンさん」(笑)。

遠藤:
いっつも(笑)。(小沢さんのほうが)年上ですが(笑)。

ふかわ:
(笑)。ねえ、でもね、
飲みに行ったりとかもね、されてますけど。
小沢さん、なんかこう、
今後も、この仕事で(真理さんと)共演するかとは思いますが、
真理さんになにか、こう……。

遠藤:
アドバイスを!

ふかわ:
なにかメッセージだとか。

小沢:
いや、もう!

遠藤:
そういえば、私たちね、
ほぼ同時に、パパとママ(になったんですよ)。

小沢:
そうなんです!

ふかわ:
あ! そういう面でもね。

遠藤:
お二人のお子さんがいらして、私もいると。

小沢:
そう、そうなんです。
それで僕は、最初の長男が産まれるときもすごい不安で、
真理さんにガンガン、マイアミから電話して(笑)。
「真理さん、これ、大丈夫?」
とか。ははははは(笑)。

遠藤:
(笑)。なんかそんなことがあったんですよね、ははっ(笑)。

ふかわ:
はい。
演奏家として(真理さんにメッセージは)……。

小沢:
あ、演奏家ですか!
もう、演奏家としては、もう、なにももう!
「遠藤真理」ですよ、そんな。
なにも言うことはありません。

遠藤:
そんな、ふふっ(笑)。

小沢:
だけどさ、さっきのあの、
ヴィラロボスのやつを、『ブラジル風バッハ』を、
1人で多重録音するというのはどうでしょうか?

遠藤:
う、はっはっはっは!(笑)

ふかわ:
はははは(笑)。宿題が。

小沢:
あはははは!(笑)

遠藤:
(笑)。宿題が出てしまいましたね……。

ふかわ:
宿題が出ましたけども、
真理さん、あらためて(小沢さんへメッセージを)……。

遠藤:
ほんとにもう、お礼しか言う言葉がね、
見当たりませんし、
でもやっぱり、夢って、言ってみると叶うもんですね、ふふっ(笑)、
ほんとにね。ということを思いました。

ふかわ:
(しみじみと)小沢さん、ありがとうございました。

遠藤:
ありがとうございました。

小沢:
ありがとうございました。

ふかわ:
ということで、本日のゲスト、
小沢健二さんでした!
ありがとうございました!

遠藤:
ありがとうございました。

では、最後の曲です。
シマノフスキ作曲「ソナタ ハ短調 作品8から 第3楽章」、ラファウ・ブレハッチのピアノでお聴きください。

♪「ソナタ ハ短調 作品8から 第3楽章」 シマノフスキ作曲
(3分43秒)
(ピアノ)ラファウ・ブレハッチ
<Deutsche Grammophon
UCCG-1567>

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13. 友だちをすごく大事にしてくれる

遠藤:
シマノフスキ作曲「ソナタ ハ短調 作品8から 第3楽章」、ラファウ・ブレハッチのピアノでお聴きいただきました。

ふかわ:
……ということで。
……お帰りに、なられました……ははっ(笑)。
(深く息を吸いこんで)あーーーー。
ほんとに、夢から覚めた――

遠藤:
あははっ(笑)。

ふかわ:
――感じですね。

遠藤:
現実にね、戻ってきちゃったなって(笑)。

ふかわ:
はい。
私、ちゃんと会話できてました?

遠藤:
ちょっとねえ、浮き足立ってましたねえ。

ふかわ:
浮き足立っちゃいますよ!

