「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」(21_21 DESIGN SIGHT)へ行ってきました

概要

(公式サイトより引用)

21_21 DESIGN SIGHTでは2018年6月29日より、企画展「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」を開催します。展覧会ディレクターには、独自の表現により、ウェブ、インターフェース、映像の分野で高く評価されている中村勇吾を迎えます。
 
私たちが普段なにげなく親しんでいる音楽は、音色や音域、音量、リズムといった様々な要素によって緻密にデザインされた構造物(アーキテクチャ)であると言えます。しかし、日常の中でその成り立ちや構造について特別に意識する機会は少ないのではないでしょうか。
 
本展では、ミュージシャンの小山田圭吾(Cornelius)が展覧会のために書き下ろした新曲『AUDIO ARCHITECTURE』を、気鋭の作家たちがそれぞれの視点から解釈し、映像作品を制作します。参加作家は、映像、アニメーション、ダンス、グラフィック、広告、イラストレーション、プログラミング、メディアデザインなどの領域を横断しながら、多彩な感性をもって新しい表現に取り組む9組です。展覧会のグラフィックデザインは、北山雅和(Help!)が手掛けました。
 
Wonderwall 片山正通が会場構成を担当したダイナミックな空間に、ひとつの楽曲と複数の映像作品を繰り返し再生することで、「音楽建築空間」の構築を試みます。
音楽、映像、空間が一体となった会場で、音楽への新鮮な視点を発見してください。
出典:21_21 DESIGN SIGHT | 「AUDIO ARCHITECTURE:音のアーキテクチャ展」 | 開催概要

ネタバレ抜きに、行って聴いて観て体験してほしい展覧会

 2018年7月15日(日)の14時ごろ入場。「ビーマイベイビー 信藤三雄レトロスペクティブ」(世田谷文学館)からのハシゴでした。
 開幕からそこそこ日数の経ったタイミングで評判が広まっているうえ、数日前にDOMMUNEで特集されたこともあってなかなかの混雑ぶり。ただ、14時時点よりも帰り際の15時過ぎのほうがより混んでいたように思います。早めの時間帯に行くのが吉かも。
 
 この展覧会、ネタバレせずに感想を述べるのがどうにも難しいです。
 コーネリアスとか中村勇吾さんとか、今回参加している映像作家さんたちとか、それらの名前にピンとくるものがあれば絶対に行ったほうがいいし、できるだけ真っさらな状態で臨んだほうが面白い(というか良い意味で面食らう)はず。
 
 これから行く人に向けてアドバイスするなら、「ひととおり観るのに1時間はかかるので、そのつもりで」のひと言に尽きるでしょう。
 30分くらいでさらっと観る、みたいなことが難しい展示なので、最低1時間(できれば1時間半くらい)確保して、ゆっくりじっくり楽しむことをオススメします。会場内は冷房が効いてるし、滞在時間の一番長い場所では座って鑑賞できるので、体力的にはそんなに心配いらないはず。
 あとはもう、とにかく行ってみて! と言うしかないです。小山田圭吾さんの音楽が好きな人なら、またはアイデアで魅せるタイプのミュージックビデオ(それこそ今回も参加している辻川幸一郎さんが手がけたコーネリアスのMVとか)やNHK Eテレの『デザイン あ』、『ピタゴラスイッチ』などが好きな人なら、まず間違いなく楽しめると思います。

個人的に楽しめた展示

 以下、具体的な展示の内容に触れてます。ネタバレ注意。
 
 
 
 
 
 個人的に一番楽しめたのは、水尻自子「airflow」でした。寿司。指。
 他の作品と明らかにテイストが違うので否が応でも目立つんですが、シュールな世界観もさることながら、手描きのシンプルな線で対象物の質感や細かな動きをフェティッシュに表現している感じがたまりません。
 不勉強ながら水尻さんの作品を観ること自体が初めてだったんですが、寿司とか指とかは毎度おなじみのモチーフなんですね。

 
 あと、視覚的な気持ち良さでいうと梅田宏明「線維状にある」。
 巨大スクリーンで観ていると自分が映像の中に吸いこまれたような感覚、トリップ感が味わえますね。自宅でVRゴーグルをかけて永遠に浸ってたいです。涎を垂らしながら。
 
 ユーフラテス(石川将也)+ 阿部 舜「Layers Act」も期待通りの面白さ。個別のブースでアレを実践できるのがまた良いですね。ただ、(作り方はまったく異なるものの)パッと見の印象が梅田さんの作品と被ってしまっているのがちょっともったいない気も……。
 石川さんも阿部さんも佐藤雅彦先生の門下ですが、今回の展覧会にあわせて佐藤雅彦先生がツイートされていた一連のエピソードは初耳でした。


 
 会場内順路が一方通行になっておらず、一通りぐるっと廻ってから最初の展示(スタジオライブ映像)のところに戻ってくる、って構成も面白いですね。
 初見では「かっこいいライブ映像だけど、一箇所(STRANGE)だけメチャクチャだったなあ」なんて思ってたら、最後の帰り際にもう1回観て「そういうことかー!」と理解できて気持ち良かったです。
 
 そしてなにより、今回のために作られたコーネリアスの新曲「AUDIO ARCHITECTURE」が素晴らしい!
 こちらのページで試聴できます。
 昨年、11年ぶりに出たアルバム『Mellow Waves』も最高でしたが、「AUDIO ARCHITECTURE」では早くも『Mellow Waves』から一歩も二歩も先のステップに進んでしまっている印象。すごい。
 会場限定で7インチシングルが販売されています。A面が通常バージョンで、B面がスタジオライブ音源。買いましょう。聴きましょう。あと、一時期めちゃくちゃ品薄だった『Mellow Waves』関連の7インチ*1も会場で買えます。
 バンドメンバーでスタジオライブをしているってことは、夏のフェスや秋のワンマンでも披露されるんでしょうか。超楽しみです。この勢いで次のアルバムも早々に完成したり……しないかなあ。してほしいなあ。
 ……なんて書いてたらマジで出るようです。次のアルバムが。

Ripple Waves

Ripple Waves

  • アーティスト:Cornelius
  • ワーナーミュージック・ジャパン
Amazon
 オリジナルアルバムではなく、作品集といった趣ですね。今回の「AUDIO ARCHITECTURE」も両バージョンともに収録。アナログを聴けない環境にある人や、アナログは聴けるけどPC等で聴けるようにデータ化するのを面倒くさがってしまう人には嬉しい限りです(僕は後者)。

*1:『あなたがいるなら』『いつか/どこか』『夢の中で』