強制キャンセルと座席のワープ。『AMBIENT KYOTO 2023』のチケット販売でいま起きている問題の数々

 あまりこう、今のご時世で炎上をたきつけるような書きぶりはしたくないのですが――いわゆる「システムトラブル」そのものよりも、それ以外の人為的な問題があまりに多すぎる&ひどすぎるので、現在の問題点をまとめておきます。
※9/7(木)1:30現在の情報です。その後なにか変化があれば本稿にも追記・修正等するつもりですが、最新の情報は『AMBIENT KYOTO 2023』の公式サイト(↓)等でご確認ください※

【9/8 8:00追記】9/7 19:00付で、『AMBIENT KYOTO 2023』の公式サイトにて、先行販売ライブチケットのシステム障害のお詫び、及び今後の対応方針についてという発表がありました。本稿とあわせてこちらの情報もご覧ください。私自身はこちらの③に該当するので、9/8中に来るという連絡をまずは待とうと思います。
 

これまでの経緯

9/5(火)12:00 『AMBIENT KYOTO 2023』(10/6~12/24)内で行われるテリー・ライリー(10/13,14)およびコーネリアス(11/3)のライブのチケットが先着順で一斉販売。発売と同時にサイトがめちゃくちゃ混み合い、多重決済や同一座席のダブル(実際はトリプル以上の?)ブッキング等のトラブルが多発(ただし同一座席を複数人が購入しているかどうかは購入者自身にはわからず)。
14:30頃~ 発売直後の混雑が落ちついた後、Twitter*1にて購入者から「実際に購入した枚数以上の金額が決済されている」「購入が完了し領収書も届いたが肝心の予約完了通知のメールが来ない」等の指摘が出始める。
15:23 イベントの公式Twitterアカウントにて、「お問合せいただいている件は、現在、システム会社に詳細を確認しております」とアナウンスされる(ただしこの間も先着順でチケットが販売され続けているので、ちゃんとチケットを確保できているかどうか不安な人にとってはやきもきする状況が続く)。
16:30頃? チケット販売ページに「販売を中止しています」とメッセージが表示されるようになる(現在も販売停止中)。
18:57 チケット販売を一時中止した旨が公式Twitterアカウントでもアナウンスされる。
同日夜~ Twitterにて、購入者から「チケットがすべて払い戻しになった」「予約完了通知メールが来たが座席番号が当初選んだ場所と異なっている」等の報告が相次ぐ。
9/6(水)3:59 システム会社から(事務局を介さず直接)購入者宛に「KINCHAKUシステム障害による重複決済が発生」なるメールが一部の購入者宛に届き、多重決済の覚えがない人の購入分まで強制的にキャンセルされる(詳しくは後述)。
8:00 公式Twitterアカウントおよび公式サイトにて、システム障害についてのお詫びが出される。4種類の不具合のケース(詳しくは後述)を挙げつつ「不具合のあったお客様には、個別に順次ご連絡を差し上げております」と表明。
同日朝~ Twitterにて「昨日受領してスマートフォンのウォレットに登録しておいたチケットの座席番号がいつの間にか書き換わっている」との報告が出始め、その報告と前後して、そうした状況の方宛にシステム会社から「座席の購入がダブっていたのであなたの座席位置はシステムにより自動的に変更されました」といった旨のメールが届きはじめる(詳しくは後述)。

用語説明

  • AMBIENT KYOTO 2023事務局:『AMBIENT KYOTO 2023』の運営元。複数の企業・団体が合同で運営しているようです。本稿では基本的に「事務局」と表記。
  • KINCHAKU:『AMBIENT KYOTO 2023』のチケット販売システムを手がけている企業。および同社の提供するサービス名。本稿では基本的に「システム会社」と表記。

この件の問題点

 『AMBIENT KYOTO 2023』公式サイトでアナウンスされている不具合は以下の4点です。

◉不具合のケース
・システムトラブルによる不具合により、重複購入、もしくは意図しないお席をご購入されたお客様。

・予約購入後、Square(決済システム)より払い戻しのメールが届いているお客様。

・予約購入時にご指定いただいた席と、現在の席に相違があるお客様。また、そのお席をキャンセルされたいお客様。

・予約購入後、領収書の発行があったにもかかわらず、チケットの発券通知(予約完了通知)のご案内がないお客様。
お詫びとご報告:チケット予約システムの不具合について - AMBIENT KYOTO 2023

 しかし、これらの不具合はあくまで表面的なもので、事務局やシステム会社の対応を含め、実際には以下のような問題点が挙げられるでしょう。

  1. そもそもテリー・ライリー2デイズとコーネリアスのチケット、同時に売り出す必要あった?
  2. システム起因のトラブルが指摘されているのになかなか販売を中止しなかった
  3. 最前列などの良席を取ったつもりでいた人たちに対し、一方的にキャンセルや座席の変更を行う乱暴さ
  4. 説明やアナウンスが後手に回っている上、事務局とシステム会社がうまく連携できていないのでは?