遠藤:
いやでも、その浮き足立ってるのを、
頑張って踏ん張ってる! っていうのを、
私は見てわかりました。

ふかわ:
いやほんとに、今回たくさんのお便りね、
なかなか紹介できなくて申し訳なかったですけども、
でもほんとにあの……
真理さんのね、このつながりがなければ、
このようなね、3人で(共演する)
っていうのはもうなかったので。

遠藤:
そうですねえ、ほんとにありがたいです。

ふかわ:
ねえ本当に。

遠藤:
やっぱりこう、友情というんですかね、
あのー、友だちをすごく大事にしてくれるといいますか*10
私も、ほんとに一度その、オザケンさんのライブで
ご一緒しただけ、だったんですけど。
その後も、ちょくちょく連絡をいただいたり。

ふかわ:
うーん、ねえ。

遠藤:
ありがたいですねえ。

ふかわ:
いくつになっても、
「オザケン」と呼んでいいという。
これはうれしいですよ。

遠藤:
なんか、聞きたいことを聞いてくださって(笑)。
ええ、すごくおもしろかったです。

ふかわ:
でも本当に、本当に、音楽はもちろん、
「音」を愛しているという。
音の表情を見たいという、ね。
いや、さすがですね。

えー、ということで。
「きらクラ!」いかがでしたでしょうか。
番組ではリスナーの皆さんからのお便りをお待ちしております。
クラシック音楽に限らず、どんな話題でもかまいません。
皆さんの身の回りのできごとや感動したこと、思わず笑ってしまったことなどなど、メールかハガキでどしどしお寄せください。

遠藤:
宛先を申し上げます。
(宛先の読み上げ)

ふかわ:
いやー本当に、
番組継続のお知らせもありましたが、
こんなすぐにね、なんかこう、
桜が咲いたかのようなね。
わーっとこう、開花しましたね、なんかね。

遠藤:
ふふっ、そうですね(笑)。

ふかわ:
はい。いやー本当に、ありがとうございました。

遠藤:
ありがとうございました。

ふかわ:
えー、ということで、
お相手はふかわりょうと、

遠藤:
遠藤真理でした。

ふかわ:
では、今週もたくさんのお便り、
ありがとうございます!
皆さんのラジオネームを紹介しながら
終わりたいと思います。
(ラジオネーム読み上げ)

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恋ロマンティック!!

恋ロマンティック!!

*1:『ラブリー』『ぼくらが旅に出る理由』など

*2:NHK-FMにて1990~2009年に放送されていた音楽番組。Wikipediaによれば、中村貴子さんは1995~2000年にパーソナリティを務めていたようです。

*3:「東京の街が奏でる」の弦カルテットと同じメンバー。「東京の街が奏でる」終幕後の遠藤真理さんのブログには、弦カルテットの集合写真が載っています。コメント欄にも注目。 http://www.endomari.com/blog/20

*4:まだリリースされていない「魔法的」の新曲の歌詞に、「飛べる 飛べる そう歌いたい」というフレーズがありますね

*5:ここでストーンズの名前が挙がるのがちょっと意外な気もしますが、「ダイスを転がせ」の曲名の元ネタはおそらくストーンズですよね。また、小沢健二とストーンズの縁でいうと、こんなエピソードも。 http://ozkn.net/post/35707059976/stripped-the-rolling-stones-1

*6:「カメラ!カメラ!カメラ!」っぽいですね

*7:クラシック曲の一部分を聴いて、リスナーが曲名を当てるコーナー。小沢さんの出演前に、先週分の正解発表と、今週分の1回目の出題がおこなわれました

*8:篳篥も笙も、雅楽で用いられる管楽器。篳篥は竹製の縦笛で、笙は竹を束にしたもの

*9:まったく余談ですが……僕の高校時代にお世話になった現国の先生が、雅楽の演奏家と雅楽の普及活動もなさっているかたで、その先生の演奏会にお邪魔したことがありました。現国の授業も雅楽の説明も、先生のお話はとても軽妙でわかりやすくて、演奏会のときに伺った「ほかのかたの篳篥の演奏を聴いているときに、『あれ、あの人の演奏がいつもと違う?』と感じたら、そのかたのご家族に不幸があったばかりだった」という話が印象に残っています。素人目には(失礼ながら)とてもシンプルな音を奏でていても、そんなに細かい心の機微が演奏にあらわれて、他人に伝わってくるものなのか! と驚いたのです。このトークを聴いて、その先生のことを思い出しました。

*10:まだリリースされていない「魔法的」の新曲の歌詞に、「長い時間続いてゆくよ友情」というフレーズがありますね