 以下、順に見ていきます。

問題点1.そもそもテリー・ライリー2デイズとコーネリアスのチケット、同時に売り出す必要あった?

 今回、3公演分のチケットが先着順で同時に販売開始されました*2
 しかし、人気のあるライブや公演、それも先着順のチケットを取ろうとしたことのある人なら皆さんご存知でしょうが、そういうときはサイトがめちゃくちゃに混み合います。これはもう、ぴあとかイープラスとかローチケとか、どんな大手のチケット販売サイトであっても同じ。で、今回ライブを行うテリー・ライリーもコーネリアスも熱心なファンのいるミュージシャンで、しかもそれぞれの会場のキャパシティを合計すると3日間の動員は約2,600人*3。発売直後のサイト混雑や販売後のアフターケア*4等を考えるなら、これらのチケットはそれぞれタイミングをずらして発売するほうが安全です。なので、発売前には「ずいぶんリスキーなことをするなあ、でもそれくらいタフな販売システムを用意してるのかなあ」とか感じてました。が、フタを開けてみたら全然そんなことなかった
 
 今回のチケット販売に採用された「KINCHAKU」という会社の同名サービス、元々はスマートフォン向けのデジタルカードや決済等のサービスのようで、チケット販売システムは今年8月に提供を開始したばかりだそうです(つい先月にサービス開始ということは、KINCHAKUにとってはこれほどの規模のチケット販売自体が初めて?)。
 こちらのお知らせを見てもわかるんですが、KINCHAKUのチケット販売システムの大きな売りが「座席指定販売」。これが今回のトラブルの大きな火種です。映画館や公共交通機関のチケット販売ならまだしも、1,000人超のキャパで座席指定販売ってほとんど聞いたことない。大まかな券種(S席とかA席とか)だけ選んであとはその範囲内でランダムに割り振られる形が普通でしょう。だから今回チケットを買おうとした人はみんな「え、座席の位置を自分で選ぶの?」と戸惑ったはず。
 
 で、販売開始と同時にサイトにアクセスした人の眼前には、全席選び放題の状態で座席表が表示されているわけです。それだけ熱心な人は当然、最前列の中央あたりの特等席を真っ先に選択する。そして売り切れてしまう前に大急ぎで決済を済ませる――もちろん、こうして無事にチケットを買える人は1席につき1人しかいないはずですが、どうもこのKINCHAKUはそのあたりの設計がゆるかったようで、同じ席を何人にも売ってしまっていたっぽい
 実際、私自身も最前列の中央エリアのチケットをすんなり購入できたので「うわー取れちゃった取れちゃった、ラッキーだなー」と小躍りしてました。そのあと思いっきりガッカリさせられるわけですが……。
(あと、もしKINCHAKUの重複購入を防ぐ仕組みがガッチガチによくできていたとしても、今回のような大規模会場と人気公演の組合せだったら、それはそれで座席表の空席を選択するたびに「このチケットは他の人が仮押さえしてします」というメッセージが出まくってなかなか真の空席を見つけられない——みたいな地獄絵図になっていた気がします*5
 
 というわけで、人気のある複数の公演を先着順で同時発売すること自体がリスキーだし、ましてや座席指定販売との相性の悪さったらない。
 事務局やシステム会社がこの販売スケジュールとこのシステムの組合せを選んでしまったこと自体が、そもそものトラブルの原因でしょう。不具合の起きやすい状況を自ら作ってたんです。
 

問題点2.システム起因のトラブルが指摘されているのになかなか販売を中止しなかった

 最初に経緯をまとめたとおり、発売開始から2時間半くらい経った頃からシステムの不具合と思しきものが購入者から指摘されはじめます。事務局もそれに気づかなかったわけでなく、その1時間後くらいには公式Twitterアカウントで「お問合せいただいている件は、現在、システム会社に詳細を確認しております」とアナウンスしているんですが、この時点ではチケットが販売され続けていたのです*6システム絡み、それも決済まわりのトラブルが複数指摘されてるっていうのに。システム会社の確認作業にどれくらい時間がかかるかわからないのだから、ここで真っ先に販売を一時中止すべきだったでしょう。後出しでツッコミを入れるようで難ですが、これも事務局とシステム会社の判断ミスだと思います。
 
 それと、私はこのアナウンスの直後くらいに事務局宛に問い合わせのメールを送っています。内容的には「支払が完了した旨を伝えるメールは来ているが、肝心の『チケット発券のお知らせ』のメールが届かない*7のですが、チケットは本当に購入できているのでしょうか?」という質問と、あと「先着順で販売されているチケットなので、万が一取れていないのならすぐに代わりのチケットを購入したい。なので早く返事がほしい」といった旨をできるだけ丁寧に書いたのですが……1時間後に届いた返信は、15:23のツイートとほぼ同内容の定型文でした。それでもメールの末尾に書かれた「詳細確認でき次第、ご返答申し上げます」の文言を信じて連絡を待ち続けていますが——これ以降、今に至るまで一度も事務局から連絡は来ていません。
 個人的には、このあたりで「これ、単なるシステムトラブルだけじゃなくて、運営の不手際も大きいのでは?」と疑念を抱き始めました。
 

問題点3.最前列などの良席を取ったつもりでいた人たちに対し、一方的にキャンセルや座席の変更を行う乱暴さ

 そして、購入者の間で不安が募っている最中にコレですよ。
 この点については、チケット購入から今に至るまでの私の心境の変化をありのままに説明するのが一番わかりやすいと思います。

  • 9/5の正午、「やったぜ最前列ド真ん中のチケットが取れた!」と大喜び
  • 夕方にかけて「いつまで経ってもチケットの通知が来ないけどまさか……いやいくらなんでもそんなはずは……」と不安になる

  • 翌朝起きてiPhoneの通知をみると夜中に事務局ではなくシステム会社から↑のメールが届いており「えっ、自分は重複決済になってなかったよね? それとも自分が普通に問題なく購入完了したつもりの注文がシステム会社的には『重複決済』扱いされているの? そもそもこれって今回の購入者全員に宛てて送ってるの? それとも重複決済の影響がある(=キャンセルが発生する)人にだけ送ってるの?*8 あとなんでこんなニュースの見出しみたいな件名の付け方なの??」とただただ困惑
  • 朝8時、事務局からお詫び文が出たのでとりあえず個別連絡を待つこととする
  • しかしその後もTwitterでは「強制キャンセルになった」「座席の位置がワープした」などの不穏な報告が飛び交いまくっている
  • 「まさか、もしかして……」とKINCHAKUのマイページの「支払い履歴」を見てみると

  • ギャーッ! 「払戻済」ってなってる!! ご丁寧にも赤文字で!! ほんとにこれ事務局の通知を待ってるだけで大丈夫なの???
  • 知り合いに訊いてまわったところ、自分とまったく同じ経緯で強制キャンセルを喰らった人や座席ワープに見舞われた人を次々に発見し、しかもそうした人のほとんどが最前列のチケットを買ったつもりでいたことが判明
  • 座席ワープ被害者宛のシステム会社のメール(↓)を知り合いに見せてもらったところ、これがまたひどい文面で絶句

  • いろんな種類のトラブルが重なってるし、これはもう現時点での惨状を一度ブログにまとめたほうがいいのかも……(今ここ)

 
 チケット購入にあたり一切の落ち度がなかったはずの購入者の多くが、いま、こういうジェットコースター状態に巻きこまれているわけです。
 

問題点4.説明やアナウンスが後手に回っている上、事務局とシステム会社がうまく連携できていないのでは?

 もちろん、こちらとしても事務局をやみくもに批判するつもりは毛頭無いです。どれだけ入念に作られたシステムでもエラーやトラブルは起こり得るでしょう(もちろん起こらないのが一番いいけど)。今もトラブル対応に追われ大変な状況にあるだろうと思います。
 ただ問題はシステムトラブルそのものよりも、これまで指摘してきたようなトラブルを誘発しやすい販売スケジュールとシステムの組合せを選んだことや、トラブル発覚後の対応のあり方、つまり人為的なものです。
 
 事務局とシステム会社はいずれも「システム障害」「システムの不具合」を理由に諸々の問題について説明していますが、それぞれ言っていることが微妙に違う。というか、どうもシステム会社が勇み足で購入者の不安を煽るアクションを起こしまくってるように見える(そしてそれをコントロールしきれず振り回されてるっぽい事務局も良くない)。
 そもそも、事務局とシステム会社がそれぞれ購入者に対して別個にアナウンスを行っている状況自体がおかしいです。しかも両者それぞれに問い合わせ先のメールアドレスを示している。こういうときの窓口は、どちらかに一本化するべきではないでしょうか?
 
 事務局が9/6の朝8時に「スタッフよりお一人さまずつご連絡をしております」と発表していますが、先にも述べたとおり、今のところ私のところにはそれらしきメールが届いていません……まあ、個別に連絡しているのなら多少時間がかかっても仕方ないので、それは良しとしましょう。
 ただ、事務局の説明やアナウンスに先んじてシステム会社が独自にメールを送ったり、強制キャンセルや座席のワープなど普通のチケット販売ではまずお目にかかれないアクロバティックな対応をバンバンやっているのは意味がわからない。
 しかも、ここでシステム会社が送ってくるメールの文面がまた良くない。さっきも貼りましたがあらためてご覧ください。担当者の方はトラブル対応に追われて寝不足のまま書いたのかもしれませんが、なんというか、相手を冷たく突き放してる感が強い。「お詫び申し上げます」のお詫び申し上げてない感じがすごい。

 自分の買ったチケットがちゃんと確保できているのかもわからず不安でいる購入者の視点からすると、率直に言って、大変に不愉快です
 穿った見方かもしれませんが、システム会社のメールの文面からは「金を返せばいいだろう」「代わりの席を用意すればいいだろう」といった姿勢がどうも感じられるんです。でも当然ながら、単に金を返せばいいってもんじゃないし、別の席を用意すればいいって話でもない。そもそも、チケットを買うにあたって、購入者全員が少なからず時間を割いてるわけです。私の場合は短時間で購入が完了したからまだよかったですが(結局購入できてないけど……)、30分や1時間かけても決済が完了しなかった人もいたようです。そして今まさに起きているこのトラブルでまた余計に時間や手間を取られているわけで。金は返せても、時間は返せないですよね?
 

これから、どのように収めるべきなのか

 9/5の夕方頃(まだ事務局やシステム会社に対し同情的な気持ちでいた頃)「もし自分が担当者の立場だったらこのトラブルをどう収めるだろう?」と考えてみました。
 同一の席番号のチケットを複数枚販売してしまっている場合、取り得る選択肢は大きく分けて2つ。

  1. 発券が済んでいるところはそのままにして、席番号がダブってしまっている購入者に対しては残りの残席をランダムで振り分ける。
  2. 販売済みのチケットを一旦全部リセット&返金して、あらためてイチから販売し直す。

 前者のほうがビジネス的な機会損失は抑えられるように見えます。けど、席番号を変えられてしまった人からはとてつもなく恨まれる対応でもある。後者はいわば全員で痛み分けになるので、席番号が確定済の人からはもちろん恨まれるだろうけど、前者ほどではない、はずです。ただ後者の場合は販売済のものを一旦すべて返金することになるので、再販した結果チケットが売れ残った場合の責任問題がものすごーくめんどくさそうですよね。
 いずれにせよ、無傷で済む選択肢はあり得ません。なので担当者や責任者からしたら「どこに重きを置くか」の選択になるのですが、ビジネス的な観点からしても、今後長く『AMBIENT KYOTO』自体を育てていくつもりなら後者のほうがいいのでは……? というのが、自分なりのシミュレーションの結論でした。
 
 現状、事務局&システム会社がとっている対応策は上のいずれでもなく、前者をもっと不透明かつ乱暴にしたやり方のようです。……こんな斜め上の対応をとられるとは思わなかった。
 Twitterで「AMBIENT KYOTO」で検索するとよくわかりますが、現在の対応に怒っている人や困惑している人がとても多いです。今の対応のまま突き進めていったら、多くの人の心にしこりが残りますし、せっかく今年2年目の開催を迎える『AMBIENT KYOTO』の名前自体にも傷がつきかねないです。もちろん、私自身の境遇によりバイアスがかかっている部分もあるでしょうが——事務局の方々には、今一度の再考をお願いしたいです。

*1:本稿では従来の名称・用語で統一します

*2:正確には10/6~12/24の展覧会のチケットも同時でした

*3:テリー・ライリーがライブをする東本願寺・能舞台はキャパ460人×2日=計920人。コーネリアスがライブをする国立京都国際会館メインホールはキャパ1,714人(Sエリア1,043人、Aエリア671人)。いずれのキャパもhttps://ambientkyoto.com/news/x509liv3に載ってる座席表を元に手計算したので間違ってたらすいません

*4:システム的な話だけじゃなく、お問合せ等に対するスタッフの対応負荷

*5:あり得る解決策としては、座席表を表示できる購入者の定員を制限する(定員オーバーの際には「お待ちください」みたいなメッセージを出して待ってもらう)、みたいな設計かなあ……でもやっぱり大規模会場だったらランダムに割り振るほうが無難ですよね

*6:販売が一時中止となった正確なタイミングは不明ですが、15:23の公式ツイートでは販売中止に触れておらず、その約3時間半後に販売中止した旨をあらためてツイートしているので、少なくとも15:23時点では販売中止していなかったとみて間違いないでしょう

*7:他の方に聞いたところ、届いている人には購入後10分~1時間くらいで来てたっぽいです

*8:座席位置がワープした人にはこのメールが届いてないようなので、対象者にだけ送っていた模様